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〈大地の再生〉絶賛活動中の東慶寺にお邪魔してきました(後編)

こんにちは。
ビーエコスタッフHHです。
タイトルにもありますが、北鎌倉にある東慶寺で〈大地の再生〉の現場を見学させてもらった時の話を綴っています。

これまでの経緯や私たちの想い、〈大地の再生〉の説明などは「前編」をどうぞ!
〈大地の再生〉絶賛活動中の東慶寺にお邪魔してきました(前編)
(少々長文ですが、読んでいただけたら繋がりを理解できると思います)

【お待たせしました、ようやく見学記録スタートです】

〈大地の再生〉活動で何かお手伝いができないか東慶寺に問い合わせをしてみたところ、

「現在、一般の方には遠慮いただいているんですよ。今はプロたちに完全に任せています。」というお返事が。

これには理由がありました。
活動を開始した頃は和尚さんや奥さまをはじめ、一般の方の体験参加も行っていたそうですが、雑草一つとってもどれを抜いて良くて、どれをそのままにしておくか、素人目には到底分からなく中々難しくなってしまった…という経緯があったとのこと。

そのため現在は「NPO法人 杜の会」の矢野さんと、彼が率いるプロチーム、そして当初からお手伝いしている東慶寺座禅会の方々がメインになって作業しているそうです。

そんな話をしていた中、奥さまから提案が。
「5月28日、29日、30日に〈大地の再生〉の活動をするので、ビーエコスタッフの中で活動を見てみたい人がいたら連絡ください~。閉門して一般のお参りも制限するので割と大掛かりな作業になりそうです。」

こんなチャンス、行くしかない!
スタッフBと一緒に作業現場にお邪魔することになりました。

【見学当日】

私たちが訪れたのは梅雨入り前の5月29日。
よく晴れて気温は高く、日中外で作業するには大変そうな天候でした。

東慶寺は山に面しており、裏山一帯も含めたお寺です。本堂や書院などの建物は山の裾にあり、山を上がると代々東慶寺が守ってきた檀家さんの墓地が見えてきます。大地の再生活動は本堂前に広がるお庭やその上に続く山への道、山全体も含めた大掛かりなプロジェクトです。

まず本堂へお参りをさせてもらいます。
奥さまの案内で境内に入ると工事現場から聞こえてくるようなコンクリートを砕く「ガガガガ、ガガガガ」という音が響き渡り、職人さんが出たり入ったり。
その中で矢野さんのプロチームと、東慶寺座禅会の皆さま総勢約30人がいたるところで作業していました。

この日は境内の中心部にあり1番ネックとなっていたコンクリートを砕いて水と空気の通り道(流れ)を作る、という作業だったそうで、矢野さん自ら重機を操りコンクリートを砕いていました。

重機を操る矢野さん

東慶寺ではFacebookに活動の様子を投稿しています。こちらからどうぞ。

私たちが着いた頃にはすでにコンクリートの半分以上が砕かれていて、下に埋め固められていた土があらわになっていました。

作業する矢野さんの横には沢山の白い袋がずらり。
ここはもともと菖蒲畑で、袋の中身は植わっていた菖蒲たちでした。
作業後に地面が整ったらまた元の位置に戻すために一時避難させているのだとか。

奥に見える白い袋に入っているのは菖蒲たちでした

次に向かったのは正門から続く黒い木塀とその塀跡。

塀は元々境内をぐるっと囲うようにあったのですが、塀を立てる際に地中深くまでコンクリートを打ち込んだため、水の流れをせき止める原因になっていたそう。

塀自体は木材なので無害に見えましたが、実際にはその下の土が呼吸ができない状態になっていたのです。

木塀と塀跡

矢野さんの手によって、塀があったところには「点穴(てんあな)」と呼ばれる小さな穴と溝が掘られ、水が通る状態に改善されていました。
さらには木材や炭、コンクリートまでもが敷き詰められ、なんとこのおかげで水と空気が地中まで行き渡るようになったのだといいます。

コンクリートも全て取っ払うのではなく、要所に点穴をあけ、あとは風と水の自然の力が通り道を作ってくれる、という矢野さん独自の方法です。

【掘らなきゃわからん】

それと並行して建てられた反対側の塀近くでの作業を見せてもらいます。

地中に埋まっていたパイプ周辺での作業風景

職人さんが、膝くらいある深さの溝に手を入れて作業していると
「ん?こんなところにパイプが出てる?!でも途中で切れてる…」

するとすぐ近くでも同じような状態のパイプを発見。作業していたもう一人が、
「こっちにもパイプある!途中で終わってる!」と応答します。

皆で「このパイプは一体なんなんだ···?」と考えていると
奥さまが「昔こっちにはお手洗いがあったからそれかもしれない···」と。

そう、この活動、掘ってみないと実態がわからない。
何が出てくるのか、どんな改善策が良いのか…
蓋を開けてみるまでわかりません。

そのため当初の予定から作業内容も大幅に変更され、矢野さんが1番最初に東慶寺に訪れてから丸2年の月日が経っているとのことでした。

コンクリート現場を通り抜けると右手に大きな蔵が見えてきます。
そのすぐ脇を何人かの職人が掘り起こしていました。こちらも水と空気の通り道を作っているようです。

一見何の問題も見当たらなさそうなこの蔵もまた、水と空気の流れをせき止め、すぐ裏手の山での相次ぐ倒木被害の原因となっているそうです。

蔵での作業風景

【すでに変化が】

さらに案内は山の上へと続きます。

山の中には代々東慶寺が守ってきた沢山の方の墓地があります。
以前来た時にあったコンクリートの歩道はそのまま、木々や苔は生き生きしています。
ここはすでに改善が終了したところのようで道の横を溝が掘ってあり枯葉や木、炭やコンクリートの破片が詰まっていました。

