見出し画像

カイゴはツライ?第14話~逃げ口上もここまでくると…

各ユニットでごはんを炊くべきか否か、もはや職員間を二分する大騒動となっていた。施設長と介護部長の間でも意見は割れていた。施設長は、経営トップとして、炊飯ジャーの購入費や光熱費のことが心配であったようだ。全ユニットでやらなくとも、できるところだけが試験的にやってみたらいいじゃないかという考えだった。一方介護部長は、やるところとやらないところがでてくるのはよくない。やるなら全ユニットいっせいじゃないといけないといって譲らなかった。騒ぎを聞きつけた法人内の他の施設長は、まだ時期早々だ、優先順位が間違っている。ごはんをユニットで炊くことも大事だが、先にやるべきことがあるだろうと、騒ぎを収めようとした。ユリはこの騒動を冷ややかな目で見ていた。なんだか茶番劇のように思えておかしかった。松岡さんたちユニットケア推進派は、ごはんを各ユニットで炊くことがユニットケアにとってなくてはならない最低条件であるかのように喧伝していたが、ユリには、ごはんをユニットで炊くかどうかというのは些事にすぎないように思われた。どうでもいいことになぜこんなにもこだわるのかと不思議だった。一旦取り下げて、導入方法を検討したうえで再度提案すればいいものを、なにがなんでもやらないと気がすまないという頑なさが不可解だった。問題は沽券なのか、あるいは画期的な方法を取り入れたという功名心が欲しいのか、そんなうがった考えまでが頭をよぎった。ユリは、こうなったら施設長が決断するしかないのではないかと思った。皆もそう考えているのがみてとれた。だが、施設長は決断を避け、逃げてしまった。こういったことはトップダウンでやることではない。押し付けるようなことはしたくない。職員が自分たちでどうしたらいいか決めるべきだ。納得のいくまで話し合って決めて欲しい、そう言って手を引いた。ユリはがっかりすると同時に心底あきれた。仮眠時間や休日が減らされたときは、一方的なトップダウンだったではないか。駐車料金はひとことのことわりもなく、トップダウンで賃金から控除されていたではないか。施設長のこういった態度には、怒りよりもむしろ、こりゃだめだの思いを強くした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?