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第8回:いかにアイデアを生み出しキャプチャしていくか

前回は「メモをノートにまとめ直す効能」ということで、メモを取りっぱなしにせずにそこからまとめ直すことによって理解の助けになることについて述べました。

これから何回かに分けて、メモ→ノートへの展開に関して別の切り口から、アイデアを生み出し、キャプチャし、発展させ、アウトプットにつなげるためにどういったどういった情報整理が必要かについて書いていきたいと思います。

今回は「アイデアを生み出す」ことと「キャプチャする」ことについて深掘りしていきましょう。

アイデアの解像度を上げてみよう

アイデアとは何か?

さて、よく「あの人はアイデアマン」だとか「あの人はアイデアが豊富だ」といった形で面白いアイデアを提示する人のことを表現する訳ですが、「アイデアって何ですか?」と聴かれて果たして万人の答えは一致するでしょうか?

恐らく答えは「No」だと思います。というよりも、言葉の定義から考えてみても、それは無理ゲーです。例えば、デジタル大辞泉でアイデアの定義を見てみると次のようになります。

アイディア
〔名〕 (英 idea)((アイデア))
物事計画実行などにあたって新し工夫思いつき考え
哲学用語。
(イ) 観念理念カントヘーゲルにおいて、理性働き対象となるもの。すなわち、神、意志の自由、絶対者など。イデー
(ロ) イデアプラトン哲学での観念的実在。すなわち、「善」そのもの、「美」そのものなど。
文芸美術用語。構想着想

https://www.weblio.jp/content/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%A2

ちょっとプラトンのイデア論は脇に置いておくとして、新しい工夫、思いつき、考え、観念、理念、構想、着想、といった当たりのいずれかがアイデアという言葉に結びつけられていると思います。

お気づきと思いますが、アイデアという言葉の中に例えば「新しい工夫」と、作品の「構想」、或いは哲学の「観念」が含まれています。そりゃまぁ、人によってアイデアの解釈が違って当然なわけです。

システム屋兼ブロガーにとってのアイデア

僕自身は企業勤めのシステム屋であり、ブログやYoutubeをやる人間なので、例えば以下の様なアイデアを日常的に扱います。

  • 日常業務の「改善案」

  • 新しいシステムの「構想」や業務課題への「解決策」

  • 新しい提案の「企画」やプレゼンの「ネタ」

  • プロジェクトの「計画」

  • システムの「設計」「実装」

  • 新しいブログやYoutubeの「ネタ」「下書き」

  • 誰かとやるイベントの「企画」、話す「プロット」、そのプレゼンの「ネタ」

ざっと書いてみただけであり、これで全てというわけではありませんが、これらの事柄を何らかの手段で「キャプチャ」し、「発展/育成」のプロセスを経て「アウトプット」を生み出します。こういったプロセスはどこかで聴いたことがあるかもしれません。

後ほど詳しくプロセスについては触れたいと思いますが、ここではまず、キャプチャの前段としての「情報収集/学習」というプロセスが非常に重要である点を強く主張しておきたいと思います。

しかしまぁ、ざっと書き出されてもまだ漠然としていると感じられた方もいるかも知れません。書き出したアイデアを一つピックアップして、少し具体的にみてみましょう。

例えば、システム屋を作るときに、いきなり思いつきや独善的な思考でシステムの機能やアーキテクチャを考えることはほぼ有りません。アイデアをPOC(Proof of Concept)で試すときに設計を端折ることはありますが、それでも先にアイデアがある構造に違いはありません。

例えば、世の中のモダンなアーキテクチャとは何かを考えたり、自分たちのシステムのミッションクリティカル性を鑑みたり、標準化やベストプラクティスを調べてみたりしてはじめて

  • システムのコンセプト/概要(どんなシステムを)

  • システムアーキテクチャ(どういったシステム構成で)

  • 機能要件(どういった機能を持たせ)

  • 業務要件(どういった業務を網羅するか)

といった事柄を決めていくことができます。アジャイル開発だろうとウォーターフォール開発だろうと、何を作るかが不明確なまま開発に着手することはできません。

また、「設計」を固めた後でも、実際にどのように「実装」するかという点にはある種の着想を必要とすることがあります。理論上は完璧に見えるシステム構成も、実際にやろうとすると思わぬ課題が見つかるものです。

