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うつでダウンして、バンブル無双した女の休職生活。#3

眠れなくなった5日目に現れた救世主

眠れなくなって5日目、どうしようもなくなった私は初めて同い年の人間に連絡をした。
"急にこんなことを言ったら驚くかな、どんな風に思われるかな"
こんなことばかり頭を駆け巡って、家族と随分歳上のご近所さんにしか連絡できていなかった。
今思えば、周囲にどう見られるかという事を過度に異常に気になってしまう辺りも、うつの症状が明確に出てきている。

だけどどうしても、耐えきれなかった。
彼女にだけは、彼女にだけは連絡しようと思いきって電話をかけた。

「そうか、眠れないのか。食欲は?」「死にたいとか思う感じ?」「お風呂とか入れてる?」

一通り色んな質問をしてくれる。ポツポツと私が答える。
食欲も無い、食べたいと思うものが浮かばない、死にたいとは思わないけど死にそう、お風呂は気合いで入ってる。

何よりも家に一人でいることが辛くて堪らないと漏らすと、彼女はすぐにこう言った。

「じゃあ、今から家行こうか?病院行くまで泊まるよ。」

「えっ・・・・」と声が出たのは、
良いの?嬉しい。という思いと同時に、こんな汚い家に足を踏み入れて引かれないか心配な気持ちが混じったからだ。
でも、誰かが側にいてくれる、一緒にいてくれる可能性があるというだけで私の心に光が差した。この時ほど、親友に感謝したことはない。

「家?汚くても気にしないし、私が掃除するし。何なら私は置物だと思って寝てくれて良いから。泣いてても気にしないし、話聞いて欲しいなら聞くし、何にも気遣わないで。」

親友がこんな言葉をかけられるのには理由がある。
彼女もうつで苦しんだ過去があるのだ。

「4日眠れなかった奴がドリエルで眠れる訳無いじゃん!」

電話を切って1時間後、親友はパンパンのビニール袋を両手に我が家を訪れた。
ビニール袋の中には、温めたりすればすぐに食べられる食料が入っていた。
マンションすぐ下のセブンイレブンで買い込んで来てくれた様子だった。
「これもこれも美味しいから、気が向いたら食べて。冷蔵庫入れとくから。」とテキパキと食料品を詰める女神に、私は頭が上がらなかった。

今考えても、あの時親友が我が家に来てくれたのは奇跡的なことだ。

親友には長年付き合っている彼氏がいる。学生時代から数えて3年になるだろうか。「こんなことがあった、メリッサならどうする?(怒)」と文句を言う割にはラブラブな2人。彼氏は医大生だ。
いつもなら、土日を彼氏と過ごす親友だったが、私の家に来たそのタイミングだけはその彼がテスト期間ということで暇をどう過ごそうか逡巡していたらしい。
だから私から電話が来て、すぐに駆けつけてくれた。
タイミングの良さと、親友の心の広さには感服するばかりだ。

疲れているのに眠れていない私は、親友が来た安心感からか、フローリングに横たわったまま会話をした。
そんな様子を見て、「本当に辛そうだね」と少し驚く親友。

「疲れて、何もできなくて、だけど眠れなくて、マイナスなことばっか考えちゃって、もうどうしようもないの、、、、」

親友は淡々と答える。
「この病気はね、そういうもんなの。ぜーんぶ症状。分かってると思うけどね。」


親友は、数年前に仕事に忙殺され、重度のうつを患った経験がある。
薬が合わなくて、体重の増減を繰り返していた。
その時の親友の体型の変化、精神の葛藤、言葉を見て聞いているだけでもこちらが苦しくなる程、その過程は激しかった。

だからこそ、親友は分かってくれた。私の苦しみも、このどうしようもない苦しみも、頭の中のぐちゃぐちゃも、人には理解されないだろうこの思いも。

「お医者さんで市販薬飲んで眠れって言われたから、ドリエル買ったんだけど眠れなくてさ、、、」

話の流れでそう伝えると、親友は目をかっ広げて私に言い放った。

「4日間何しても眠れなかった奴が、ドリエルで眠れる訳ないじゃん!!!」

そうして、鞄からガサゴソとおもむろに錠剤を取り出して私に差し出した。
”本当はやっちゃいけないことなんだけどね”と前置きをつけて。

それは”デエビゴ”という名の睡眠導入剤だった。

親友のお母様は看護師として働いている。
夜勤が多く、昼夜逆転することが多い看護師さんの間でもよく常用されているお薬だから、まずはこれを飲んでみたらどうかと提案された。
中毒性も限りなく少ない。

藁にもすがる思いで、親友が買ってきたみかんゼリーをかきこみ、デエビゴを水で飲み込んで布団についた。

どうか眠れますように、眠れますように、、、、。



待ちに待った診療の日曜日、私は病院の前で思っていた。

「あぁ、またここに戻ってきてしまった」

メリッサ


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