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ウェブ系フリーランスが契約書テンプレートを利用するときの留意点(3):瑕疵担保責任

瑕疵担保責任。
正しく読むことも難しいような言葉ですが、ウェブ制作をはじめとする請負契約や売買契約ではよく見る定番のもので、「かしたんぽせきにん」と読みます。

簡単に言ってしまえば、納品後の一定期間において、納品物に何らかの欠陥があることが発見された場合に、その納品物の製造を請け負った側がその欠陥を直さなければならない、という規定です。

ウェブサイト制作で言えば、公開後に何らかの不具合や誤字脱字などが発見された場合は、受託者が無償で直さなければならないというものですが、企業ならまだしも、フリーランス個人にはなかなかダメージが大きいものではないでしょうか。
(しかも、仕事が詰まっていて忙しいときに限ってクライアントから補修要求が来るという・・・。)

テンプレートにはほぼ必ず存在する

この瑕疵担保責任は、請負契約定番の規定であるため、契約書テンプレートにはだいたい次のような内容の条文が存在すると思います。

第○条(瑕疵担保)
本件ウェブサイトの検収完了日から6ヵ月以内に瑕疵が発見された場合、乙(受託者)は無償で補修・追完を行うものとする。

この条文を見て、多くのフリーランスは何も疑問を持たずにこのまま契約締結するか、あるいは「無償対応期間が6ヶ月では長いから3ヶ月くらいに変更しておこうかな〜」という感じで期間を変更すると思います。

あるいは、「そもそも無償対応なんてやりたくないから、この条文を削除してしまおう」と考える方もいるかもしれません。

しかし、瑕疵担保に関する条文を削除しても、責任が無くなるわけではありません。むしろ、対応を要する期間が先程の例文よりも伸びて、納品から1年間となります。

これは、そもそも瑕疵担保期間とは法律(民法)で定められているもので、その期間は法律では「仕事の目的物を引き渡してから1年」(民法637条1項)とされているためです。

そもそも”瑕疵”とは

また、そもそも「瑕疵」とは何か?という問題もあります。

言葉の意味としては「きず。欠点。また、過失」(コトバンクより)とされていますが、”欠点”ではかなり漠然としていて、範囲をかなり広く解釈することもできます。

これでは、注文者としては様々なことを”欠点”として指摘でき(※)、請負人に対してそれを直すように請求できます(民法634条1項)し、それと同時に損害賠償の請求もできます(民法634条2項)。

※ただし、瑕疵が注文者の指示や材料によって生じた場合は、注文者は修補請求や損害賠償請求はできません(民法636条)。でも、その指示や材料が不適切であることを請負人が知っていたのに告げなかったときは、注文者は請求ができるようになります(民法636条但し書き)ので要注意です。

しかし、請負人にとっては、あれもこれも欠点扱いされて修補を請求されても困る場合がありますよね。
瑕疵の修補といいながら、実質的に追加作業の要求であるような指示が来ることもしばしば。

そのため、瑕疵の範囲をある程度絞り込むことを検討しても良いかと思います。

瑕疵の絞り込み

絞り込むといっても、請け負った作業内容が小規模サイトの制作なのかCMSやECシステムなどを導入するのかなどによって大きく変わりますので一概には言えませんが、

例えば、企業紹介のような中小企業のウェブサイトであれば、用語の定義の中で

「瑕疵」とは、「標準ブラウザ」利用時の著しい表示の崩れ、表示すべき内容の欠落または事実との相違、誤字・脱字等の欠陥、サーバーまたは標準ブラウザにおいて稼働させるプログラム等の動作不良、および通常有すべき動作の不良または不完全動作その他の請負人の故意または過失により生じた、本件ウェブサイトにおける表示上または動作上の欠陥を意味する。

のように限定することは有効だと考えられます。
(※「標準ブラウザ」は、名称やバージョン、スマホを含めるか否かなど別途定義が必要です。)

CMSなどのシステムを導入するような場合は、しっかりと仕様書を作成した上で、その仕様書通りの動作をしないことを瑕疵として定義しても良いかもしれません。

また、今回の記事では納品後の瑕疵について取り上げていますが、納品前の検査においても、瑕疵の定義は重要です。
これが曖昧だと、検査合格基準(=瑕疵の無い状態)をクリアしたかどうかも曖昧となるため、いつまで経っても検査に合格できない、というデスマーチに突入するリスクも上がります。

何をもって瑕疵とするのかは、案件によって変わりますので、安易にテンプレートを利用せず、しっかりと検討しておきたいですね。

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