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レバビバ!【本編無料公開】

商業未発表作品
2021年作成
漫画原作想定のシナリオです。

現状はサンプルおよびポートフォリオの様相が強いです。本作にご興味のある企業担当者様はこちらからご連絡をお願いします。

※本編は全文無料です。短文のキャラクター詳細だけ有料ですのでご注意ください。


登場人物


《中開大学1年》
空澄天輝(あすみてんき)184センチ
海山道最波(みやまどもなみ)179センチ
磯迅(いそじん)171センチ
深見夏尾(ふかみなつお)189センチ
間茉凛(はざままりん・24歳女性)177センチ 
 
《同2年》
飲目九號(のめないん)180センチ
 
《その他》
海原セナ(うなばらせな)185センチ。天輝の元パートナー
川越(かわごえ)172センチ。天輝の元パートナー
七瀬海(ななせかい)179センチ
 


本編

〇海上
サーフボードに座って波待ちをしている最波。
彼は沖ではなく浜辺を見ている。
浜辺ではビーチバレーが行われている。
砂の上をジャンプして、スパイクを決めるセナ。
すまし顔のセナ、喜んでいるパートナーとタッチを交わす。
それをじっと見つめる最波の目。
 
タイトル「レバビバ!」
1話「新入生歓迎試合」
 
〇ファミレス
川越「俺達、解散しよう」
天輝「(ステーキを食べてる最中)へ?」

学生服姿で向かい合う天輝と川越。

天輝「今? 次が高校最後の大会の今?」
川越「だからだよ!(悔しそうに俯く)俺は結果出したいんだ」
天輝「次は2回戦行けるかも」
川越「お前とじゃ無理」
天輝「そんな断言しなくても」
川越「いいか、天輝。ビーチバレーってのは、パートナーと同じゴールを目指すスポーツなんだよ。お前のゴールは何だ」
天輝「えっと、死ぬまで趣味で続けられたらいいなぁって」
川越「(ため息)お前は意識が低すぎる。ハングリーさがない。俺達方向性が違いすぎる」
天輝「売れたバンドじゃないんだから……川越くん来年就職でしょ? 最後の試合が即席ペアなんて楽しくないって」
川越「わりぃな、天輝。俺は遊びで部活やってないんだよ」
   
川越、立ち上がり、伝票を手に取る。

川越「俺の奢りだ。まぁ、手切れ金かな」
天輝「えー、そんなぁ」
   
ひとり取り残される天輝。

天輝「(ため息)またこれか」
天輝(プロ目指してるワケじゃないだろ)
 
〇ビーチバレー大会会場(8月)
コート上で打ちひしがれている川越。
それを遠くから眺めているジャージ姿の天輝。

天輝(わかってたハズだろ。即席ペアで勝てるスポーツじゃない)
   
パートナーと共に泣いている川越。

天輝「……」
七瀬「彼はパートナーが欲しかったんだね」
   
天輝の隣にしれっと七瀬が立っている。
七瀬、天輝の視線に気がつきニコっと笑ってから、会場を去る。

天輝「誰?」
観客「来た、海原セナだ」
観客2「帝王だ、帝王」
天輝「!」
   
観客がゾロゾロと移動を始める。
そのコートの先に、セナとパートナーがいる。
セナ、クールな表情。

天輝「(微笑)かっこいいねぇ」
   
天輝、会場を後にする。
 
〇中開大学・外観(翌年・春)
 
〇同・校内

サークル勧誘ブースが並んでいる。
その前を垢抜けた男女が行き交う。

天輝(おーおー、やっぱ中高とは違うな)
   
天輝、スマホを見る。

天輝(サークルもイイ感じに緩そうだ)
   
中開大ビーチバレーサークル『レバビバ! ~Laid back beach volleyball!~』のインスタ画面。体育会系とは程遠いカジュアルな集合写真。

天輝(生真面目なだけの部活はもういい。これからは気楽なキャンパスライフを送ろう)
   
天輝、パーカーとマスク、サングラス姿の最波とすれ違う。
最波、歩き去る天輝の背中を凝視。
   
〇同・サークル棟
天輝(ここだな)
   
デコレーションされた『レバビバ!』プレートが提がったドアをノックする。

天輝「すみませーん。見学させてくださーい」
   
扉が開いて、顔を出す九號。

九號「はーい。こんにちは!」
天輝(おお、垢抜けたイケメン。SNSに偽りなし)
九號「どうぞ入って」
 
〇同・『レバビバ!』部室
殺人事件現場のような部室。
穴が空いている壁、割れた机とソファが部屋の隅っこに置かれて、代わりに簡易的なラグとちゃぶ台が置いてある。
その周りに座っている磯迅と夏尾。
立ち尽くす天輝。

