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劇場版「輪るピングドラム」を見て再考する銀河鉄道の夜との関係性


前に書いたやつ

note読者は輪るピングドラムを知っているか?|ビーモ|note


まずは感想。考察は下の方です。
劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』を鑑賞し、改めて思ったことですが内容がえげつなく濃い。濃密で、そこに不要なものはなく(ペンギンサービスシーンは一番重要なので)さらに煮詰めてジャムの先に行き着いたなにかになっていました。

以下少しネタバレがありますのでご注意を。

基本的にはテレビ版の総集編ということなので見たことのある映像が流れますが、1話~12話を順番に構成せず、すべてを一度砕き分解し再構成をしたうえで丁寧に各キャラに焦点を当てたつくりにして、音楽面を新しくさせ、問題の新規アニメーション部分が間に挿入される作りです。
まず言いたいのはこの編集が素晴らしということ。
基本の筋をおさえつつ、必要な情報を抜き出し、さらにキャラの魅力も伝えている。ダレさせることなくテンポよく構成していくのは監督の力量だと思います。
さらに映画館の音響で聞こえなかったセリフが聞こえたり(石田彰のアドリブ東北弁がくっきり)爆音の家路再現(まじでうるさい)など新たな楽しみも増しています。
音響面でも劇場用に編集したようですね。そこだけで楽しめましたが、新曲編曲新曲既存曲!と音楽面の印象も相当かわっていました。ファンにはたまらない部分です。

で、問題は新規映像なんですが…。
演出面で「さらざんまい」のような実写ミックス映像が入っています。
本当に美しくてこれだけで劇場版の元がとれますし、現実との差が分からなくなるピンドラとの融合は映像体験としては最高のものでした。
まあ双子がさまよってるなぁくらいならよかったんですけどね…。
あの頃を懐かしく振り返る程度なら気楽に見れるのですが、そんなことをこの作品が許してくれるわけもなく、新しい展開が待っていました。
そもそもピンドラ最終回はあれはハッピーエンドではないと思うので、その続きと考えたら重…ってなるんですが、この先を考察していくには相当楽しめる要素になっています。考察してこそピンドラです。
さらに今回はキャラの心情にも踏み込んだ映像が追加されています。泣きそうになるよね。この描写が一体後編でどうなるのか、そこにすべてのカギがあるのではないかと思うのです。よくわからないけど。
つまり、ピングドラムを私たちはまた探す旅にでたのかもしれません。

不安定な社会情勢と新ピンドラが私たちになにを訴えかけるのか。きっとこのタイミングで公開になったことには意味がある。その意味を探していきたいと思います。


さて、以上感想。
そして少し考察をしてみたいと思うのですが、見直して放送当時分からなかったことが結構わかるようになりました。単純に知識量の問題です。

ピンドラは「自己犠牲の話」と色々と言われています。その自己犠牲の否定が描かれるのではないかという噂も時々目にしました。(さらざんまいの結末がピンドラとは違うという結論から出た考察でしょう)

ただピンドラという作品のベースにある作品は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」でしたね。
宮沢賢治というと独特の宗教観を持っていた人物です。噛み砕くのには時間がかかりますが、ようするに死んだら転生する【輪廻転生】を信じている方です。そして自己犠牲の愛を説く方です。
銀河鉄道の夜 自体相当考察があると思うのですが、私はピンドラになぞらえるなら賢治がジョパンニで賢治の妹がカンパネルラの説で考えるのが相当かなと考えます(カンパネルラは賢治の友人説もあります)。
兄と妹と言えば高倉兄妹になりますが、名前的に昌磨=ジョパンニで、冠葉=カンパネルラであることは確か。
では「ザネリ」は誰か。アニメをすべて見たら確かに眞悧が当てはまるという考察は正しくも見えますが、果たして本当に眞悧は=ザネリになるのかというのは少し疑問です。やはりストレートに「陽毬」でいいのではないかと。そうすれば彼女は銀河鉄道の夜的に言えば救われる存在になります。

ということで冠葉を救わねばなりません。プリンチュペンギンもなんか言ってますしね…。
銀河鉄道の夜ではジョパンニだけチケットを持っていてどこまでも行ける存在になります。そしてカンパネルラだけが輪廻に向かいます。
アニメ最終回では言わば二人とも銀河鉄道に乗ったままの状態になりますが…その先は一体?
銀河鉄道のジョパンニはそもそも、自己犠牲的に生きてはいますが、カンパネルラのように命の犠牲を出したわけでもなかったはずだし……といろいろ考えてしまいますね。

「自己犠牲は悪」ではなくて「自己犠牲をした双子を、どうにかして救う話」になればいいなと思います。

後編ではそのあたりを描いてくれるのであれば、この考察は正しかったということで笑

いろんな人の考えを見たいです。いろんな人の感想をみたいです。
そういう楽しみがこの作品にはあります。
あなたもぜひ、ピンドラを見た人間になってください。




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