さらに上にあがると緑豊かな墓地の一角に洞窟のような穴が見えてきました。
これは山の斜面などに向かって横(水平方向)に掘られた横井戸と呼ばれるもの。

横井戸

以前、この井戸の水が悪さをして目の前のお墓が水浸しになってしまったため、それ以来完全に閉じてしまっていました。

矢野さんはここにも問題点を見つけ、井戸水を少しずつ流れるように改善したところ、水浸しになることも無くなり、自生するイワタバコの葉は他のお寺で生えるものより遥に大きく育つようになったそうです。

その頭上には背の高い木が生い茂ります。
一部ぽっかり穴が空いたような空間がありました。

ここにはとても背の高い木が生えていたのですが、2019年の集中豪雨の際に倒れてしまったそう。

これも全て、井戸水を止め、水や空気が循環できなくなったことにより起こってしまったものでした。

何か一つの問題が、山全体に甚大な影響を及ぼすということがよくわかります。

【自然に従う】

山中をさらに進むと巨木のアートが!

···ではなく、倒れかけている木とそれを支える支柱が重なってオブジェのような形になっていました。 
(残念なことに、写真を撮り忘れてしまいました・・・・)

この木にはエピソードがあります。
矢野さんが初めて東慶寺に訪れた日の朝、彼の到着とほぼ同時に倒れてしまったそうです。
「この木からしたら、まさに今だ!ということだったんですかね~」と奥さま。

大抵、倒木は撤去されますが、矢野さんの手法は違います。
建物や人、周りの環境を傷つけていないのであれば残す。
そして、この木は倒れながらも大地を守っている、と。

風を通すために剪定した草木も、コンクリートや石の破片も、全てを取り除くわけでなく、自然に従い、自然の力を生かしながらそこにあるもので道を作り出す。長く自然と対峙する矢野さんの〈大地の再生〉を目の当たりにした瞬間でした。

さて、見学もそろそろ終盤です。
最初に見学した菖蒲畑(だったところ)まで戻ると、なんと水が溢れていました。

水が溢れている!

作業を進めると、こんな風に地中に溜まっていた水が出てくることが多々あるそうです。
これは大地が大きく呼吸ができるようになった証拠。
東慶寺に関わる方々もこの変化で「息ができるようになった。軽くなった。」と感じられるといいます。

【見学を終えて】

日差しも強く、前日から続く作業にもかかわらず、皆さまがとても楽しそうに作業されていたのがとても印象的でした。

敷地内を見学した後は、お手製の梅ジュースをいただきながら色々とお話を聞きました。

2019年の大雨で倒れた何本かの大きな木、山を削って建てた蔵、舗装された墓地までの道のりに敷き詰められたコンクリート、見栄え重視で引っこ抜いていた雑草。これら全てが土壌を固くし、水の流れをせき止めていたところを矢野さんがあの手この手で流れを作っている、そして現在までにこんな変化があったなどのお話を伺いました。

心を打たれたのは、なぜ今この大改造を行なっているかという話。
和尚さんと奥さまが口を揃えて言ったのは、自分の庭であればここまで手の込んだことはしない、ということでした。
(なにしろ、いつまで作業が続くかも予想できないうえに、費用もかかる…)

それでも東慶寺というお寺を受け継ぎ、後世に繋げていく役目があり、ご先祖さまが代々繋げてくれている檀家さんたちもいる。
これからの東慶寺と、この自然を絶やさないために、という強い想いがあったそうです。

矢野さんとプロチームが施す、自然を第一に考えた〈大地の再生〉の活動理念に多く共感したことも大きいともおしゃっていました。 

矢野さんはこの土地だけでなく、山全体からその麓、最終的には相模湾全域の環境と循環も視野に入れて活動されているとのことでした。

残念ながらご本人と挨拶はできませんでしたが、彼らの活動を目の当たりにし水と空気の通り道がいかに重要か、土砂災害などの災害が頻発している各地で早急に治療することがどれだけ必要かを肌で感じることができました。

作業風景や改善を施した部分を写真で撮ってもなかなか伝わらない。
実際に現地を歩いて説明を受けて初めて、こんな風に作業しているのか!と理解できました。
まさに「百聞は一見に如かず」。

くどいようですが(笑)映画「杜人」、必見です。
お近くの方は東慶寺にお参りして、大地の息づかいを味わうのも良いかもしれません。

(開門日は東慶寺ウェブサイトインスタグラム等でご確認ください。
また境内は撮影禁止です。詳細と経緯は訪問前にこちらをご一読くださいね。)


【おわりに】

長くなってしまいりましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

〈大地の再生〉活動はこれからも全国各地で続きます。

この記事を読んで〈大地の再生〉のことを知り、私達の置かれる環境に想いを馳せ、まずは自分の周りでできることは何だろう、と考えるきっかけになれば嬉しいです。

Bee Eco Wraps Japanとしてできること。
近いうちにお話しできると思いますので、その時までどうぞお楽しみに…

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