九號「ちょっと散らかってるけど、適当にくつろいでね」
天輝「事件でもあったんですか?」
九號「やっぱり気になる? 実は刃傷沙汰があったんだ!」
天輝「明るく言うことですか」
九號「メンバーが穴兄弟と竿姉妹、穴姉妹と竿兄弟だらけになって、大変だったよ」
夏尾「見て見て、先輩が描いてくれた相関図!」
磯迅「このサークルは爛れきってたらしい」
   
夏尾が天輝に相関図を見せてくる。
ドロドロの相関図表示。九號だけ孤立して、あとはほぼ全員が全員と関係を持ち嫉妬と憎悪で渦巻いている。

天輝「わぁ、不純」
九號「荒れに荒れた結果、誰の兄弟姉妹でもない僕しか残らなかったんだ」
天輝「女子達も?」
九號「ひとり残らず」
天輝「失礼しました」

と、扉に向かう。

九號「(焦る)わぁ、待って待って!」  
   
扉を開けると、最波が立っている。

天輝「!?」
最波「(もじもじしている)」
九號「あ、入部希望者? 怖い人は全員失踪したから、安心して入って」
  
最波、おずおずと部屋に入る。

天輝「じゃあ、俺はこれで」
   
部屋から出ていこうとすると、最波に袖を引っ張られる。

天輝「?」
最波「あ、空澄天輝くん」
天輝「どっかで会った?」
最波「ぼ、僕、海原セナのファン」
天輝と磯迅「!」
夏尾「海原セナ?」
九號「高校ビーチバレーの帝王って言われてた人だよ」
磯迅「そのチャラ男が、海原とどう関係あんだよ」
最波「あ、空澄くんは、セナくんの中学時代の最初のパートナー」
磯迅「マジかよ」
天輝「(気まずい)」
九號「へー、凄いね!」
天輝「い、いやいや、凄いのはセナくんであって、俺じゃないですから。俺はあんなガチじゃないんで」
磯迅「ああ、海原とペア解消してやる気なくしたタイプか」
天輝「(ギクッとする)」
磯迅「あるあるだよな。海原と組んだヤツって、大体ペア解消後に現役引退すんだよ」
夏尾「なんでー?」
磯迅「(ニヤリ)さぁな。本人に訊いてみろよ」
天輝「(すかさず)あれー? どっかで見たことあると思ったら、磯迅くんだよね?」
磯迅「!」
天輝「高校3年間、必ず地区予選でセナくんに負けてた磯迅くんだよねぇ?」
磯迅「(ギクッとする)」
天輝「こんな所で何してんの? ビーチバレー部のある学校に行かなかったんだぁ?」
磯迅「(何も言えない)」
九號「まぁまぁまぁ。みんな思う所があって、戦線離脱したんだろうから、そこはノータッチだよ!」
   
「戦線離脱」という言葉に、天輝も磯迅も押し黙る。

九號「はい、空澄くん」
   
天輝にビーチバレーボールを突き出す。

九號「せっかくの新生活なんだから、イヤなムードのまま解散するのもイヤでしょ?」
天輝「いや、俺は別に」
   
最波、天輝の袖をグイグイ引っ張る。

最波「あ、空澄くんのバレー……見たい」
天輝「(気圧されて)……」
 
〇同・ビーチバレーコート
フェンスの中にある砂のコート。
夏尾、裸足でコートを駆け回る。

夏尾「すげー! 砂のコートだぁ!」
   
それを見る天輝たちも全員裸足。

天輝「マジもんのコートじゃないですか」
九號「数年前まで、男子ビーチバレー部があったんだって。それの名残だよ」

砂を踏みしめる磯迅。

磯迅「ちゃんと整備されてる」
九號「今まで飲み会とバーベキューばっかりだったけど、いつでもバレーができるように整備だけは欠かさなかったんだ」
   
九號、ニコニコとしている。

九號「さぁ、改めて自己紹介しようか。僕は飲目九號。2年だよ」
夏尾「1年深見夏尾! 中高インドア!」
磯迅「1年磯迅です。中学からビーチバレーやってます。レシーバーです」
最波「い、1年、海山道最波。バレー経験ありません。観る専門でした」
天輝「空澄天輝1年。入部する気はありませーん」
磯迅「ペア分けどうしますか?」
九號「僕は不参加で、空澄くん海山道くんペア。磯くん深見くんペアでいこっか」
天輝(経験と身長で考えたな)
九號「7点先取した方の勝ちにしよう。ビーチはブロックも1打に含まれるから気をつけてね」
夏尾「え、そうなの?」
磯迅「ブロック含めて3打以内に返せよ」
夏尾「はーい!」
   
