見出し画像

恩人。

いつもその人の事を考えている訳じゃないのだけど、ふとした拍子に思い出して。
そのまましばらく、自分の中に留まる人が何人か居る。

男性の人で、とても紳士的な人だった。

物静かで穏やかな感じなのだけど、不思議なノリの良さもあって。
成人して間も無い頃、当時の自分に対して初めて『一個人』として接してくれた人だと思う。

一人称は『私』or稀に『俺』

とても迷惑を掛けた。とてもお世話になった。

当時、今よりも遥かにとっても情緒不安定。
情緒不安定になる場に身を置いた事、そして更にそこに追い討ちを掛けるタイプの方とお付き合いもどき(?)をしてしまった事と。

若気の至りとはいえ申し訳無いとしか言えない。
あの頃が本当に人生の闇堕ちseason.1 だったと思う。

体重は人生の中の最低ラインまで落ちたし、円形脱毛症とアルコール依存気味にも。

朝方に電話をした事だって数え切れなかった。
申し訳無いと思ってはいたけど、他に何も無かった。
心底メンタルがへし折れた時に頼れる人も、耐えられるだけの精神力も。

「良いよ、そろそろ起きる時間だから。ボケた頭で仕事に行くより良い。」
…いつも、そんな風に言ってくれて。

どうしようも無く泣くばっかりだった。
…絶対に寝起きから聞きたい事じゃない、本当に申し訳無い。
今から戻れるなら、とりあえずあの人に謝って当時の自分を一発殴ってから今の自分の電話番号を教えたい。

悔しいのか悲しいのか分からない泣き方だったな、と思う。
毎回自分からそんな時間に電話しておいて、しばらくは「ごめんなさい、何でもないです。大丈夫です。」って言ってたけど、説得力は無いし何が大丈夫なのか、大丈夫ならその迷惑行為を止めろとか。
…今の自分は言いたい事が山ほどある。

その人はその人で、あまり自分の話はしなかったけれど…時々ぽつりと話してくれる事から、家庭環境が大変だった事は分かった。

実年齢も歳上だったけれど、精神的にも大人で。
でも、一見物腰は柔らかいけど好き嫌いはハッキリしていたなと思う。

一度、ハッキリ言われた事がある。

「私はあなたの保護者でもなくて友達なんだけどね、あの『同居人』は嫌いだよ。…あなたを泣かせてばかりの野郎がね、恋人ヅラしてるのが虫唾が走る。」

人生で初めて『虫唾が走る』を実用する瞬間に立ち会った、とか思ったけどそこじゃない。

「あ、別れなさいとか説教の類じゃなくて。私は嫌いなのと…携帯にはロックでも掛けた方が良いよ、っていうオススメかな。」

すぐには意味は分からなかったけど、少し経ってから分かったのは。
自分の携帯をチェックされていた事と、そこから電話を掛けたとの事と。
…どれだけ迷惑を掛けるんだ、本当に。

「私は私の友人だったり、特別な人を泣かせたりするヤツは嫌いだね。どんな理由があっても嫌いだし個人的に許すつもりもない。」

情緒不安定大炸裂していたので。
自分が朝に電話した事だったり、体重とか円形脱毛の事も不愉快だったよな(少なくとも電話は迷惑極まりないとは思う)と思ってしまって。

しばらく(といっても一週間くらい)電話は控えて、眠れないのも泣くのもアルコールやらで誤魔化して、メールをくれても何と返して良いのか分からなくて…なんてしていたら。

わざわざ、自分の勤め先に。
…来ただけで料金が発生するような場所だったのに。

怒られたのと、謝られたのと。
大袈裟ではなく生きているかの心配をされていたらしい。
そして、感情的になってしまって伝え方を間違えたと謝られてしまって。

謝る事があるのは自分の方で、それはもう冗談抜きに顔面が擦り切れる程土下座しても足りないと今でも思う。

「あの同居人が嫌いなのは変わらないけど、私があなたを好きなのも変わらない。友人としても、人としても」

好かれる要素があったのかは今でも謎だけど。
歳の離れた妹が居たらこんな感じなのかもねぇ、って困ったみたいな顔で笑ってくれて。

本当に、どれだけ感謝しても足りない。
有り難いなんてレベルではないと思う、けど…表現が出来ない。
何のお礼も出来てないまま。


会えなかろうと自分の中で大切な人であると同時に、恩人である事に変わりも無くて。

んー…今の、打たれ強く(?)なった自分を見たら何て言うかな、なんて思ったり。

家庭環境は劣悪、親に至ってはもう片方も速やかに召されて欲しいし、兄弟でさえ法的効力が確実な絶縁制度が無い事が悔やまれるような感じなのだけれど。

出会う人にはとても恵まれているというのは個人的な数少ない自慢ポイント。
身内関係の煩わしさなんて余裕で帳消しになるかな、と思う。

何となく感傷的になった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?