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タロットの起源である、トランプの来歴

「タロットで、見てほしい」
という依頼を、ごくたまにうけることがある。
占い手法を指定しているわけだ。一般的にはクライアントにとって、手法よりも結果が気になるところだろうが、タロットへの思いが強い人もいるのだろう。たしかにこのカードがもつ妖しさは独特のものがある。

ただし、歴史は意外にあたらしく15世紀ごろ、キングゲーム用のカードとして開発されたといわれている。ルネサンス期が始まろうとする時代で、場所はイタリア、貴族たちの遊びとして考案されたようだ。
ただし元をたどっていくと、タロットの前身といわれるのは数札のトランプ。小アジアや中近東からヨーロッパにもちこまれ、その後、ヨーロッパでは神秘主義が流行し、タロットの誕生とともにその絵柄に神秘主義的な図柄が加えられた。18世紀後半にはオカルトや占いにつかわれるようになり、独特な発展をとげた。

タロットをつかったゲームもあるが、いまではタロットといえば占いというイメージが強い。トランプにも占いもはあるが、こちらはむしろゲームの印象が強いだろう。僕自身、トランプを使って占ったことはない。

しかし、なじみという意味ではトランプはこどものころから接してきた人も多く、その意味も想像しやすいだろう。数札に絵柄がないため、物語性を感じにくいが、その意味を知ればこれを使った占いもできる。むしろタロットよりもストレートで理解しやすい気もする。
ということもあって、。今回はトランプについてすこしお話を...

数字に隠れた秘密

骨牌と書いてカルタと読ませたのは、遠いむかし、骨に文様を刻んだカードがあったからだろう。そう思うと、ななんだかそこに不思議な力でも宿っていそうな気になる。あるいは、ただ木にくらべて劣化せず、石より彫りやすかったということなのかもしれない。

カルタ=cartaは、ポルトガル語で手紙やトランプなどをさす。これがはじめて日本にもたらされたのは1543年のことだとされる。ポルトガル人の手によって、鉄砲とともにカルタ、すなわちトランプのようなものが日本にもちこまれたらしい。
それから100年後、1634年の角倉船の絵馬には、カード遊びに興じる男女の姿が描かれている。この船は江戸初期、豪商の角倉了以と息子の素庵が朱印状をうけて、安南すなわちベトナムあたりに派遣した貿易船のことだ。つまり当時とすれば最先端の遊びということになりそうだ。

欧米の言語ではトランプのことをたんにカードと呼ぶことが多い。英語でも cards または playing cardsである。

トランプは日本独自の言い方で、triumph(勝利)を語源とする trumpに由来する。西洋人たちがカード遊びをするさいに、「トランプ」としばしば口にしていたのを耳にして、トランプの名がついた。トランプとは切り札、勝負のときの札という意味である。

トランプそのものの起源は明らかになっていない。ただ暦と密接な関係をもっていたという説は根強い。ためしにちょっと計算をしてみよう。
1から13までのすべての数字を足せば91になる。
式にすれば Σn (n=1~13)=91。
これに4種類のスート(スペード、クラブ、ハート、ダイヤ)を掛ければ、91×4=364になる。さらにジョーカー1枚を足すと365、2枚だと366という数字があられる。いうまでもないが1年は365日、閏年は366日である。

4つのスートはそれぞれ季節も示唆し、スペードは春、クラブは夏、ハートは秋、ダイアは冬である。さらに4つのスートごとにA (エース)から K(キング)までの13枚があるので、13×4=52。これは1年が52週ということをあらわすともいわれる。13という数字もまた太陰暦での月の数につながる。

数字の背後にある意味は、それぞれつぎのように解釈される。
1は、物事の始まり、創造、パイオニア、意志の強さ
2は、調和や2つの要素の結びつき
3は、時間・場所・人モノをさし、3つの要素の安定
4は、落ち着いた状態。所有。膠着の意味も
5は、完成へと向かう状態。だが最終ではない途中段階
6は、物事が実際に動きだす。立体的イメージ。取引、求愛
7は、足場を固めて、仕切り直し、休止。対立関係
8は、強いエネルギーをもつ状態。衝動性。分裂
9は、最終的な完成をめざす段階。悲しみの連鎖
10は、物事の終わり、終結。再出発、つぎの準備

そもそもトランプは、占いのためのカードとして考案されたとされる。占いそのものが暦と密接な関係を持っているだけに、トランプには暦につながる深い意味が隠されていると考えるのがむしろ自然だろう。

スートがあらわす階級

歴史を紐解いてみると、スペード、クラブ、ダイヤ、ハートの呼び名が定着したのは、16世紀のイギリスのようだ。4種類のマーク(スート)にはそれぞれに由来があるとされる。スペード(spade)は剣をあらわし「王候」、クラブは棍棒をあらわし「農民」、ダイヤは貨幣をあらわし「商人」、ハートの形は心臓ではなく聖杯をあらわし「聖職者」の象徴といわれる。
それぞれに隠れた意味もあって、スペードは試練、クラブは幸運、ダイヤは財産、ハートは愛や創造で、これらは僕たちにも親しみ深い感じあがある。

クラブ=clubは英語で棒をさし、これが農民につながるのは鋤(すき)や鍬(くわ)などの農具をイメージしているからだ。いまでもフランスなどでは棍棒の紋表を用いるが、一般に広めていくために棍棒では無粋だとして、発音の近いクローバー cloverをあてた。スペード=spadeもシャベル状の意味があるが、語源はギリシャ語 spath?にあり原義は刀であった。

各スートを社会的階級にあてはめるこの説は、しかしこれを裏づける確かな文献はなく、正確な由来は不明である。

日本で現在使用されるトランプはアメリカ経由のもので、ほぼ世界標準タイプといえる。これ以外にもさまざまな地方札(Regional Card)があって、スートの紋表もカードの枚数も異なる。イタリアやスペイン、南米諸国では剣、聖杯、貨幣、杖(もしくは棍棒)のスートがある。このほかドイツでは鈴、ドングリ、木の葉、心臓の紋表をもつカードがある。スイスでも鈴、団栗、盾、野バラの紋表を持つカードが残っている。

枚数についても、ロシアでは1と6~13の数字で構成され計36枚。イタリアでは1~10の数字からなる40枚。スペインは1~12の数字による48枚で、8と9をのぞいた40枚の場合もある。
いずれにしても、端数がでるケースが多く、スートの色も4色ではなくあえて2色にするなど、記憶しにくいように設計されている。ゲームをするうえで幻惑的な要素を加えていたと思われる。

タロットカードは78枚で、それに比べると数は少ないが、トランプでの占いもすこし試行錯誤しながら取り入れられそうな気はしている。

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