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「蚊」と「かゆみ」に関するきわめてちのうしすうのたかいこうさつ

 ここ数年さっぱり蚊に刺されなくなった。

 いつぞやのヘル猛暑の時には蚊たちもへばってんのかなと思っていたが、そこまで極端な暑さでもない今年においてすら一回たりとも刺されないのである。滅んだのかな? まぁ正直そうであったとしても「滅べカスが」以外の感情など出てこないんだけど。ていうかね、俺は蚊が嫌いなんだよ。血を吸うからではない。吸われたらかゆくなるからでもない。「かゆくしたら人間側が嫌がって蚊を躍起になって殺そうとする」という明らかな欠陥を放置したままのうのうと命を繋ごうとしているその愚かしい在りようが嫌いなのである。あほなのかな? なんでかゆくすんの? その行いが自分たちに不利益しかもたらしてないことを一億七千万年もかけてまだ理解できないの? マジ進化とか大したことねーなオイ。こういうことを言うと、必ず「あれは血を吸う際に人間に痛みを感じさせなくするための~」とかなんとかピンとのずれたことをのたまう輩が出没するが、違うだろ。そうじゃないだろ。論点ずらしてんじゃねえと。痛みとか関係ないんだよ。俺が聞きたいのは「なんでかゆくするの」ってことだよそれに対する回答として「痛みをなくすため」とか明らかにずれてるだろ。痛みもかゆみもなくせっつってんだよ。わかれよ。察しろよそれくらい。

 だがこの問題には人間側の欠陥についても言及しないわけにはいかないだろう。

 人ップさぁ……なんなんだいその「かゆみ」とかいう意味不明でクソの役にも立たない感覚は。何なの? なんでそんなものを六百万年も後生大事に抱え続けてるの? いつになったらそれが何の役にも立たないブルシットだってことに気付けるの? そりゃあね、「痛い」とか「苦しい」とか「熱い」とか「冷たい」とかはわかるよ? それは自分の近くに早急に対処すべき危険があることを示す感覚であり、生存に大きく寄与するものであることは間違いない。ほんで? なに? 「かゆい」? それは何? 何を伝えようとしているの? 「皮膚の表面にちょっとした異常があるぞ! ほっとけば治るけどかきむしったりしたらさらに悪化しそうだ! 大変だ! すぐ脳に伝えないと! せや! かきむしりたくて仕方なくしたろ!

 真正のあほなのかな?

 「かゆみがあるからこそ人は入浴という習慣を編み出し、体が清潔に保たれ、感染症のリスクなどを予防できるようになったのだ」という意見には賛同しかねる。入浴の習慣は、たかだか紀元前ウン千年とかいう最近過ぎて臍で茶が湧くレベルの時期に生み出された代物であり、人類はその歴史の九割以上を風呂なんか入らずに過ごしてきたはずである。かゆみがなかったからといって淘汰圧が働くほどの不利益が発生する理由にはならない。

 こんな体たらくで万物の霊長とか名乗ってんだからマジでイタいなどというレベルではない。そりゃ蚊パイセンにも夜中に耳元でプゥーンwwwプゥーンwwwwと嘲笑われますよ。お前舐められてんだよ。わかれよ。

 だがこれとて一個人の狭い視点から見た勝手な意見に過ぎない。最古の蚊の化石は一億七千万年前のもので、人類発祥は六百万年前だ。つまり蚊はその生涯の大半を人類など知らない状況で生きてきたのだ。でまー、人類以前の蚊も血を吸うけど、吸う相手は恐竜だかネズミだか鳥だか、そのへんのあれですよ。「蚊に刺されるとかゆくなる」という因果関係を理解しない連中ですよ。だから特に邪険にはされなかった。ところがつい最近発祥した毛なし猿どもがなぜか異常に蚊を毛嫌いしても、蚊パイセンには理由がまったくわからない。進化の速度は百万年単位でなければ認識すら不可能であり、たかが六百万年などという超最近起こった変化にはまったく対応できないのである。よって蚊パイセンに悪意はないの!! 許してあげて!! 知るか滅べ。

 えー、でまー、仮に痛くもかゆくもしない蚊が誕生したとしよう。その結果何が起こるか。まぁ、大量発生しますわな、吸い放題の増え放題ですからな。すると何が起こるか。蚊を媒介とする疫病の超絶パンデミックが発生し、人類は大量に死に、文明は崩壊し、時代は乱世に突入し、ジード軍団みたいなアホが暴虐を振るい、ユリアはさらわれ、俺たちは世紀末救世主としての第一歩を歩き始めることになってしまう。今日より明日より君が欲しい。

 かゆくするという特性は、結果的に自らの個体数を適切に調整し、人類から深刻な敵意を向けられなくするという極めてクレバーな生存戦略として機能しているのではあるまいか。小賢しいんだよ滅べ。

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