見出し画像

第2回:紙かデジタルかではなく、紙もデジタルも用途に応じて使い分ける

正直に言えば、僕は紙がとても好きです。

字は汚いし、絵も下手くそ。それでも紙のノートや手帳が好きで好きでたまりません。

で、あるにもかかわらず、何故か僕の”ノートシステム”は緩やかにデジタル中心へと遷移していきました。紙がこれほど好きで、トモエリバーをつまみに酒が飲めるほどだというのに、情報管理はデジタルノートに完全にシフトしてしまったのです。

今では紙は、とっさのメモを取るときに手元にあるメモ帳に書き殴るか、考え事をするときにA4スケッチへ殴り書きをするか、考え事を持ち運ぶ様の情報カードだけになってしまいました。つまり、紙はTemporarilyな場所なのです。

かつてあれ程愛し、Daily Noteとして情報管理の入り口に鎮座していたほぼ日手帳カズンも、今ではメインストリームから外れてしまっています(今新たな使い途を模索中)

誠に、僕と倉下さんの共著「シゴタノ手帳術」を読んでくれた皆様には申し訳ない限りです。当時の状況では、ほぼ日手帳×クラウドツールが最強であったことは間違いなく、もしも前職の様にクラウドから隔絶された世界で再び働くことになれば、ほぼ日手帳が復活する可能性は大ではないかと思います。

https://amzn.to/39WJH1l

デジタルか、紙か、ハイブリッドかそれは問題ではない

かつては紙とデジタルを如何に融合するかに腐心していました。正直に言えば今も心の奥底でその欲求がくすぶってはいました。

でも、あるとき気がついたのです。デジタルか紙か、なんてのは些末な問題であると。

きっかけはiPad Pro+Apple Pencilでデジタル手書きノートを使い始めたこと。バーチャルと物質での区分が段々と曖昧になっていったのです。

手書きかテキストか、有限か無限か、検索できるかできないか。そういった機能の違いは意識すべき問題ではあると思います。そう、問題はデジタルか紙ではなく機能なのです。

例えば、紙の手帳。ウィークリーバーチカルのフォーマットの中では、1日分の情報を書くスペースに限りがあります。しかし、ルーズリーフの罫線ノートならどうでしょう?バインダーという制約はあるものの、その日書き残したいことが25ページに渡ったとしても、恐らく問題にはならないでしょう。

物質的な紙がどうしようもなく好きな僕であっても、それなりのスピードで進む会議のメモを取るのに、手書きよりもそれなりに高速なタイピングでテキストを打ち込むことを選びます。

逆に、一人で考え事をするとき、A4のスケッチブックを一枚小脇に抱えて会議室にこもり、一人であれやこれやと殴り書きをして、モヤモヤしたアイデアに形を与えていきます。スライドをゼロベースから作るときはほぼ100%、A4スケッチから始めます。

アウトプットに何らかのストーリーラインを与えたいとき、或いは集めた要素に構造を持たせたいとき、僕は紙では無くアウトライナーであるWorkflowyを開きます。YoutubeやPodcastのプロットはほぼWorkflowyで組み立てています。

ここで重要なことは、僕にとって重要な事は「紙」or「デジタル」ではなく、今の自分にとって最も適した機能を有するノートを選んでいるという点にあります。

人類が抱き続けたデジタルノートへの憧れ(完全なる余談)

昔々、スマホはおろか携帯電話すら誰も持っていなかった時代、ロータスオーガナイザーというWindowsアプリケーションがありました。紙のシステム手帳に有する機能を可能な限り忠実にアプリケーションに落とし込んだもので、コンセプトそのものは非常に素晴らしかったと思います。

しかしながら、当時はノートPCがコンシューマユースに降りてきたぐらいで(いや、もしかするとロータスオーガナイザーの発売当初はノートPCなんて無かったかも知れない)、起動も動作も遅く、重く、使い勝手も決して良いとは言えないものでした。気がつけば、ロータス社はIBMに買収され、ロータスオーガナイザーもいつの間にか見かけなくなりました。

昔話ついでに言えば、AppleはNewtonというPDAを、SHARPはZAURUSUという電子手帳(まぁ、PDAですが)を、前スマホ時代に出しており、子供心に「いつかは電子手帳を持ちたい」と思ったものでした。(ちなみに、大人になった私が真っ先に買ったのがSHARPのW-ZERO3 es Advanceなのですが、この話は長くなるのでまた別途)

つまるところ、人類というのは、スマホが生まれるずいぶん前から、紙の手帳/メモ/ノートをデジタルに置き換えたい欲求を持っており、あれこれ英知を絞っていたわけです。

そして、スマホとクラウドの登場によって、スマホとPCはシームレスに連携され、誰もが当たり前にスマホ、タブレット、PC/MACを使って情報を管理する時代を迎えることになりました。

