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朝顔が怖い

夏休みのこと、もう一つ。

5月に、娘と一緒にガレージ横の花壇に朝顔の種を蒔いた。
2年前に生活の授業で朝顔の観察をしたときに採れた種。ずっと花壇で朝顔を育てたい、と言われていて、2年越しで約束を果たしたかたち。

種を蒔くとき、10個足らずの種を間隔をあけて丁寧に蒔いていく娘。手元には50個以上もあるんだし、2年越しの種だからもうちょっとたくさん蒔いといたら?と娘が蒔いた倍以上の種をまあまあ密に埋めたのはわたしだった。

数日して芽が出たよ、双葉が開いた、ぐらいまでは娘と成長の様子を観察しては喜んでた。可愛いねえ、愛おしいねえ、と。
成長の早い何本かは着々と蔓も伸びてきて、支柱を立ててみたりもして「生育を楽しむ」ことが出来ていたのは梅雨前ぐらいまで。

梅雨を迎え、水をあげなくても成長してるのが分かるし、ガレージに行かない日が重なって、数日ぶりにガレージに回ってたまげた。
むちゃくちゃ成長してた。

みっちりと葉が生い茂り、支柱なんかじゃ物足りなくなった蔦が行き場を求めて車の方まで伸びてきてる様子が、獲物を狙うヘビ女に見えてきてぎょっとした。こ、こわい。
誰だ、こんなにたくさんの種を蒔いたのは。(わたしなんだけど)

ちょっと手に負えなくなってきた感を感じながら、朝顔の成長の為すがままにすること2カ月弱。夏のエネルギー満点の太陽と、適度に降る雨のおかげで朝顔の勢いは留まることを知らず、気づいたら全体のボリューム感は梅雨どきの3倍ほどになってた。
だから、誰だよこんなにみっちり種蒔いたのは。(だから、わたしなんだけど)

以前は小学校からもらった小さなプランターで育てていた朝顔が、地植えの力でエネルギー30倍、可愛さのカケラもなく何ならアグレッシブさしか見えず、おかげで娘の朝顔への興味は一切無くなったのが分かる。
そらそうだ。なんならわたしだって手放したい。だって日に日に蔓は伸びて花壇のほかの花々を覆いつくしてきただけでなく、ガレージまでもを襲わんとしてる。

おまけに、毎日たくさんの花が咲く。ピンクや青や紫や、綺麗だけどこれが全部種になることを想像したらさらに怖くなってきた。
ちょっと待てよ、たった20粒足らずの種からこれだけのボリューム感の葉や花となり、そうして出来てくる種はいくつなんだ、どれほど強い繁殖力なんだ。花の数ぶんだけ種のもと、毎朝咲く花を横目に見ながら考えただけでぞっとしてた。

夏休みも大詰め、長男が宿題を駆け込みでこなしながら数学の自由研究ネタを一生懸命絞りだしてた。あーでもないこーでもないと悩む様子に、ガレージの朝顔を思うわたし。ねえ、あの繁殖力を数値化したら?
1粒の朝顔の種が5年後には何粒になるか計算してよ、と持ち掛けてみた。

で、計算してもらった結果。(長男のレポート抜粋)

①朝顔の種1粒は1年で100~200の花をつける(地植えの場合)。ここでは,1年で150の花をつけるとして計算する。また,一つの花からは6個の種がとれるものとする。よって1年でとれる種の数は

150×6個=900個

②①で1年に900個の種がとれると分かったので,2年後を考える。

900×900=810000個

3年後は

810000×900=729,000,000個

よって5年後は「4年後の個数×900」になると考えられるので

656,100,000,000×900=590,490,000,000,000個

結果朝顔は1粒の種から5年後には約590兆個の種を生み出すことが出来る。

え。
1粒の種、5年後には590兆個だと?

その情報をもって花壇の朝顔を見たらもうホラーでしかなくなり、もうこれは早々に向き合わざるを得ない、とすべて引っこ抜いた。根っこもしっかり、もう闘い感がすごかった。
命あるもの、とか、まだ花咲いてるのに、とか思わないでもなかったけれど、種が出来て落ちる前にその循環を喰い止めることに必死だった。

で、根っこ引っこ抜かれて葉が枯れても咲く花…どんだけ。。


朝顔、恐るべし。
計算結果を見ながら朝顔のエネルギッシュさを長男と再確認し、これホンマかな、計算が違いましたっていっそ誰か言ってほしいレベルだけど、とその結果に恐れ慄いた。そして出た結論が、朝顔って小さなプランターで、遊びに夢中でときどき水をやり忘れて萎れるもまた復活、ぐらいのスタンスで育てるぐらいがちょうどいいのかもな、ということ。
じゃなきゃ、世界中朝顔だらけになっちまう。

なぜまだ咲く…?驚

ちなみに、抜いたはずの朝顔、今朝花壇を見たら一部がまだ頑張ってた。
そんなに簡単に消え失せるつもりはないぜベイビー、と言われているようで、いちいちホラー。


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