北海道にあるという「この世の果て」に行ってきた話をしたい
はじめに
みなさんは「この世の果て」が、どこにあるかご存知でしょうか?
chatGPT先生に聞いたところ、「この世の果てってのは文学的な表現だから、実在はしませんよ」と答えられてしまいました。面白くないなお前。
そこで、大先輩であるGoogle先生に聞いてみましょう。
なるほど、この世の果ては北海道にある野付半島というところなんですね。
というわけで、今回は野付半島に行ってきたお話をしたいと思います。
位置関係を掴みたい
野付半島というのは、Google大先生によると根室半島と知床半島の中間にある半島とのことです。文章では分かりづらいと思うので、地図で位置を確認してみましょう。
なんとなく位置関係は掴めたでしょうか?
既に日本の果てみたいな場所にあることがわかると思います。
ところで、この半島は不思議な形をしてると思いませんか?
これは専門用語で「砂嘴(さし)」と呼ばれる地形です。川から流された土砂が堆積するときに、海流の影響でまるで鶏の嘴(くちばし)のような形になった地形のことを砂嘴といいます。
ちなみに、この砂嘴が伸びていった先に陸地があれば天橋立のような地形になったり、島があれば江ノ島のような地形になります。
さて、この野付半島ですが、地図で見てもユニークな見た目をしていますが、航空写真で見るとそのユニークさが更によく分かります。
そして、この半島の付け根から四分の三ぐらいの場所に「トドワラ」と呼ばれる、この世の果てとしか思えない景色が広がっているそうです。面白そうだから、これは向かうしかないですね!
そして「この世の果て」へ
トドワラに向かうためには、まずは近くにある「野付半島ネイチャーセンター」に向かう必要があります。
ここで内地のみなさんにクイズです。
半島の付け根から、四分の三ぐらいのところにある野付半島ネイチャーセンターまでの距離はどのぐらいでしょうか?
ですよね、そんな大きな半島には見えませんよね。
答えは④15kmぐらいです。
でも心配はいりません。15分ほどで着いてしまいます。
時速60kmで走れば1kmあたり1分だから、つまり15分ってことですね。
(15分以下のタイムは北海道警察に目をつけられるから慎重に)
というのも、途中に信号はおろか交差点のひとつもないからです。
さすがこの世の果て、スケール感が違うな……!
(といっても、道東では15km走っても信号がないのはよくあることですが)
この世の果てが近づいて来るとともに、周りの景色も段々と終わってきます。終わってくるってのはポジティブな意味で終わるってことね。
周りには陸とも海とも区別がつかないような場所が広がるようになって、枯れた木が多く見られるようになってきます。
そして、野付半島ネイチャーセンターに到着です。
この看板が目印です。とても道東らしい看板ですね。
この世の果てである「トドワラ」というのは、さらに遊歩道と木道を1.6km歩いた場所にあるようです。
この世の果て、不便なところにあるんですね。
そこで!
この世の果てに便利に行きたい人のために、途中の遊歩道をスキップできるサービスが用意されています。
それは、トラクターバスと呼ばれるもので、トラクターの後ろに人が乗れる客車のようなものが牽引されています。途中の遊歩道は、ぬかるんでいる場所もあるので、とても便利ですね。
これを見た僕は「三途の川の渡し船と言うけれども、最近は環境のことを考えてLNGで動く新型船が導入されていたりするんじゃないか?」などと思いました。
遊歩道を歩いて「この世の果て」に向かう
トドワラに向かうには、最初に1.3kmの遊歩道を歩く必要があります。遊歩道は狭くて、人ひとりがすれ違うにも苦労するような幅しかありません。
ススキが生い茂る風景も相まって、この世の果て感を強く感じます。
遊歩道を歩いていると、ふと動物がいるような――それも鳥類ではなく、もっと大きな動物――そんな気配を感じました。
エゾシカです。オスとメスが複数います。
遊歩道からはかなり離れた場所にいたので、350mmの望遠レンズを使って撮影を行いました。
何という貫禄。
こちらを一瞬チラリと見た後は、元通りに草を食んでいました。そして、この世の果てを悠然と歩いて行きました。
おそらく、人類が滅亡したとしてもエゾシカはこの地に存在し続けるのだと、確信しました。それにしても、何を食べたらあれほど立派な角が生えてくるのでしょうか。
こちらは、参考資料の奈良の鹿です。かわいいね。
遊歩道をしばらく歩くと、不意に開けた場所に出てきて、大きな看板が目に入ってきました。
目的のトドワラというのは、この先にあるようです。トドワラまでの道は、木道が整備されています。自然環境の保護のため、この木道から降りることは禁止されています。
この世の果てに佇む「トドワラ」
トドワラというのは、かつてここに生い茂っていたトドマツのこと。どうやら、100年前は、ここにトドマツが原っぱのように広がっていたそうです。
しかし、今では立ち枯れ朽ちたトドマツがあるだけです。ここは海のすぐそばなので、潮風や海水でトドマツが枯れていきました。さらに、野付半島は1年に1.5cmも地盤が沈下しています。
トドマツは、この場所の歴史を静かに語っています。
トドマツは、この場所の未来も語っています。
この景色も、この半島も、やがては海の中へと消えていくのだと。
そして、ふと振り返ると。
とても美しい景色なのですが、人の気配は一切ありません。
まるで、この地球にひとり取り残されたように感じて、思わず身震いがしてしまいました。
この世の果てには、退廃的な美しさがありました。
「この世の果て」は「楽園」でもある
こんなことを書いていると、皆さんには、野付半島は死にゆく場所なのかと勘違いされそうなのでフォローします。
むしろ、生き物はたくさんいます。特に鳥たちにとっては楽園です。
野付半島はラムサール条約に登録されている湿地です。
私はサギやカモメぐらいしか見つけられませんでしたが、他にもタンチョウやワシ、ハクチョウなど様々な野鳥を観察することができるそうです。
また、花や植物も多く見られます。私が判別できたのはアッケシソウだけでしたが。
野付半島は北海道の果てにある観光地だった
野付半島は、この世の果てが味わえる素敵な観光地です。
しかも、観光の拠点となる野付半島ネイチャーセンターには、レストランが併設されていて、別海町のグルメも味わうことができます。
かくいう私も、1階のレストランで昼食をいただきました。
頼んだのは別海ジャンボホタテバーガー&牛乳セットです。
春巻きの中には大きなホタテがゴロッと入っていて、噛むと中からホタテのエキスがじゅわっと出てきて幸せになれます。
セットの牛乳も、とても濃厚で最高の組み合わせですね。
おまけ エゾシカには気をつけようという話
ここからは全くの余談になります。
トドワラを見終えて遊歩道を歩いていると、おそらく先ほど見かけたエゾシカのメスが、トラクターの走る道の上にいました。
写真を撮ろうとカメラを構えたその時、なんとトラクターのエンジン音が聞こえてくるではありませんか。
所詮はトラクター、スピードは遅いのでエゾシカが避けることで悲劇は回避されました。
しかし、エゾシカが逃げた方向には、自動車が走る道路があります。
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