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見たくないもの

自分の容姿に自信がないのは分かったけれど、
では、何をしたらいいものか・・・考えてみました。

まずは、もっと自分に似合う洋服がないものかと、近所のデパートへ出かけることにしたのです。

もう少し正確にいうと、買い物に出たついでに、思い立って、
普段はあまり入らないような、ちょっとお高めのショップに入ってみたのでした。

そこで見つけたのは、パステルブルーのジャケットと、ネイビーのロングスカート。
おとなしめなデザインだけど、これなら、と、試着室に行ったものの、

鏡の前で、マスクを外してみて、自分の顔にビックリ!

内心、私のほうれい線は同世代よりはマシ、と自負していたのに、
その下にマリオネットラインがくっきりと刻まれていたのです・・・

ちなみに、ほうれい線は、鼻の斜め下に浮かぶラインのことで、笑顔になると、若い人にもできるものです。
年齢を推測するのに、ほうれい線の濃淡を目安にする人は多いですね。

では、マリオネットラインが何かと言えば・・・

想像してみてください。
操り人形や腹話術の人形の口元を。唇の両脇から、アゴへかけて伸びる、あの醜い溝のことです。

これは、若い人にはゼッタイ出てきません。
年齢の目安になるどころか、老人の烙印を押されたようなものです。

こんな顔では、せっかくのお高めな洋服も、なんの意味もないじゃないの!!

半ば怒りと、大きな落胆で、何も買わずに帰ってきました。

*~*~*~*~*~*

コロナ禍でステイホームしている間に、年を取ってしまった。
いや、もう、そういう年齢なのだ。体のライン以上に、顔や首や手の老化を止めることはできない。
それなら、どんなにオシャレしてみたところで、何もかもがムダではないか。

試着室の鏡で見た自分の顔に、私は心の底からショックを受けていました。


この間の友人の結婚パーティーのときは、そこまで深いシワはなかったはず。
でも、いつのまにか、自分ではまったく気づかないうちに、老いの扉をくぐっていたのです。

こうなってしまったら、着飾ることはあきらめて、ただ、人の目を汚さない程度に、シンプルであたりさわりのないデザインの服を着る方がいいのだろうな・・・そんなふうにも考え始めていました。

さらには、
できるだけ人の目につく場所には行きたくない、
着ていく服もないし、何より、顔と服がちぐはぐな、みっともない恰好はしたくない・・・

こんな考えが浮かぶのは、またしても、自分を受け入れられていなかったからだと、ずっと、後になって気づくことになるのでした。


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