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翻訳について思うこと


2012年に翻訳会社に勤め出してはや10年目。

さまざまな案件、クライアント、パートナー(つまり翻訳者さんや校正者さんのこと)に巡り合ってきました。

思うところもいろいろあり、ちょっとまとめてみたいと思います。

そもそも私の仕事は

私は翻訳会社で「コーディネーター」という仕事をしています。

ひとことで言うと、翻訳して欲しい人と翻訳をしたい人を繋ぐ仕事です。

もうちょっと詳しく言うと、翻訳をしたい文書を持っている会社(が多い)から依頼を受けて、それを登録しているパートナー(翻訳者、校正者、ポスとエディター)に割り振るということです。

大体メールで問い合わせをもらい、お見積して、問題なければ作業スタート。

仕様書なるものを作って、原文などとともにパートナーに渡し、クライアントへ渡す前には最終チェックなんかもしたりします。最終チェックで誤訳とか見つけると慌てます(笑)。

業界そのものについて

まず断っておくと、私が携わっているのはいわゆる技術翻訳、というものになるので、出版翻訳(つまり多くの方がイメージする、すでにある言語で出ている本を他の言語に翻訳する)のとは違うものです。

技術翻訳、ってかっこよく聞こえますが、本以外でも翻訳が必要なものってたくさんあります。プレゼンの資料、契約書、メールの文章、マニュアル・・・などなど。それらの翻訳、と思っていただければ概ね間違いではないです。多分。

私が入社当時から、すでに翻訳単価は下がる傾向に来ていて、それがこの10年弱でさらに進んでいる、という感じです。

それには要因がいくつかあって、その大きい一つが機械翻訳の普及ですね。みなさんおなじみgoogle翻訳もありますが、T4OO、DeepLなどといった機械翻訳サービスもいろいろ出てきています。

なので一から翻訳する作業は少し減ってきていて、機械翻訳にかけたものを直していく「ポストエディット」という作業をする人が必要になってきています。

とはいえ、文書の種類、内容によってはまだまだ機械翻訳だといまいちなので、そこは案件ごとに見極めて、人でいくか機械でいくか決めています。

翻訳者さん、ポストエディターさん、校正者さんのなり手が減っている感じはしないです。むしろこれからポストエディターはもっと必要になるんじゃないかな。

この辺は会社が何を専門にしているかでも変わってくると思いますが、私の所属する会社は広く浅く対応するタイプなので、上述のような形です。

10年目で思うこと

そもそもなぜ翻訳会社に入ったのか、というと、大学で翻訳を学んで、翻訳面白いと思ったからです。ちょびっとイギリスに留学に行った時も、翻訳の授業をとったり。

そう考えると元々は「自分が翻訳をしたい」という気持ちが強かった気がします。

ただ翻訳者としてフリーでやっていくって相当タフネスだろうなと今は感じています。(私の印象ですが)先に書いた通り、機械翻訳の台頭もあるので、一つの案件の単価としては正直下がってきているし。

でもそれでもやっていっているパートナーさんたちは本当にすごいなと思います。(何より、スピードもあるし、訳もやっぱりお上手な方が多いです。)

そんな中で自分は果たして「翻訳者」になれるのか?という気持ちも出てきているのが正直なところ。いや、楽しいんです翻訳。実際、ご縁があって翻訳させていただいた本もあります。ただ現状はそれ一本でやっていくには力が伴ってないなーと感じています。

一方コーディネーターも楽しいです。いや、もちろん無理難題を吹っかけられたり、理不尽な状況に陥ることもあるんですけれども。

ちゃんとクライアントの要望に応じた訳文を届けられたときは、やっぱり嬉しい。最近はコロナでオンライン対面がほとんどですが、クライアントにお礼を言われるとやっぱり嬉しい。

あと翻訳者と校正者の相性とかもあって、それを組み立てていくのもなかなか面白いです。この人はかっちり訳してくれるんだけど、今回の案件はもうちょっと柔らかめの訳文がいいから、そういう文章が得意なこの人を充てよう、とか。

一方10年近くやっていると、マネジメントの仕事も増えてきて、案件そのものを回すことが減っている状況です。

用語集の管理の仕方とか、より効率的な案件の捌き方とか、そういうものを考えることも増えてきて、それはそれで、部下の人たちの成長やら改善を見るのも嬉しい。

これからどうする?

でもこう書いてきた中で、私が一番にやりたいのって何だろう…と。

年齢的にはマネジメントに移る感じだけど、案件を回す楽しさ自体も捨て難い。そして翻訳そのものをやりたい気持ちも、やっぱり心のどこかで燻っている。

難しいのは、息子がまだ小さいので、時短勤務であるということ。フルタイムするには体力的にも厳しいし、かといって翻訳自体をやりたい!を優先してフリーに飛び込むのもリスキー。家族も大事にしたいので、仕事だけ考えるわけにもいかず、悩ましい。

ただ語学力的にそもそも向上できてないので(コーディネーターだと多少チェックはするものの、基本的にはクライアントやパートナーとのやりとりが主体)、まずはそこの勉強をするところかな…。

翻訳というジャンルに携われていることはとても嬉しいし、翻訳がなくなることはないと思うので、日々アンテナを張りつつ、自分の居たくて居られる場所を見つけていきたいと思います。

おわりに

最後まで読んでいただきありがとうございます。翻訳に興味のある方の少しでも参考になったら嬉しいです。

※使っている写真は本文とは関係ありませんが、素敵な空だったので載せてみました。




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