学校での生理の悩み
いまだ収束の兆しをみせないコロナ禍ですが、学校は分散登校や時差通学、短縮授業などにより段階的に再開をし、現在ではほとんどの学校で通常授業が始まっています。
通常授業の再開によって友だちに会える楽しみや、教室の中で一緒に授業を受ける喜びを感じている子どもたちが多い反面、なかには学校生活で理解されづらい生理の不安に直面する子どももいます。
一般社団法人日本若者協議会が行った調査によると、学校(小・中・高校、専門学校、大学など)に在籍していて、過去1年に生理を経験した300人のうち、83%もの人が「生理によって学校や授業を休みたいと思ったことがある」と回答した一方で、52%が「生理によって学校・授業を休んだことがない」、42%が「部活・体育などの運動を休んだことがない」と回答*。
*一般社団法人日本若者協議会、#みんなの生理 2021年10月4日(月)〜24日(日) 調べ
休みたいのに休めなかった人の半数以上が「生理を理由に休んでいいと思わなかった」と考えており、辛くても我慢してしまうといった現状があるようです。また、成績や内申点に悪影響が出てしまうのではないかという不安の声もありました。
また、生理中に学校を休めなかったことで困ったことは?という質問には、「授業などに集中できなかった」という回答が81.2%という結果に。
具体的な声としては
・スカートを履かなければならないので体が冷えて生理痛が悪化する
・授業中、冷たい椅子にずっと座っているのが1番辛い
・生理痛でボーッとするので、授業中の記憶はあまりない
・テストに集中できず成績が落ちた
など、生理によって、授業に集中できずに勉学に支障をきたす子どもがいることがわかります。
受験シーズンの生理事情
普段の学校生活での生理の悩みを挙げましたが、そろそろ本格化する受験シーズンでは、その生理の悩みと受験の悩みがかけ合わさり、子どもたちにとってさらに大きな不安要素に。
初潮を迎える年齢は10〜14歳と言われており、中学受験と初潮が重なってしまうこともあります。慣れない生理に、慣れない受験。不安もストレスも、より大きくなります。
また、調査にもあったように、生理による漏れの不安や体調不良によって、授業や受験勉強、試験に集中できないという声は多くあります。
そんな生理の悩みや不安を、誰にも打ち明けることができず我慢してしまう子どもも。
生理の不安を解消するためのアイテムや対策があるにもかかわらず、1人で抱え込んでしまう理由には、学校での性教育が限定的で細やかなサポートがないこと、10代の婦人科受診率の低さなどが挙げられます。
子どもが話しやすい環境を作るためには、まずは教員や保護者など周囲の大人がもっと生理について理解する必要があるかもしれません。生理で学校を休めなかった理由には「教員、保護者が許可してくれなかった」という声もあるのです。
個人差のある生理は大人同士でも理解し合うのはなかなか難しいこと。子どもであればなおさら、自ら声をあげにくいこともあるでしょう。
なにか不安な要素があれば、婦人科へ受診するのもごく自然なことです。敷居が高くならないように周囲の大人が手を差し伸べ、導いてあげることで、生理としっかり向き合えるきっかけとなるはずです。
中学・高校・大学などの受験を経験するのは、生理周期が安定しない10代がほとんどです。だからこそ、本人だけで生理の悩みを解決させるのではなく、周りの大人が正しくサポートしていく必要があるのです。
では、受験を控えた子どもたちへどのような生理対策を伝えることができるでしょうか。
受験と生理。上手に付き合う方法
授業や受験勉強、試験に集中するためには、生理痛を緩和することや漏れの不安を取り除くことが大切です。
生理痛を緩和させるためには、身体を冷やさず温めることを意識しましょう。カイロや腹巻きも効果的です。痛みが強いときには、無理せず鎮痛剤を使用することもひとつの方法。
15歳未満でも使用が認められている成分のもの、水なしで飲めるもの、眠くなる成分が含まれていないものなど種類があるので、子どもの年齢やライフスタイルに合わせて選ぶことをおすすめします。
漏れの不安には、タンポンとナプキンの併用や吸水ショーツがおすすめ。日本でのタンポンの利用率は約2割と、あまり馴染みがないかもしれませんが、サイズ展開もあるため、ナプキンと併用することで安心感アップ。生理周期や経血量が安定していて、記載の用法をきちんと守っていれば、子どもでもタンポンの使用は問題ありません。
まだ生理が不安定だったり、タンポンの使用に慣れていない・挿入に不安があるということであれば吸水ショーツがよいかもしれません。しっかりフィットしたものを選ぶことで、漏れの不安から解放されて、トイレに行く時間や余裕がない試験当日にも活躍してくれるアイテムです。
また、ピルの服用もひとつです。婦人科できちんとした処方や服用の指示を受けることで、生理痛が軽くなったり、出血量が減ることで漏れの不安を取り除くこともできます。また、数ヶ月前から服用しておくことで試験と被らないように調整することもできます。
受験シーズンの生理の悩みは、子どもたちだけで解決できるものばかりではありません。まずはしっかりと話を聞いて悩みに寄り添ってあげること。不安を和らげてあげること。相談する人がいることで気持ちが落ち着くことも多くあります。
受験は、子どもたちが自分の力で掴もうとしている新しい道への切符。
ちいさな2つの足で立ち上がることを応援していた幼かった頃のように、大きな志を持って歩き出した子どもの頑張りを、やさしくあたたかくサポートしていきましょう。
医療監修 宗田聡医師(医学博士・産婦人科医・産業医)