前スマホ時代を多少なりとも見てきた世代として言えることは、情報管理はデジタルかアナログかみたいな事で一般大衆が悩めるようになったのはここ12年ぐらいのもので、それ以前のデジタルツールは「マニアのおもちゃ」、或いは「デジタル好きのための長物」でしかなかったわけです。

紙のノートを使い分けるように、デジタルノートも使い分ける

デジタルノートに憧れ、デジタルノートと紙のノートの融合(ハイブリッド)に苦心し、Evernoteに集約しようとして挫折し、あれこれさまよい続けて十数年。その先にたどり着いた個人的な結論が

紙の手帳/メモ/ノートもデジタルノートツールも、それぞれの用途に合わせて使い分けたらええやん。というものでした。

紙のツールを思い出してみましょう。デジタルツールが使い物になる以前は、メモを取るのにメモ帳を使い、今日一日の予定を手帳に書き出し、考えていることをノートに書き留める、そんな使い分けが当たり前だったのではないでしょうか?ノートへの記録一つとっても、日々の仕事の記録とアイデア、勉強でそれぞれノートを分けたいと思うことはごく自然な事のように思います。

例えばこれが、手帳をGoogleカレンダーとTodoistに置き換え、ノートは紙を使い続けるというのでも何ら問題はない訳です。Evernoteでメモを取っているからと言って、予定やタスクの管理までEvernoteである必要もないですし、Evernoteを使っているからと言ってA4スケッチブックを捨て去る必要も無いのです。

紙のノート時代にはあたりまえにやっていた「ノートの使い分け」が、何故かデジタルツールになると「ツールを集約する」方に向かう力学が働きがちです。或いはデジタルとアナログの棲み分けを明確にしたり、上手く両者を融合させたい向きも見受けられます。

メモをキャプチャし、Inbox或いはメモの集積地として機能させることにかけて、Evernoteは非常に優秀です。Evernote以前に紙のメモ帳を使っているとき、メモの散逸は非常に頭の痛い問題でしたが、Evernoteにアナログもデジタルも全てメモを集約させたことで散逸の悩みは消え失せました。(Evernoteが重くてイライラする別の悩みは生まれましたが)

しかし、Evernoteでストーリーラインや構造を整理したり、漠然としたアイデアに形を与えていくことは至難の業です。知識と知識のネットワークを繋いで行くことも不可能ではありませんが、ObsidianやScrapboxの方が圧倒的に作業効率が良いのです。

我々が考えるべきは紙とデジタルといった二項対立の棲み分けではなく、自身が持つノート或いは情報管理ツールに対する要件に対して、ミートする機能を有するツールを紙/デジタル問わずに選択することであろうというのが僕の結論です。

・予定は何で管理するのか?
・タスクは何で管理するのか?
・メモは何でキャプチャし、どこに保管するのか?
・会議などのノートはどこにとるのか?
・アウトプットのアイデアはどこに蓄積されるべきなのか?
・考えを整理すべき場所はどこなのか?
・勉強した内容をまとめる先は?
・知識を管理する場所は?
・日記を残すべき場所は?

上記の問いに対し、どのツールを使うべきかについては万能な答えは存在しません。僕にとってはWorkflowyがストーリーラインを考える際に最も最適な場所でしたが、これがテキストエディタやマインドマップであるという人もいると思います。そこは個人個人の好みの問題、或いはルーティンとして馴染んでいるか否かの問題だと思います。

最後に

勿論、いたずらに使用するツールの種類を増やすことは、情報管理の複雑性を上げてしまうほか、アテンションが分散してしまって結局ツールを使わなくなるなどの弊害を生む可能性があります。他の情報と同じ場所に情報を保管するために、最適とは言えないツールを使うこともあり得るでしょう。

「情報管理ツールに対する要件にミートする機能を有するツールを使う」と言われても、今ひとつイメージが湧かないと感じられる方もいらっしゃるかも知れません。

本連載では、「記録する情報」に対して「要件」を明示した上で「ミートするツール」を紹介するフォーマットを基本として進めたいと考えています。

ただ漫然と「僕の考える最強のノート術」を紹介するのでは無く、その背景にあるロジックをお伝えしていくことで、皆様自身の要件を明確化し、ご自身の用途にあったツールを選択する一助になればと考えております。

次回は、僕の現時点でのノート術を少し俯瞰的に説明する「全体概要編」をお伝えし、それ以降に個別詳細編に入っていきたいと考えています。

それでは、また次回。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?