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もうろう /詩

もうろう 2022/11/25 23:06

君と何度だって初めて出会いたかった。

パラパラ漫画の最初のいちまいめからさんまいめまで。

そんなのだけがずっと続いてみてほしかった。

君を見上げる首の角度に慣れる前に

何度だって忘れたかった。

脳の後ろの方にこびりつく

甘酸っぱいいちごを燻したような

もう甘いとも苦いとも分からない記憶の残り香だけ

それだけを纏って毎日鏡の前で、煙を巻いている。

手を伸ばすと見える、その手の甲の皺や滑稽さは私から全てを奪うのに十分で。

でも陽が透かす憎たらしいほど図太いその血管が目に入る。

笑うしかなかった。笑っているように口角を上げた。


ただ、ただ、過ぎた。過ぎて最後の一枚がここにある。


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