当たり棒

昨日たまたま家にあったガリガリ君。

もう何年も食べてなかったけど久々に食べると美味しい。シャリシャリ(ガリガリ君だからガリガリかな)食べてると、棒が見えてきた。あの、当たり棒だ。

そーいえば当たりがあるんだった。

当たったことあるっけと記憶の糸を辿っていると1度だけあった。

それは、初めてガリガリ君を食べた時だ。
小学1年だか2年だかの夏休み、母親に頼んでコンビニでガリガリ君を買って家で食べたコーラ味のガリガリ君だった。
それが初めて食べたガリガリ君の味。そして、初めて当たったガリガリ君。とても喜んですぐに交換しに行った。今でも鮮明に思い出せる。
それ以来あの喜びには巡り会えていない。

そんなことを考えていると、ワクワクしてきた。
これは当たるかもしれない。当たらないはずがない。当たるんだ、あたれ!!と願っていると、ひとりでに緊張してしまった。
ガブリガブリと横をかじり、棒の部分以外すべて食べ終えた。

さあ、最後の一口だ。これを食べたらもう当たりの棒が目の前にあるはずだ。

ガリッと1口頬張った。目を瞑りながら口から棒を出し、恐る恐る右目から視界を広げていった。

目を開くとそこには棒があった。何の変哲もない棒である。お店でアイスに換えることも誰かに自慢することも出来ない。ただの木だ。

淡い希望はむなしく散った。

くそ!僕は本気で悔しがった。

けれど、それと同時に嬉しかった、清々しかった。
久しぶりにこんなにドキドキしたのだから。デートに誘う時とも、受験番号を掲示板で見るのともなんか違った高揚感だ。この気持ちを僕は忘れていたのだ。

恐らくガリガリくんに出会わなければ思い出すことがなかったこの気持ち。

当たろうが当たらまいが特に大きな変化ではない。されどこの数分はきっと僕に大きな影響を与える。与えてくれると信じている。

少年の時のような気持ちを忘れてはいけない。そう心に決めた。
そんな数分だった。

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