マガジンのカバー画像

[私小説] 霜柱を踏みながら

24
私小説です。時系列でなく、思い出した順番で書いてます。私の個人的な思い出の物語です。
このマガジンは私の私小説風のエッセイで、月に3本くらい2000文字前後の作品を投稿していく予定です…
¥100
運営しているクリエイター

2021年9月の記事一覧

あのころあの町のクリスマスの片隅で

一歩進むごとに、過去の一歩が失くなっていく。 いつかこの場所もゼロになってしまうのだろう。 『霜柱を踏みながら 20』 子供の頃のクリスマスの思い出はあまりない。現代のように恋人同士がデートをしたり、高価なプレゼントを交換しあったり、家族や友人同士でホームパーティをしたり、私が子供の頃のクリスマスはそんな煌びやかなものはなかった。ただ日常と違うのは町のケーキ屋さんが店頭にワゴンを置いて、何日も前に作ったと思われるケーキを並べて、居酒屋の呼び込みのようにに大きな声を張り上げて

時がたち、インクの滲みが消えるころ

一歩進むごとに、過去の一歩が失くなっていく。 いつかこの場所もゼロになってしまうのだろう。 『霜柱を踏みながら 19』 私の部屋のクローゼットに、スカーフやハンカチなどの小物が収納された籐カゴがある。何枚ものスカーフが折り畳まれたその一番下に一枚の古い絵葉書が仕舞われている。その絵葉書だけは誰にも見られたくない。やましいことが書かれているわけではないが、それは私の人生に影響を与えた出来事が関係しているからだ。消印は1998年3月3日となっている。グアテマラからのその絵葉書に