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雪の日

「おわっ、めっちゃ積もってる」

朝、カーテンを開けて思わずつぶやいてしまった。

新年早々、日本列島は強烈な寒波に見舞われ、日本海側を中心に大雪となった。ここ福岡でも、雪がしんしんと降り続き、めったに積もらない雪がうっすらと積もった。

Instagramのストーリーは「雪だ!!!」という投稿でうまり、友達の何人かは、公園で子供たちと一緒になって雪だるまを作って遊んでいる様子をアップしていた。雪国育ちの僕は、いい年して雪なんかではしゃいで、と思って、そっと画面を閉じた。

今日は朝からバイトだったので、10時くらいに家を出る予定だった。念のために電車が止まっていないか確認する。よかった、いつも通り動いているみたいだ。いくら雪が降らないって言っても、こんなにうっすらだったらさすがに電車は止まらないか、そう思った時、店長からLINEが入る。

「雪が積もりましたが、通常通り営業します。公共交通機関が乱れるかもしれないので、いつもより早めに出勤してもらえると助かります。」

まじか。電車とまるかもしれないんだ。それは早めに家を出なきゃ。

さらにその数分後、今度は大学からメールが届く。

「本日の対面授業は、雪により交通機関の乱れがあることや、積雪により登下校が危険と判断されたため、休講とします。なお、オンライン授業は予定通り行います。」

ええ、こんな雪で休講になるんだ。高校時代はこれくらいの雪なら自転車で通っていたし、自転車でも行けない時は普段の一時間前に家を出て、歩いて学校に行ってたけど。

そんなことを思いながら、家を出る。ちょっと雪が降るだけでこんな大騒ぎになるんだ。そんなことを思っていた。

玄関のドアを開けると、外は真っ白だった。福岡に来てもうすぐ2年、今まで雪が積もることはなかったから、僕にとっても久しぶりに見る銀世界だった。普通にテンションが上がって、駅に向かって歩きながらたくさん写真を撮った。わざと誰も踏んでいないところを通って自分の足跡を雪につけて歩いた。

あれ、さっきまで雪を見てはしゃいでる人をちょっと上から見てたのに、しっかり自分もテンション上がってるじゃん。こんなちょっとの雪ではしゃいじゃって、とか思ってたのに。

地元にいるとき、雪は当たり前にそこにあった。毎年冬になれば雪が降り、雪かきをして、雪の中を学校へ通った。でも、ここでは雪が降ることは当たり前ではない。

みんな冬になってもスタッドレスタイヤではないらしい。ちょっとでも雪が積もれば学校はお休み。バスや電車もダイヤが乱れる。

今まで当たり前だと思っていたことが、ここでは当たり前ではないし、だんだんと僕も、こっちのあたり前に慣れてきたのかもしれない。だってちょっとの雪でこんなに嬉しい気持ちになったから。嬉しい気もするけど、なんだか雪が自分とは遠い存在になったようで少し寂しい。

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