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ドーナツとコーヒー、ときどき本

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特別に読書家なわけでも、文学に明るいわけでもない、ごく普通なアラサーの読書備忘録
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2018年8月の記事一覧

見よぼくら一銭五厘の旗

見よぼくら一銭五厘の旗

2年前、「暮しの手帖」の創設者・花森安治さんの展覧会で、『見よぼくら一銭五厘の旗』という文章に出会いました。とんでもない名文だったので、本を買って、一部書き写してみました。(全文じゃないです)

美しい夜であった
もう 二度と 誰も あんな夜に会うことは ないのではないか
空は よくみがいたガラスのように
透きとおっていた
空気は なにかが焼けているような
香ばしいにおいがしていた
どの家も 

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ダイジェストよりもディテールが知りたい

ダイジェストよりもディテールが知りたい



『むかしこっぷり』というマンガを読んだ。身近な人の、なんとなく忘れられない小さな昔話を集めた短篇集だ。

子どもの頃、近所に住むお兄さんに10円玉をもらったこと。教室の窓の外に生えていたポプラの木が切られたこと。仔犬がいなくなってしまったこと。

人生のダイジェスト映像からはカットされるけれど、間違いなくその人の血肉となっているようなエピソードが、やさしくささやかに編まれている。

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想像と妄想

想像と妄想

『夕凪の街 桜の国』というマンガを読んだ。広島の原爆をテーマにした話だ。

作者のこうの史代さんは、戦争体験者ではないらしい。いろんな人に話を聞きながら、いろんな資料を見ながら、たくさんの人の協力を得てこの作品をつくったのだとあとがきに書かれていた。つまり、この作品は「想像」で描かれたものだ。

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私はこれまで、「想像」ということばを大きく勘違いしていた。

「想像する」とは、ひとりで頭の

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