それが、新しい文章の表現であれ、誰かに体系的に伝えたい事柄であれ、世の中をがらりと変わる革新的な事であれ、業務の課題を解決することであれ、僕たちはアイデアからはじめ、それを膨らましたり形作ったり時には大胆に切り捨てたりしながら、徐々に完成形たるアウトプットへと近づけます。

優れたアイデアをひらめき、キャプチャするために

さて・・、ここまで大凡2000字を割き、僕は要約本題の一つ「アイデアのキャプチャ」に到達することが出来ました。長い記事があまり好まれないことを僕はしっていて尚、この記事を分けずに続けたいと思います。

それほどまでに、この前振りには「キャプチャ」にまつわる非常に重要な事柄が含まれているのです。

アイデアメモがあるからひらめくのではない、ひらめくからアイデアメモが必要なのである

アイデアをひらめいたら忘れない様にメモをしましょう。アイデア出しをするためにブレインストーミングをしましょう。アイデアをより多く生み出すためにマインドマップ研修をやりましょう。カラーバス効果で自分の興味を対象に向けよう云々かんぬんエトセトラ。

まぁ、別に意味が無いとは言わないけれども、正直これらのことは本質をついているとは言いがたい。いや、メモは絶対いるんですが、メモを取るのは着想を忘れないためであって、着想そのものを得るためには「メモの準備」や「ツールの整備」よりも重要な事があります。

ぶっちゃけ身も蓋もないことを言えば「アイデアマン」と呼ばれる人は、ほぼ例外なく「自分のアウトプットのためによく勉強している(よく考えている)人」であり、一番重要なことは自分がアイデアを得たいと思っている分野について「一定以上の知識を有している」ことです。

勿論、知識を保有しているではアイデアをひらめくことは難しいですが、知識がないとアイデアをひらめくことはもっと難しくなります。

ジェームス・ヤングは名著「アイデアのつくり方」の中で「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」と言いきっていましたが、要するに自分がアウトプットを生み出す必要がある分野の「アイデアの材料たる知識」も「何が新しいを鑑定する目」もない状態でアイデアなんて生まれようがないわけです。

日本の会社あるあるだと僕は想っているのですが、おじ様たちが若者を捕まえて「フレッシュな視点で」「やわらかい頭で」「前例に囚われず」等とアイデアを求める無茶振りをかますわけですが、これは高い確率で上手くいきません。背景知識と圧倒的に失敗の量が足らないので。

この形で上手くいくのは、おじさん達が上手く知識を補完したり、若者達をレビュープロセスに組み込んで「視点」を活用する等の工夫がいるのですが・・まぁこの話はまた機会があれば・・。

さて、ここまで散々身も蓋もないことを言ってきたので朗報を一つ。革新的なアイデアの着想を得ることも、正しくシステムの設計をすることも、面白いプレゼンを作り上げることも「知識が必要」であることに違いはありませんが、それはイコール「長い下積みがいる」というわけではありません。

プロセスを組み立て、その時々のアイデアを活かせるようになる

いや、朗報と言っておいて何ですがぶっちゃけアイデアなんていうのは、「その時なりの結果」しか出せないことが殆どです。知識がそこそこなら、やはりアイデアもそこそこに留まる。しかしながら、アイデアをモノにする(アウトプットに結びつける)能力やスキルというのは、割と工夫でどうにかなる部分が大きいわけです。

例えばですが、何も事前調査もせず、自分なりに考え尽くしもせずにブレインストーミングなんてやっても殆ど意味が無いし、同様の状態で紙とペンを目の前に「さぁ、アイデアだしやるぞ」と意気込んだところで大した成果は得られないと、あなたは既に知っています。一歩前進です。

ちなみにですが、「ブレスト」や「紙&ペン」を使って全くアイデアが出なかったとしても、これらの道具には何ら罪はありません。恐らく、九分九厘、プロセスが悪いだけなのでこれを組み立て直していきましょう。

ということで何はさておき、まずは「事前調査」をしましょう。あなたが知識豊富で常々そのことばかりを考えてきたなら、そこは省けるかも知れませんが、僕が仕事で信頼している知識豊富な人程、アイデア出しの前に「事前調査」をしてから臨んできたりします。だいたい、「みんなで知恵を出し合おう」とか言ってるオッサンほど、他力本願なのか自分の知識を過信しているのか、ぶっつけ本番であることが多いのですが、経験や知識からレビューワーとしての役に立つこともあるので、明らかに邪魔と感じないなら邪険に扱わないようにしましょう。

