は？？？　天才か？？？

　小説のプロットがちっとも進まずアカンわこれこのままじゃ完結できないでしゅうぅぅぅぅぅぅッッ！！！！（３Ｄアクションゲーム！！）というわけなのでなのでなので？　適当な？　繰り言を？　おほざきあそばされて？　お茶を濁そうと？　ははぁ、さてはそういうカラクリですな？　などとカイゼル髭をしごきながらしたり顔で嘲笑してくるであろうあなたがた読者を私は憎みます。おしりペンペンします。そしておもむろに全身の七孔へことごとく指突っ込んで血鬼術・刻糸輪転ブチ込みます。

　どうでもいい。『かレー』の話だよ。聞いてんのかお前。

　本作はＳＦである。ＳＦ？　いや、うーん、うん、まぁ、ＳＦ。ＳＦである。うん……うん？
　果たして本作をＳＦという括りで語ってしまっていいのかという疑念が常に付きまとう。およそ俺の知るいかなるＳＦとも異なる理屈のもとで書かれた作品だからだ。そこにはピッコロを「ナメック星人です」と紹介するような違和感が付きまとう。間違いではないのだが、だいぶ本質を外している。
　とりあえず難解な理屈とか専門用語とかは出てこない。文章は極めて平易で可読性は高く、読解に気力がいるような展開もない。あるのはカレーと、調味料だけである。いや、しかし、なんというか、この作品は俺が今まで摂取して学んできたエンタメの理屈が何一つ根本から通用しないメキスコの荒野であり、人が死んだりしないし派手なアクションもないしホットなベイブも出てこないし緻密などんでん返しもないのだが、ともかく俺に圧倒的なインパクトを残していった。オリジナリティなどというと、もはや昨今ではオリジナリティ（笑）とかいう文脈でいじられるノリも古臭くなってきたが、本作には途轍もない唯一無二さがある。類似する作品をちょっと挙げることができない。
　ＳＦと呼ぶにはふわふわしているが、寓話や童話ほどふにゃふにゃしてはいない。本作の世界の根底には確かな論理とR・E・A・Lが息づいている。描かれる事物に奇妙な説得力と存在感があり、手を伸ばせば触れそうだ。
　初めて読んだのはそれなりに前のことなのだが、その時は「は？？？　天才か？？？」以外の情緒が出てこず、誰かにお見せできるような形でアウトプットが出来そうになかった（そうゆう作品はたまにある。よくないと思いつつ、やっぱりアウトプットができないのであった）。だが、今はどうにか言葉にできそうである。
　これはお前がかつて読んだことはなく、今後も読むことはないであろう小説だ。というか、俺は本作がいかなる思考のすえに生成されたものなのか、そのフォーマットが根本から異なるため、もはや想像することすらできない。導入部のあらすじはこうだ。宇宙を旅する風来坊が、とある衛星軍基地へと向かう途上、艦から放り出されて宙港に取り残されようとしている少年に出会う。軍事機密だかなんだかで部外者の来訪が禁じられているためなのだが、少年にはどうしても衛星軍基地に行かねばならない理由があり――などと語ったが、ここまでの展開は本筋と一切なにひとつ関係がない。びっくりするぐらいない。一筋縄ではいかない小説である。だが幾度か読み返すうちに、この冒頭もまた本作のエモを最大限引き出すのに必要なシークエンスであることがわかってきた。
　およそエンタメというものは「こっちを見ている」ものだ。受け手を泣かしたいとか燃えたたせたいとかホットなベイブにフィヒらせたいとか、そうゆう打算があり、受け手の情緒を積極的にくすぐろうとしてくる。そしてそれは作為臭さとなって、舌触りのどこかに雑味を残す。
　無論、それはエンタメに必要なものだ。雑味など感じるほうがおかしいのである。俺自身もそういう方向性のエンタメを煮詰めて昇華しようと日々足掻いている。
　だが――本作にそのような境地よりだいぶ自由である。すくなくとも、自由であるように見える。「泣き」とか「燃え」とか「エロ」とか「爆発」とか「死」とか「関係性」とかそうゆう文化的な粉飾を廃した後に残る、純粋な好奇心だけが滋味となって魂を潤す。こっちを見てないのだ。ただ自由に、何を訴えかけてくるでもなく、奔放に振る舞い、あるがままに魅力的なのである。読者にすり寄ってくるのではなく、読者が目をすがめ、前のめりに近づかざるを得なくさせる。そうゆう原初的な力を持つ作品だ。きっとお前は本作のメインとなる存在が登場するや、画面をスクロールする手が止まらなくなることだろう。それは物語のイデアであり、ある種の信仰であり、救いなのだ。
　なんであるかその顔。その顔。うわぁこの人なんか新興宗教的なアレをアレしちゃった系だよ的なその表情。馬鹿野郎。このブルシットが。その怠惰を根源にした消極的唯物史観を俺は憎む。イーッてする。
　そして俺は悟る。インテリぶりたいならとりあえずマルクスをDisればいいということを。世の中チョロすぎだろマジｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ
　いや知らんすわ。マルクスとか意味分からんすわ。アニメ見ますわ。
　『かレー』を読め。