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イノサンルージュを読んで

久しぶりに最初から最後まで漫画を読んだ。

12巻まで4時間ぶっ通し。創作者になりたくとも、作品の吸収を最近ろくにやっていないのを反省して、読んだ作品。

イノサン・ルージュは、イノサンの続編だ。

主人公が、ルイ16世の処刑人、シャルル・アンリ・サンソンから、妹のマリーに代わる。

処刑人のマリーが真の自由を求めて、フランス革命期の貴族と平民のせめぎあいの中で戦い続ける物語。

貴族の優美な生活のために、生活を食いつぶされる平民。結果、国王を頂点に成立するピラミッドをひっくり返すこととなったフランス革命。しかし、平民が手に入れる自由の中には、女性は含まれていなかった。当時にそのような発想はない。殿方と子供の愛に生きるという女性の幸せが固定化されており、自由を手に入れるのはズルいという発想になる時代。

そこに「サイアク」と発し続けるマリーの問いかけは、いつも力強い。

でも女性の幸せに反吐がでるといったマリーだって、貴族の皆殺しという目標は、愛する人物を死に至らしめた貴族への復讐が底にあったのだった。

彼女も愛に生きていた。

ただ彼女に、「ゼロ」という子供ができてから、彼女は自分のためではなく世の中の理不尽と戦う生き様をみせつけるようになった印象を受ける。

マリーは「ゼロ」に12年間の年月もの間、目の周りが格子になった鉄仮面をかぶせるという肉体的な不自由を敷いていたが、自然状態にある人間を作り上げるためだった。あらゆる価値観に染まらせず、あらゆる価値観をフラットにみせるために、あえて我が子の視野を物理的に制限していた。まるで、SNS中心生活で情報が多すぎるがゆえに、本質とは程遠いところで議論を重ねる現代人への痛烈な批判をしているのではないかと思った。

事実、作者はツイッターやラインでアントワネットの承認欲求や孤独を何度も表現していた。

イノサンは非常に絵も物語も非常に重厚で、特に人間の狂気の表現に引き込まれる。

青年誌向けの重厚な表現でコアなファンに評価される歴史モノ作品、非常に憧れる。


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