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#159_【観光ガイド】ジブンの「好き」を探す授業#2_犬束祐徳さん

先週から対馬高校商業科での出前授業を開始しまして、初回はフォトグラファーの城崎祥熙さんに講師をしていただきました。

最近新しい働き方として紹介されている「副業」(あるいは「複業」)というのは、対馬だと珍しくないところがありますが(ただし、対馬ではそのようにせざるを得なかったという側面がありネガティブに捉えられることが多い、という違いがあります)、商業科ですと、講師の経歴や働き方は多様なほうが良いと思い、続いては家業の丸徳水産でお仕事をしている犬束祐徳さんに講師をしていただきました。


講師を依頼した犬束祐徳さん

対馬出身のM先生によるところ、バレーボールで頭角を現す存在であったという祐徳さん。中学卒業後、その素質をもって島外の高校に進学し、3年間帰省すらできない部活漬けの日々を送り、卒業後は大学に進学したものの、数ヶ月後にこじらせて、父親から対馬への強制送還を命じられたとのこと。

【祐徳さんの背後で、みつをさんが「つまづいたっていいじゃないか」とおっしゃっています。】

そのあたりの話は、本人から聞くほうが面白いので触れませんが、Uターン後は家業に加わり、現在は漁業体験ツアーの「海遊記」をメインに担当しています。

お話の内容

課題解決がビジネスにつながる

「ピンチはチャンス」という言葉がありますが、現在丸徳水産さんでは様々な取り組みが実践されています。

例えば、

藻場がなくなったのなら、海藻を生やしてみよう!

【養殖するヒジキの苗付けです。】
【こんな感じに養殖をします。】

漁師の収入が増えないのなら、違う稼ぎ方を考えよう!

【海遊記では、サバ、ブリ、マグロの養殖生け簀を見学させてもらえます。】
【地区の漁師さんにもガイドをしてもらい、報酬をお支払いしています。】

獲った食害魚が売れないのなら、売れる方法を考えよう!

【食害魚を美味しく食べられるレシピを数十種類試作した専務(祐徳さんの母親)】
【そう介のメンチカツ(イスズミ)、アイゴのフライと丸徳鯖の寿司です。】

これだけでも十分という感じですが、ほかにもまだまだあります。
そのあたりは、海遊記に参加すると、現場をガイドしてもらいながら教えていただけます。

魅力も課題も知ってほしい

これだけ多岐にわたる取り組みを家業でしているというのが驚きますが、もちろん、丸徳水産さんの周囲にいらっしゃる様々な方々の協力があって成り立っています。

壮大であったり、解決が困難であったりする問題に立ち向かうには「多くの人を巻き込みましょう!」とよく言われますが、その実践については案外触れられていない気がします。

先週、久しぶりに海遊記におじゃました時、社長(強制送還を命じた父親)も「海のことについて、行政、漁民、企業など色々な人に関心を持ってもらい、連携してそれぞれの得意分野が活かし対馬全体を良くしたい。そのために、とにかく現状を知ってもらいたい」と話します。

海遊記」や、磯焼けの原因とされる食害魚を活用する「そう介プロジェクト」は、端的に言いますと「多くの人に分かりやすい形にして、海のことに関心を持ってもらう」という目的から始まっていますので、まさに活動を続けていくこと自体が発信であり、それをきっかけに島内外問わず様々な方々を巻き込み、活動が大きくなっています。

祐徳さんからは、現場の写真や映像などを交えながら、そのサイクルを説明していただきました。

海を守る志も大事ですが…

数々の社会課題解決に向けた取り組みをご紹介いただきましたが、現状一番問題なのは、漁師の生計が成り立たなくなっていること。
漁師の生活が成り立たなければ、水産資源を守る以前の話になってきます。
若い人が漁師になりたくない、若い人に継がせたくない、となってしまうのには、そのような背景もひとつあるのでしょう。

そうならないために、対馬の魚を食べてほしい、対馬産のものを食べれば対馬のどこかの事業者が潤い、漁業者の経済が回る、そんな小さいことでも積み重ねていくと明るい未来が待っているのではないか、と話していました。

崇高な理念だけで人は動きませんし、人付き合いや世の中のつながりを知ることも大事であることを感じます。

高校生へのメッセージ

好きなことをやりがいに

今後、「漁業者と人をつなぐ」「海と人をつなぐ」 立場でありたいと話す祐徳さん。

子どもの頃は、両親が家業にかかりっきりで、授業参観の時にはうちの親だけ来ていないというのがイヤだったものの、海は好きで、釣りどころか冬でも泳いだりするほどだったとか。

そして大人になり、自分たち家族は海からつないでもらったということで、海にできる恩返しとして何ができるかと考えていく中で、両親が自分のために働いてくれていたことも分かり、自分も子供に背中で見せたいという思いから、海に公園を作って子どもが学べる場を残したいという野望を、嬉々として話していました。

「エネルギーは思考の方向に流れる」とも話していましたが、生徒さんにも、好きなことに夢中になっている姿が、人を巻き込む力につながっていくことを感じ取ってもらえたら、と思います。

【ウニの養殖の実験です。】

振り返りなど

私が祐徳さんと話をするようになったのは海遊記の立ち上げがきっかけですが、社長と専務には、対馬に移住した年からお世話になっています。

数年前は、島外からのお客様を「肴やえん」(丸徳水産の飲食店)さんにお連れして、専務に挨拶に伺うと「お店があると外に出られないから、ありがたい」と言われましたが、最近では、島の外でもご活躍なさるのを見る機会が増えています。

まだ途上だとは思いますが、水産加工、飲食、観光と立ち上がった事業を、3人の息子さんらにシフトさせたり、お互いに支え合えるようにしながら、組織として回せるようにしてきたからだろうと思います。

そんな感じに事業が大きくなる中でも、自分の好きなことに打ち込める祐徳さんの熱量がすごいと感じます。
嫁さんにがられん(=怒鳴られない)程度にしておいたほうがいいじゃないかと思ったところもありますがf^_^;)、海の公園づくりに向けて頑張ってほしいですし、そう介プロジェクトや海遊記で人を巻き込んでいる前例がありますから、きっと実現できると思います。

社長にお目にかかった時「最近、子どもはスマホやゲームで遊ぶから、漁師も孫を海に連れていくことがないよ」という話を伺いました。
ゲームは子供たちとっての「コミュニケーションツール」という話もありますので、悪いものだとは思いませんが、都会と違いこんなに海や漁業が近い環境にいるのなら、感性がみずみずしいうちに、対馬の海も体感してほしいと思います。その際には、ぜひ海遊記をご利用ください(^^ )。

【海遊記で生け簀からロッポウ(カワハギ)をキャッチした中学生と社長(左)。】

お仕事の合間に時間を作ってくださった祐徳さん、ありがとうございましたm(_ _)m。

これから学校は夏休みに入りますので、出前授業はしばらくお休みしますが、10月頃新しい企画をはじめますので、お楽しみに~o(^-^)。

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