その傍らで、天輝が最波にレシーブの打ち方を教えている。

天輝「手はこう……」
   
最波、レシーブの手の組み方を再現する。

天輝「そうそう、できてるよ。あとは実践あるのみだね」
最波「(ワクワク)」
夏尾「ねぇねぇ、俺からサーブしていい?」
天輝「はいはい、なんでもおっけ~」
夏尾「行くよー!」
  
ボール上げて。

夏尾「そーれ!(語尾と同時にサーブ)」
   
豪速球が最波と天輝の間に着弾。
唖然とする2人。

スコアT「天最・夏迅:0・1」
九號「さすが、身長あると打点が高いね!」
夏尾「へへ。もう1発いきまーす」
   
夏尾、サーブ。
天輝、辛うじてレシーブ。

天輝「重!」
   
最波、まごつきながらもトス。

天輝「ナイス!」
   
天輝がジャンプして攻撃態勢。

天輝「!」

夏尾の高身長ブロックによって、天輝のスパイクが弾き飛ばされる。

天輝「(着地)くっそ!」
スコアT「天最・夏迅:0・2」
夏尾「砂の上、飛びにくーい」   
磯迅「俺、インドアわかんねーけど、お前明らかにエース級じゃね?」
夏尾「えー、そうでもないよー」
天輝(それを言ったら、磯迅くんもだよ)
×   ×   ×
イメージ。
試合中、スパイクを決める磯迅。
天輝M「東海エリアに海原セナがいなければ、確実に全国行けたと思うけどね」
×   ×   ×
天輝(2人とも、なんでこんな所にいるんだか)
   
夏尾、サーブ。天輝、レシーブ。最波、トス。

天輝「ナイストス!」

天輝、カットショットで夏尾のブロックを避けて打つ。
磯迅、戻ってきたボールをレシーブ。

九號「上手い!」
夏尾「(トスしながら)アンダーむずい~!」
   
磯迅、ネット際でジャンプする姿勢。
天輝、ブロック。
磯迅ほとんど飛ばずにポーキーショット。ボール、天輝のブロック上を通過。
最波、拾えず砂の上をズサッと滑る。

最波「(シュンとする)」
天輝「ドンマイ!」
スコアT「天最・九迅:0・3」
九號「ナイスポーキー!」
夏尾「今のなにー?」
九號「ポーキ―ショットだね。ビーチでは、指の腹を使ったフェイントが反則なんだ。だから、ボールをコントロールしたい場合は、第2関節を折りたたんで打つんだよ」
夏尾「へー」
九號(でも、いきなりポーキ―?)
天輝(……これは分が悪い)
×   ×   ×
宙を舞うボール。
天輝、スパイク。夏尾のブロックで弾かれる。
×   ×   ×
最波、トスが上手くいかず明後日の方向にボールが飛んでいく。
九號「アウト!」
×   ×   ×
天輝(ブロッカーもレシーバーも取れない所!)
天輝、空いている場所にショット。
それを磯迅がダイブして拾う。
天輝(それも拾うのかよ、うめぇな!)
×   ×   ×
スコアT「天最・九迅:0・6」
天輝「参ったね。ストレート負けしそう」
最波「ごごごめん。僕が初心者だから」
天輝「いやいや、仕方がないよ! こっちこそ、ごめんねー。セナくんの初代パートナーなのに、カッコ悪いとこばっか見せちゃって」
最波「カッコ悪くない」
天輝「そーかー? ホントはガッカリしてない?」
最波「あ、あの……(ハッとして)!」

最波、フード、マスク、サングラスを取る。

最波「(以降、素顔)ぼ、僕の予想は間違ってなかった」
天輝「予想?」
最波「僕にとって、セナくんのベストパートナーは空澄くんなんだ!」
天輝「そんな大げさな。もっと上手い選手いっぱいいたでしょ」
最波「(首振る)色んな動画見たけど、セナくんは空澄くんと一緒の時がいちばん楽しそうだったよ!」
天輝「!」
最波「空澄くんが笑うと、セナくんも笑ってた。2人ともキラキラしてた!」