そして、次にすべきことは「そのことについて考える」ことです。ネットで調べた、文献を読んだ、詳しい人に聞いた・・そういう内容を参照したりしながら考えましょう。紙とペンでもいいし、アウトライナーやマインドマップでもよいです。空想は人間の短期記憶的にお薦めしません。例えこの段階でアイデアが出なくても大丈夫、大体出ないもんだと多くの先達は知っています。

普通のアイデア本ならここで一旦寝かして発想をえる「ユリーカ!」なのですが、「散歩してたらひらめいた」とか「お風呂入ったらひらめく」とかってのは、そういう事もあるしそれで思いついたらラッキー、位に考えておきましょう。個人的なお薦めは「とりあえず時間を作って考え続ける」こと「誰かにラバーダックになってもらう」ことです。

結局の所「突拍子もないアイデア」というのは得てして「考え抜かれた結果他の人が思考のプロセスを再現できない境地に達した」だけだったという事が多いように思います。それが天啓であれ思考の結果であれ、他者の想像を超えていることに違いはないわけですから。

また「ラバーダック」でも「ブレスト」でも「レビュー」でも何でも良いと思いますが、自分が考えている事を未完成でも一旦話してみるというのはアイデアを生み出すのに非常に効果が高いように思います。説明をするなかで自分の考えが整理されたり、自分の考えが足りてなかった場所が分かったり、同じ課題意識を持つ仲間との会話がインスピレーションになったりと、なぜだか一人で悶々と考え続けている時に到達できなかった答えにたどり着けることがあります

別に「散歩」や「お風呂」が発想を得る手段として悪いと言いたいわけではなく、それにプラスしていくつか「自分が発想を得るためのルーティン」を用意しておく方がBetterだと思うのです。僕もアイデアをひねり出す必要があるときは大抵、ノートに向かう→思いつかないから散歩→ノートに向かう→諦めてお風呂に入る→マインドマップに変えてみる→・・・と七転八倒を繰り返しています。

そこから先は、アイデアをキャプチャし、アイデアを育てて行くというプロセスになるのですが、詳しくは次回の記事で書きたいと思います。

まずは以下の点を抑えてもらえればと思います。

  • アイデアを生み出すためには知識が必要だが、アイデアをモノにするためのテクニックは工夫次第でどうにかなる

  • アイデアを生み出し形にしていく「プロセス」を構築し、その時々のアイデアを形にしていく

アイデアのキャプチャについて

ぶっちゃけツールは何でも良いですが、散歩やランニング中に思いついた事を書くならスマホやスマートウォッチから入力できた方がよいでしょう。僕は考え事をするときは手書きのノートを使うため、ここで考えた内容を写真データとして取り込みます。

上記内容を含めて、僕にとってアイデアキャプチャに重要な要件としては以下の3点です。

  • 様々なデバイスでメモを瞬時に取れる

  • 様々なフォーマット(文字、音声、写真)に対応している

  • それらが一カ所に集約できること

  • メモの内容を他ツールから参照できること

僕はEvernoteを使っていますが、NotionがいいとかCraftがいいとかその辺は人それぞれ好きにやって貰えれば良いと思います。

例えば僕は、プレゼンのプロットはアウトライナー(Workflowy)で作りますが、プレゼンにどんな図を用意するかは手書きのA4で考えます。これらはプレゼンのアイデアであり、プレゼン資料を作成する際には貴重なInputとなります。

プレゼン資料を作るTodoist上のタスクから、これらの絵やプロットが参照できることは、アウトプットの生産性を高める上で非常に重要であるため、これらアイデアキャプチャツール、アイデアを広げるツールに関しては外部からリンク等で参照/Jumpが可能である事がMust条件となります。

さいごに

残念ながらこの記事を1月中にアップすることができず、再始動を2月に持ち越してしまいました。なんとか2週間に1回ぐらいはアップしたいと思っていますので、引き続き気長にお待ち頂ければ幸いです。

次はキャプチャしたアイデアを発展させ、アウトプットに繋いでいく話について書いてみたいと思います。

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