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コロナ禍の上演ガイドラインを考える(前編)【5月ベイビーシアター研究会】レポート

2020年5月のベイビーシアター研究会では、コロナ禍における「ベイビーシアターガイドライン」を検討しました。

2020年5月25日に、公文協(※)がコロナ禍における上演ガイドラインを発表しました。舞台上で赤ちゃんと役者のスキンシップがあるベイビーシアターでは、公文協のガイドラインに照らすと多くの課題あります。
研究会では、会場となる施設側の視点や、子どもたちを預かる小学校や保育園での事例を元に検討しました。

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※公益社団法人 全国公立文化施設協会
劇場、音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」(令和2年5月25日)


施設側の視点から見た課題

公共施設の運営に携わる二人の方に事例を伺いました。
上演中の赤ちゃんと演者の距離と、客席のソーシャルディスタンスが課題に上りました。

 ●ベイビーシアターはお客さんと演者がいっしょくたに近い距離で行う。どうすれば危険を回避できるのか。(感染予防の面で)
● 家族連れの来場が想定されるが、客席のソーシャルディスタンスに基づいて一人ずつ離れて座るというのは難しい。ひと家族でひとかたまりと捉えるなど、シミュレーションと現場への落とし込みが必要。
●公文協などのガイドラインを前提にすると、定員の半分以下など、客席を大幅に減らさざるを得ない。
●稽古が密になる。どうやってスタートさせるか。
●1000人規模のホールでは、受付段階でどう密を避けるかというガイドラインを備えることも重要。

ピッコロシアターの田房さんは、劇場内に空気の導線を作るということを検討されていました。

田房さん:
「シアタースタート(ピッコロシアター内のベイビー向けプログラム)では、空気の流れを作るのが得策だとしたら、全部開け放してやるのはどうだろうと話しています。
ピッコロシアター内のホールはロビーのすぐ外側に窓があり、開放すると外気が入る状況が作れます。この環境を活かして半屋外のような空間イメージでやれないかと。
作品の真正面から観るなど細やかにはこだわれないけど、出演するアーティスト側にも考えていただいてます。」


小学校や保育園でのコロナ禍の取り組み

ベイビーシアターは乳幼児を対象としたシアタープログラムです。
乳幼児を預かる幼稚園・保育園や、その上の小学校での現在の取り組みを伺いました。

「(保育)園生活では三密を避けるのは不可能というのが共通認識です。子どもが1mのソーシャルディスタンスを取るのは難しいです。気温が35度になると、窓を空けての保育は熱中症リスクが高まってしまうので、コロナよりも熱中症リスクが心配されます。」

「小学校では文科省から休校解除にあたっての新しい生活様式に向けたガイドラインに、換気が重要な項目としてあります。体育館のような広い天井でも、エアコンを使用している教室でも、30分に1回、数分間程度、窓を全開にして空気を回します。」

園児同士の「1m間隔の確保」は難しく、ゼロリスクではないことを保護者に理解していただくことを前提にしている点で、公文協などのガイドラインとはスタンスが異なりました。
(「感染の可能性をゼロにすることはできません」と筆者も子どもが通う保育園で言われました。)


必須の部分を定義し、リスクカットを判断していく

「日本スポーツ協会」の感染予防ガイドラインでは、人と人との接触があるせいか、公文協のガイドラインと比べると緩く見えるところがありました。
それぞれの業界ガイドラインでは、対象とするものが全く実施不可能な状況に陥るようなルールづくりはされていないと読むこともできます。

では、ベイビーシアターの運営ガイドラインを考えるにあたり、軸はどこになるのか? それが問題です。
ベイビーシアターを実施をするにあたって必須となる要素をまず定義し、それを元に、どのリスクをカットするのか検討するべきです。

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シアター経験として接触できる場の重要性

「人と人との接触を減らしていくこと」が一般的なコロナ感染予防対策になっていますが、劇場の中においても、現実の世界と同じく接触を減らしたコンテンツを提供することが劇場の役割と言えるでしょうか?

「接触ということ自体が今は非日常になっている。そうであるなら(接触)するべきだと思う。
日常にも行わないような接触のあり方を、ある管理された環境の中で思考するというのは、劇場として社会的に重要な機能。」

とはいえ、接触可能なように様々に対策したとして、それを受け入れるかどうかは観客の自己責任になります。緊急事態宣言が明けたばかりの今行うに有効な対策とは言えません。

そうでありつつも、「でもその選択肢はやっぱり常に持っておくべきかなと思うんです。」という意見には、改めて感じさせられることが多くありました。

BEBERICA theatre company弓井茉那さん:
「ベベリカのベイビーシアターは接触なんぼみたいな作品で、そこにこだわってやってきました。この世間に『いや、接触しましょうよ』と言っていく、それもアリだと思っています。
とはいえやはり対策を講じないといけません。そういうところに立たされているカンパニーは多いと思います。カンパニーだけじゃなく劇場も。」


次回は、ベベリカの公演の映像を実際に見て、これを事例にてベイビーシアターの必須部分を考えていきたいと思います。


文、編集:細貝由衣


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