見出し画像

#46_【ガイド研修】ツシマヤマネコ野生順化ステーション

対馬は、日本列島と大陸のはざまにあり、大陸系、日本本土系、そして固有種と多様なルーツをもつ生き物たちが、独特な生態系を織りなしています。
とりわけ、国内では対馬にしか生息、分布しない種が多いことから、それを追って遠方から研究で来られる方も数多くいらっしゃいます。

対馬で独自に進化した固有種の筆頭であげられる生き物が、ツシマヤマネコ。国のレッドリストで絶滅の危険性が極めて高い「絶滅危惧ⅠA類」に分類されていることから、1997年にツシマヤマネコの保護を目的とした施設が開設されました。それが、上県町佐護にあります対馬野生生物保護センターです(島民は、「やまねこセンター」と呼びます)。

【佐護にある「やまねこセンター」】

やまねこセンターでは、ツシマヤマネコの生体展示だけでなく、対馬の野生生物全般の生態やそれらを取り巻く環境についての解説、野生生物保護の普及啓発活動などを行っています。

【4代目の「かなた」くんです。】


【対馬で見られる野生生物の標本や剥製もたくさんあります。】
【野生生物保護の取り組みに関する展示もあります】

しかし、絶滅の危機が続くことから、この状況を脱するために様々な取り組みが検討され、その一環としてツシマヤマネコ野生順化ステーションが、2014年に整備されました。

【順化ステーションがある環境省対馬自然保護官事務所厳原事務室】
【野生順化ステーションの内部はこのようになっています。】

この施設は、動物園などの飼育下で繁殖させたツシマヤマネコを、自然の生息地に戻し定着させることを目的に開設されました。ちなみに、哺乳類の野生復帰を目的とした施設では、国内初だそうです(鳥類では、トキとコウノトリの事例があります)。
これまでに、イエネコによる実験や保護された野生個体を野生復帰させるための訓練などに用いられ、現在は2匹が訓練中です。
野生で生きていけるようにするための訓練施設であるがゆえ、人に慣れてしまっては元も子もないので、対馬に住む人でも中の様子は知らない、という方がほとんどでした。
今後は、ツシマヤマネコの保護活動を広く知ってもらいたい、しかし環境省さんのマンパワーは限られている(ツシマヤマネコの保護だけでなく、ツマアカスズメバチの駆除やカワウソが出没した時の調査もやまねこセンターの仕事です)、ということで、ガイド向けに研修をしていただき、ガイドを通じて広報していこうとなったわけです。

最初は座学で、過去から現在の生息数や生息分布域の変化や、これまで行われてきたツシマヤマネコの保護活動を解説していただき、そのあとステーション内を歩いて、訓練環境やツシマヤマネコのフンの見分け方を、実演を交えて見学しました。
「なんでフンを?」と疑問を抱いた方もいらっしゃるかと思いますが、フンがあることで、そこに分布していることや、何をエサとしているのかが分かるので、これは非常に大事な情報なのです。

【ツシマヤマネコのフンは独特なけもの臭がします。ほじると、何を食べたのかが分かり、ツシマヤマネコなのか他の動物なのかが分かります。】
【レンジャーさんが採取したフンの情報を記録しています。】

実は、今年3月に、環境省さん主催で順化ステーションの見学会が行われましたが、市民のみなさんはもちろんのこと、島外からも見学希望の申し込みがあり、早々に応募を締め切ったという状況でした。
ちなみに、見学ツアーの様子はこんな感じでした。

【順化ステーションの外と中をネコが出入りできないようにするための、柵の説明。】
【ツシマヤマネコが生息する対馬の里山を再現した訓練場所もあります。】

日本初の取り組みだけに、環境省の方も数々の試行錯誤をされていますが、それだけに、多くの方から関心を持たれる内容ですので、みなさまの好奇心を満たせるガイドができるよう、努めてまいりたいと思います。

見学の目的をお伺いしてから、1ヶ月ほどお時間をいただいて準備を進めてまいりますので、興味、関心がありましたら、弊社ホームページからお問い合わせください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?