小学生にローマ字タイピングを教える方法
〜タイピング指導6年間の方法論〜
わたしの教室では、プログラミングだけでなく、「ローマ字タイピング」の練習をとりいれています。
2022年12月に、文科省が公表したリサーチデータがあります。
これは小・中・高生のITリテラシーに関する調査だったのですが、その中に、「ローマ字入力」タイピングの調査が含まれていました。全国の小学5年生約3000人へのサンプリング調査で、1分間の文字入力数の平均が15.8文字という結果でした。教室に入室したばかりの生徒さんを見ていると、まあ現状はこんなものだと思います。実はこれでも文科省は「GIGA端末の普及で、以前より上達している」という評価のようです。
でも、わたしの教室ではこれは相当に低い数値です。少し練習を重ねると、すぐに1分あたり30〜50文字くらいは打てるようになります。教室でトップに早い子は、小学生のうちに、1分あたり200文字を超えたような子もいたりします。
ここでは、「こうすればローマ字タイピングは上達する」というわたしのやり方をご披露しようと思います。これは実際に教室に通っている生徒さんにこの6年間やってきた内容です。
1:前提として
まず、大前提としてローマ字タイピングというのは、反復練習によって身につくスキルです。ですから、これは「論理的思考力」とは関係ないスキルであり、「自転車に乗れるようになる」ということと同じようなものだと思います。ですから、一度ある一定程度までスキルがアップすれば、その後ブランクがあっても、あまりそのスキルは低下しないものだと思います。一度自転車に乗れるようになったら、何年ブランクがあっても自転車に乗れなくなるようなことがないというのと同じなんですね。ただ、こういう反復練習によって身につくスキルのため、その上達速度には必ず個人差があります。すぐに上達する子と、なかなか難儀する子がいます。でも、ゆっくりでも着実に伸びていくのは間違いないです。ですから、大事なのは「対自分比」で前進していることなのです。(教室だと、ときどきこういうゆっくり伸びる子をあからさまにバカにする子がいるんですよね。これが一番やっちゃいけないことなので、そういう態度の子にだけは厳しく指導してます)
つまり、「継続して練習を続ける」ということにつきます。わたしの教室では月2回しか通ってこない生徒さんがかなりいます。それでも練習を継続することで、入力文字数(タイピング練習ソフトを使っている場合にはその点数)が徐々に上がっていきます。ただ、このスコア上昇というのは、直線的に上がっていくものではありません。
練習を始めた当初は、だいたいどんどんとスコアが上がっていくものです。ここですごく良い気持ちになって、どんどん練習に熱が入るのが普通です。でも、ほぼ間違いなく壁に当たるのですね。要するに、あるところまで行くと、それを超えるスコアが出なくなってしまうわけです。
タイピング練習で一番もったいないのは、「ここであきらめる」ことなのですね。とにかく真剣に頑張ってるのに結果が出ないと、だいたいの子がへこたれます。でも、これをなんとか継続させる必要があるのです。
わたしはよく教室で、
「今までの最高点が続いてるんだからいいじゃない。過去最高の自分が続いてるんだぜ」
とか言って励ましてます。また、同時に、
「点数は、ずっと上がり続けるなんてことはないんだよ。過去最高が続いているうちに、あるとき急にポンと点数が上がるタイミングが訪れる。それを超えると、またその上がった点数がしばらく続くんだ。つまり、点数はね、ふつう階段みたいに上がってくもんなんだ」
とか言って、ときには白板に階段状のグラフ描いたりしながら、なんとかなだめたり、すかしたりしながら練習を継続させるということなのです。
上記の文科省のデータによると、小学校5年生で1分間に60文字打てる子は全体の0.2%しかいないということでしたので、そのとき、
「60文字以上打てる君はね、ローマ字タイピングのワールドカップがあったら、もう日本代表レベルだぞ!」
とか適当なことを言ったら、めちゃくちゃ盛り上がって「オレはもうタイピング以外やらん!」とか言い出した子がいて、焦ったりもしましたが(笑)
ご家庭で、ご子息にタイピングを教えるようなときも、恐らく一番大事なのは、この「励まして練習を継続させる」姿勢ではないかと思います。
では、次に具体的な練習のやりかたをご紹介したいと思います。
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