#186_【海上交通】ジェットフォイル更新
先日長崎県や壱岐市、対馬市から、博多と壱岐・対馬を結ぶ航路で運航しているジェットフォイルを更新する計画が発表されました。
航路に関する話は、旅行業にとっても、我々の生活にとっても大事ですので、今日はこの話題について触れたいと思います。
更新の背景
ジェットフォイル耐用年数は35~40年とされていますが、この航路で運航されている2隻のジェットフォイルは、いずれも船齢が30年を超えています。
これは対馬に限った話ではなく、全国各地で運航されているジェットフォイルのほとんどが、この問題に直面しています。
造船メーカーへの発注数がまとまると製造コストが抑えられるということで、連携して発注する流れも模索されましたが、コロナの影響も重なり、なかなか厳しいようです。
なぜジェットフォイル?
更新される船のタイプは、今回もジェットフォイルで計画されています。
ジェットフォイルは「海のジェット旅客機」と形容されますが、単純にボーイング社が開発したものだからというわけではなく、エンジンの構造がジェット機と同じようなつくりになっています。
音はうるさいですが、高速運航していても安定感があり、速達性や就航率の高さなどに優れるという特徴があります。
たしかに、海上時化でも欠航することは少ないです。
※スピードは45ノット(時速約83km/h)出るそうです。
また、ジェットフォイルは、船としては特殊な仕様ですので、船員がイチから技術を習得するのは大変、という事情もあるかもしれません。
余談ですが、飛行機は機種ごとに免許があるらしいです。
どんな計画?
2隻あるうち、船齢39年である「ヴィーナス2」を更新します。
九州郵船にやってきたのは「ヴィーナス」のほうが先ですが、「ヴィーナス2」はいくつかの船会社を渡り歩いてからやってきたのだとか。
事業費は総額78.6億円(税抜)で、費用の半分を鉄道・運輸機構(JRTT)の船舶共有建造事業を活用し、残りは国が25%、長崎県が12.5%、壱岐市と対馬市が各6.25%の割合で負担します。今月行われる議会の決定で動き出すのでしょうか。その後は、今年度中に建造の契約を結び、2018年度前半に竣工する予定です。
そして、建造費が現在運航している船(つまり30~40年くらい前)で25億円、2019年に就航した東海汽船の「セブンアイランド結」の船価が50億円くらいでしたので、今回の78億円という数字を聞き「どういうこと!?」と思いましたが、東海汽船の「結」の時は川崎重工が修理用などで用意していた既存のウォータージェットが準用されたとのこと。これに賃金上昇や円高などの要因も重なっていることでしょう。
・「ジェットフォイル」建造レポート(JRTT)
https://www.jrtt.go.jp/project/working-report/ship/no66/
そして、「4年もかかるの?」という話ですが、スケジュールを伺ったところ、2025年度に加工、2026年度に起工、2027年度に進水という段取りとのことでしたので、やることはたくさんあります。
補足しますと、現在の計画は1隻を建造する計画であり、もう1隻の更新については現状白紙です。
さいごに
乗り物の世界では、製造が終わった車種を廃車するときに、いたずらにスクラップせず、使える部品は取っておくようにしているそうです。
東急8500系が地方の私鉄から引き合いが多い理由のひとつに、大量製造されたため部品が調達しやすいことも挙げられます。
話をひととおり聞き、九州郵船もよく決断したなと思った一方、他の地域も続かないと、まだまだ心許ない気がしてきました。
新造船を機に、乗船客を増やす方法や、ジェットフォイルという乗り物を深く知る機会が作れたらと思う今日この頃です。