うつでダウンして、バンブル無双した女の休職生活。#20
母の病気の原因
母は昔から、健康に関して色々と口を出す人間だった。(今も変わらないけれど)
朝は健康にいいから、と絶対牛乳を飲まされていた。
どこから聞いたか分らない健康情報で、これを食べるといいとかあれを飲むと良い、と様々なものを試してはやめて、試してはやめてを繰り返した。
体に良いと言われるものを全部混ぜ合わせたような、お世辞にも美味しそうとは言えない意味不明なドリンクも飲んでいたことがある。
「サラダ油は体に良くないから、米油を使う!」と言って、あの時から今まで実家でサラダ油を見たことがない。
魚を食べないとか、肉を食べないとか、ヴィーガンになるとか、そういう極端な発想にならないだけマシだ。
第一、家族の健康のことを考えてくれているんだからそれならいいか〜と、家族全員放っておいた。
そんな人が、病気のデパートみたいなことになるのだ。
おそらく母が膠原病になった原因は、祖母にある。
俗に言う嫁姑問題というやつだ。
今は亡き祖母は、言葉を選ばずに言ってしまえばとても性格の悪い人だった。
けれど家の外では良い顔をするものだから、「メリッサちゃんのおばあちゃんみたいになりたいわぁ」なんて近所のおばさんに言われてドン引いたこともある。
根が人の良い母と、何かと口うるさい祖母。
父は上手く立ち回れず、その重みは全て母にのしかかった。
今でも、どうして祖母を一緒に住ませるなんて選択をしたのか疑問に思うことがある。そのことで、少し父に怒りを覚えるくらいだ。
母がもっとストレスフリーだったら、母が祖母と衝突することが無かったら、こんなに病気に苦しまなかったのにと思いを馳せる。
家族の問題は複雑で、第三者が口を出せるほど簡単に解決しない。
それに父と母が出会っていなければ私も生まれていない訳で、そのためには祖母の存在も欠かせないとなれば憎んでばかりも居られない。
祖母は数年前、96歳という大往生で老衰の末亡くなった。
このご時世、老衰で亡くなるなんて凄いとみんなに言われた。
祖母が体調を崩し、叔母の家に行ったり、施設に預けられたりした時、実家で母は悠々自適に過ごしているように見えた。
それでも病気は付いてきた。
お母さんは生きなきゃいけない、だって・・・
父が常に言う言葉がある。
「人生はどうなるか分からない」
そこにはネガティブな意味もポジティブな意味も含まれているけれど、話をよくよく聞くに前者のイメージの方が強い気がする。
大学、大学院と成績が良かったのに就職先に困った父。
父の同級生の話、それに母の病気。
「あんだけ健康ヲタクな人が病気になっちゃうんだから。でも人間の中にはタバコをいくら吸ったって肺がんにならない人もいるし、どんなストレスに晒されても気を病まない人もいる。分からないものだねぇ。」
父は少し頑固で自分の意見を曲げないところがある。年々頑固親父化している気もするが、毎日楽しそうに生きている。そして言い続けている。どうなるか分からない、と。
ただ、人は苦労をすればするほど良いと考えている節があって、そこだけはいまだに私の考えと折が合わない。
それでも、「人生はどうなるか分からない」というのはその通りだ。
悔しいがそんな風に出来ていると思ってしまう。刷り込みかもしれないけれど。
透析離脱の話から、一気に覆って子宮頸がんとの戦いに変わった時、流石に母も堪えている様子だった。
周囲は驚きつつも、「でも、子宮頸がんが早めに見つかって良かったね!!」と励ましてくれた。その通りだ。
私もそう考えるように、考えるようにと自分に言い聞かせたけれど、それでもやっぱり「あ〜どうしてこんなに上手くいかないんだ」と嘆いてしまう。
そんな胸の内を母にも言うわけにもいかない。
私も逆に母の前では元気そうに振る舞った。
そしてこう伝えた。
「お母さんに今死んでもらっちゃ困る、まだまだ生きていて欲しい」
お茶を飲みながら、少しでもライトに聞こえる様に伝えたつもりだ。
その時の母の返答が忘れられない。
「そうだよ、お母さんは生きないといけない。だって、あんたの子供を抱くの楽しみにしてるんだから。」
時が止まった。
「えっ・・・?」という顔が私の顔に表れていたと思う。
苦しい時、ギリギリに追いやられた時に人の本音は出るものだ。
母がこんなことを考えているなんて思いもしなかった。
既に母には孫もいる。兄が結婚して、すぐに娘が生まれた。私も叔母になった。
孫は可愛い。「おばあちゃん、おばあちゃん」とひっついて、子供が好きな母も幸せそうだった。
それでも、息子の子供と娘の子供は違う。
私も周囲の友人たちと話したことがある。
「息子の子供って、なんだかんだ嫁の子供って感じがしちゃうみたいだよ。娘が産んだら、頼るのはこっちになるから、それが嬉しいんだって。」
それでも、数年彼氏もいないし、恋愛もましてや結婚も考えていない私に対して子供!?という発想をぶつけられると、動揺してしまう。
常々結婚願望が薄いと伝えてきた。「またそんなこと言って〜」と返されていたけれど、本心ではそんな風に思っていたのかと思い知らされた。
誰のための恋愛で、結婚なのか。
母の病気は私を色んな意味で悩ませた。
メリッサ