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フィリピンで足を折って優しさに泣いた話


タイトルのままの話。

2019年、私が22歳になる少し手前の2月のことだった。
私はフィリピンのウォール街と呼ばれる「マカティ」という街で柄にも合わない不動産のインターンシップをしていた。

物事を深く考える事がとことん苦手なわたし。
「ホホホ井さんは考えが浅いよね。浅はかだよね。」「なんのための頭なの?」といったフィードバックを受ける日々。
その日傷付いた言葉を一つ一つ思い出しては傷に塩を丁寧に塗り込むのがいつのまにか日課になっていた。

その日ももれなくオフィスでコテンパンにやられた帰りだった。
投げやりな気持ちだった私はいつもは節約のためジープ(フィリピンの乗り合いバス)に乗って帰宅するのだが、その日は自分を労わる気持ちでタクシーを呼んで帰ることに。

アプリで現在地をセットし、フィリピンのマクドナルドことジョリビーでアイスコーヒーを飲みながらタクシー待っていると、ドライバーから1通のメッセージがあった。

「今日道混んでて指定の場所まで行けそうにない。だから3分以内にここまで来て。」

な、なにー!?指定の場所は到底3分じゃ着きそうにない距離。
たが、ドライバーを待たせすぎると自動キャンセル扱いとなってしまう+マカティは大渋滞の街のため次いつタクシーをつかまえられるかも分からないので、走って行くしか無かったのであった。

「クソー、何のためのタクシーやねん…泣」
その日既に気落ちしていた私にはこんな事でさえ泣き言になった。
ようやく待ち合わせのタクシーを見つけ歩道から車道に降りようとしたその時、

スボーーン!ビターーン!!

道路のデコボコに気づかず穴にハマってすっ転んでしまったのだった。

「泣きっ面にハチ…ウケる…いやおもろないし…」


そう思いつつすぐに立ちあがろうとしたが足が痛すぎて立ち上がれない。
タクシーも行っちゃう…立てない…痛い…何も良い事がない…

そう思うと何故か涙が込み上がって止まらなくなり、情けなさと恥ずかしさも相まって次第にしゃくりあげるほどの号泣に。
沢山の人が行き交う街のど真ん中で、「コケただけで号泣しているヤバい成人女性」が爆誕してしまったのであった。

しかしフィリピンの人はみな親切で、
号泣している私をみて次から次へと人が集まり、最終的には10人程のお姉さんお兄さん、おじさんおばさんが私に声をかけてくれたのだ。
「大丈夫?どうしたの?」
「立てるか?」「タクシー呼ぶ?」

ちょっとした騒ぎを起こしてしまった申し訳なさで更に涙が止まらず泣きながら「実はあのタクシー呼んでたんです…」とタクシーを指差し1人のお兄さんに伝えると
「まっとけ!呼んで来たる!!」と言い
走ってタクシーの運転手まで話をつけに行ってくれたのであった。


無事タクシーに乗り込めてからも私の涙は引っ込まず。
ただ、涙の理由は「みんな優しすぎる……」という感動の涙に変わっていたのであった。

(タクシーの運転手のドライバーからしてもびっくりである。
突然ボロボロ泣いた成人女性が10名弱の人々に支えられて乗り込んで来たのだから…。)

忘れかけていた、人の優しさ。
キツいフィードバックで完全に自分の存在価値が分からなくなっていたけどこんな私にも手を貸してくれる人(物理的に)がいたんだ…

そんなこんなで寮にたどり着き、ルームメイトに助けられながらもその日を終える事が出来たのであった。

翌日になっても痛みが治まるどころか更に激しくなり、足も土管の様にパンパンに腫れ上がってしまっていた。
これがその時の足。

分かると思うけど左の足です


外傷は負ったものの私の心は何故か晴れやかだった。
落ち込んで忘れかけていた人の優しさに触れ温かい気持ちを思い出せたからだ。

今でも当時のことを思い出してはじんわり温かい気持ちになる。


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