最波、目を輝かせて言う。

最波「だから、空澄くんと一緒にプレイするの、楽しいんだろうなって、ずっとずっと思ってた!」

天輝、最波の言葉を静かに受け止める。

天輝(……ああ、そうだよな)
 
〇浜辺(回想)
天輝M「認めよう。セナくんと組んでた中学時代が、俺のバレー人生でいちばん輝いて、そして楽しかった」
ビーチで楽しそうにハイタッチする天輝とセナ。共に中学生で天輝もスポーツマン然とした見た目。
×   ×   ×
天輝M「かけがえのないパートナーと共に切磋琢磨して強さを追求して、結果も出してた」
メダルを首から提げている天輝とセナ。
×   ×   ×
天輝M「けれど、それも長く続かなかった。同じ時間、同じ練習量だったのに、セナくんは俺よりも遥かに強くなった」
ランニングで距離ができる天輝とセナ。
×   ×   ×
天輝M「ビーチバレーはペア間に実力差があったらダメだ」
コート上、レシーブミスをする天輝。
天輝M「弱い方が狙われるのが定石だから」
×   ×   ×
天輝のもとを去るセナ。
×   ×   ×
天輝M「セナくんとペアを解消した後も、俺は強くなろうと足掻いた。足掻いて足掻いて……」
練習する天輝。
×   ×   ×
天輝M「身の程を知るのに、そう時間はかからなかった」
ネットの向こうで、勝利を喜んでいる選手たち――を見ている天輝。
×   ×   ×
天輝M「それから、俺は真面目に練習するのをやめた。試合に負けても、楽しくバレーができれば、それでいいと『思うようにした』」
今の垢抜けた見た目になる天輝。
そんな天輝を拒絶するパートナー選手。
天輝M「すると、なかなかパートナーが見つからなくなった。見つかっても長続きしない。当たり前だ」
×   ×   ×
様々なスポーツの勝敗場面。
天輝M「勝敗に一喜一憂するのがスポーツだ。それを捨てたヤツと一緒にプレイして何が楽しいってんだ」
 
〇中開大学・ビーチバレーコート
天輝「海山道くん」
最波「?」
天輝「……今、楽しい?」
最波「うん! 楽しい!」
天輝「この試合、勝ちたい?」
最波「うん! 勝ちたい!」
   
天輝、少し天を仰ぐ。

天輝(中学がピークってのも、あんまりだよな)
   
と、覚悟を決めたように最波を見る。

天輝「俺、海山道くんにビーチバレーをもっと好きになってもらいたい。だから、一緒に勝とうよ」
最波「うん!」
   
それを見た天輝、目を細める。

夏尾「いっくよー!」
天輝M「他人に幻滅されたくないと思ったのは、いつぶりだろう」
   
夏尾、サーブ。

天輝M「だったら、今だ」

天輝、レシーブ。

天輝「海山道くん!」

ボール、最波に向かう。
天輝、砂を蹴ってネット際まで走る。

天輝(今、本気を出さないでどうする!)

最波、トスを上げるかと思いきや、ゲンコツで敵コートにボールをボインと打つ。

天輝「えっ」
   
天輝、ジャンプしようとする姿勢のまま固まる。
ボール、フェンスの向こうに飛んでいく。

九號「アウトー」
夏尾「結構飛ぶねー」
九號「試合終了ー」
磯迅「勝った勝った」

天輝、ジャンプ寸前状態で固まったまま。

天輝「あれ?」
最波「ごご、ごめん、イケるかなって思って」
天輝「……コート内に落とせばいけたかもだね」
天輝(俺の決意のやり場は)
最波「あ、空澄くん、今度ディープショットの打ち方教えて」
天輝「……」
最波「次は勝とうね!」
   
最波、ワクワクが止まらない。

天輝「……そだね」
   
と、苦笑する。
 
〇同・フェンス横
フェンスの外を転がるビーチバレーボール。
そのボールを拾う茉凛の手。
茉凛、フェンスの向こうにビーチバレーのコートを確認。

茉凛「うわぁ綺麗なコート……」
   
イヤそうに言う。

おわり
(400字詰め原稿用紙22枚換算)


キャラクター詳細

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853字

¥ 100

読んでくださってありがとうございます。 これからも作品を公開できるよう頑張ります!