アザラー、北へ行く~第2回 都会暮らしのアザラシ~
アザラー、北へ来たがどこへ行く?
北の大地は意外にも暖かく、この日の気温はマイナス5度だった。もっと寒いかと身構えていたが、きちんと対策をすれば生きていられるレベルだ。
上半身はヒートテック、長袖シャツ、セーター、ダウンコートにマフラーを巻いていた。下半身はパンツとジーンズ、厚めの靴下、そしてAmazonで買った3000円のスノーブーツを履いていた。スマホの操作ができる手袋をしていれば、アザラシほどの皮下脂肪がなくても、北海道で生きていけそうな気がした。
苫小牧フェリーターミナルからは駅に向かうバスが出ており、ちょうど特急「すずらん」と接続するようなダイヤになっているのが嬉しい。
ただし、時刻はすでに14時30分。こんな時間からどこへ行くのか? 観光なんてできるのか? その答えを、アラザーが披露します。
都会の水族館「サンピアザ水族館」
札幌の副都心である新札幌。
新札幌駅を降りて、ショッピングモールをしばらく歩いた先に水族館がある。屋根があるかと思っていたが、最後は外に追い出されてしまった。
雪が降っている。もちろん、積もっている。瀬戸内の住民にとっては珍しい光景とともに、試練である。真っ白な路面は滑りやすく、慎重に歩いた。
試練の先にあるのが「サンピアザ水族館」である。
アザラー、さいごうくんと出会う。
雪がしんしんと降る平日の16時ということもあって、館内のお客さんはまばらだ。レトロな雰囲気の内装も相まって、少し寂しい気持ちになる。
私が訪問したときのお客さんは、おそらく10人もいなかった。
そんな寂しい雰囲気だからなのか、アザラシにごはんをあげるお兄さんも、なんだかダウナーな感じであった。でも、このダウナーな声色が癖になる。
この水族館に住んでいるのは、女の子の「すずちゃん」と男の子の「さいごうくん」だ。さいごうくんは、2022年3月生まれのアザラシで、訪問当時はまだ1歳であった。
話は変わるが、アザラーには次のとおり3つの派閥がある。
アザラー達は、どのアザラシが可愛いか白熱した議論を行い、最終的には「アザラシ可愛い」という結論に落ち着くのだ。
話を戻そう。さいごうくんは御年1歳だから、まだまだ幼獣である。アザラーの派閥でいうと「ミニサイズな子どもアザラシが可愛いよ派」に属する。顔つきは、見ての通り幼い。つまり、見ての通り、とてつもなく可愛いのである。
ごはんタイムが終わったさいごうくんは、まずは腹ごなしということでプールの中をうろうろとしている。ただ、ごはんを食べる前と比べると、明らかにその速度は緩慢であった。人間と同じだね。
続いて、プールの端っこに寄って横倒しになるという、変な体勢を取り始めた。しばらくすると、横倒しのまま前肢でお腹を叩き始めた。前肢でお腹を叩く動作というのは、本来は威嚇目的と言われているのだが……ガラス越しに見ている分には、怒っているようには見えない。
「ふぅ~まんぷくまんぷく……」ということでお腹を軽く叩いているのだろうか。あるいは、「変な人が食後のボクを見つめてくる……威嚇するか」という気持ちなのだろうか。ソロモンの指輪が欲しくなる。
そして、身体をプルプルと小刻みに震わせ始めた。このような行動も、威嚇の一種であるともされている。
その後、さいごうくんは直後に大きく口を開けて、目を閉じた。眠かったのかな。ごはんを食べたもんね、眠いよね。
仮に威嚇しているつもりだとしても、目つきが可愛すぎる。ぷっくりした鼻に、下を向いたヒゲ、コロンとした丸い身体に、細くなった眼。文字どおり可愛さの塊だ。
アザラシは泳いでばかりではない。表情が豊かで、コミカルな行動を見せてくれる。アザラーがアザラシにハマる気持ちを、少しでも理解していただければ幸いだ。
アザラー、寿司を食べる。
アザラシさんは魚を食べていた。であれば、アザラーも魚を食べるべきなのでは?
という発想でやって来たのが、根室花まる ココノススキノ店である。根室花まるというのは、北海道最東端にある根室市を本店(たぶん)とする、回転寿司チェーンである。以前に道東ツーリングをした時、中標津のお店で食べたことがあった。それ以来だから、およそ3年ぶりぐらいだろうか。
このお店は、とにかくネタのサイズがデカくて満足感が高い。昨今の値上げラッシュでネタが小さくなっていなければいいのだが。
まずは、心配していたサーモン。
変わってない、巨大だ! シャリの2倍はあるだろうかという大きさで、味も濃厚、食べごたえ抜群だ。これならアザラシさんも満足してくれそうだ。
次はニシンのお寿司をいただく。アザラシさんはニシンも好物というらしいのだが、食べてみてその理由が分かった。脂がたっぷり乗っていて、口の中に幸せが広がった。そりゃあボディもまん丸になるわけだ。
最近、北海道ではブリも多く捕られるようになったという。地球温暖化の影響なのか、まだまだ分からないことは多いそうだが、ひとつだけ、はっきりしていることがある。北海道のブリも美味しい。
最後はカレイのお寿司を食べる。これもアザラシさんの大好物だ。前足を使って器用に食べるらしい。アザラシさんもお墨付きの、北海道産カレイ。もちろん味は最高だった。カレイって煮付けだけだと思っていたけれど、こんなに美味しいとは知らなかった。
さて、茨城と北海道の回転寿司対決。どちらが勝ちか、甲乙つけがたいのだが、今回は茨城の勝ちとしたい。正直、茨城のポテンシャルを舐めていたところがあった。あんなに美味しいのなら、もっとアピールしてみたらいいのに、と思わなくもない。
で、満足した気持ちで、軽くすすきのを徘徊しようと思って外に出たところ、こんなことになっていた。
大雪だ。なのに人も車もたくさんいる。こんな世界はおかしい。
道民とアザラシさんなら平気なのだろうが、私は瀬戸内海生まれの人間だ。耐えられない。いそいそと宿のある千歳へと戻って行った。
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