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当事者が思う海外人材雇用の課題

最近よくメディアでも技能実習制度に関しての話題が散見されるようになってきましたが、総じて『技能実習制度は奴隷制度だ』『実質的には搾取だ』などかなり否定的な意見が多く感じます。

私たちはこのど真ん中の制度を利用して企業に人材を紹介しているわけですが、個人的な意見としては『そういわれても仕方ない制度設計』だと思っています。もちろん当事者として奴隷としてみたり、搾取しているつもりは全くありませんが、実際メディアにはそう取られるような実態が流れていたり、そもそもの制度の趣旨がおかしい点から指摘に対して、全く違うとは言い切れません。

今回は私が日々思っている課題について、好き放題書いてみたいと思います。

課題①そもそもの制度の趣旨がおかしい

技能実習制度は元をたどれば研修制度呼ばれ、1981年ころからあったようですが、今の形になったのは2017年の施工された『外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律』に基づいた制度になります。

簡単な趣旨としては、『発展途上国の方が日本に技術を習得しに来日した海外人材に対して、企業は技術移転を行うことで、母国をかえった際にその技術を用いて母国の経済発展につなげるための国際貢献制度』といったところでしょうか。

まずこれがおかしいと思います。なぜなら海外人材側も企業側も実態としてその趣旨のもとに制度を利用していないし、国としては移民政策と言いたくないだけの建前でしかないからです。このような制度のために、彼らのことを労働力としてみることは法律違反として扱われますが、実態としては正社員扱いの労働者として保険適用等も行われる実質労働者なわけで、このあたりの建前を言い続けるのも現場的には矛盾が出ているのも実態かと思います。

選べる職種に関しても、単純作業というのは制度の対象にはならないはずなのですが明らかに単純作業とも思えるような職種も含まれており、何を基準に単純作業だと言っているのかも不明確なように感じます。

上記からくる制度のねじれが様々な問題の根本にあると考えています。

課題②最初の三年間は転職できないという縛り

正直ここに関して、『3年間は企業側が雇用を確保できるメリット』だと最初は思っていましたが、逆に企業側にしかないメリットだと気づき、ここも課題だと思っています。

制度としては母国へ技術を持ち帰ることが目的なので、期限を決めて必ず帰国させるためにこのようになっていると思うのですが、当の本人たちからすれば万が一雇用環境が合わなかった場合の受け皿がなく、基本的に帰国という選択肢しかないため、問題の一つである失踪にもつながると考えられます。

報道に出るような非人道的な職場は論外ですが、人間ですから単純に性格的に同僚と合わないことは日本人だって大いにありますし、どちらが悪いという議論とは違うことからそれを3年間我慢させるのはそれこそ人権をないがしろにしてしまっている気がします。

またいつでも転職できることになれば、企業としては人材がとどまるための施策を行っていかなければならないわけで、そういった意味でも企業の代謝が良くなると考えます。

実際HSBCの調査で海外で働きたい国ランキングで下から数えたほうが早い位置にあるのが日本の現状です。日本企業、特に中小企業が生き残っていくためには魅力ある職場つくりやダイバーシティ経営が非常に大事になりますし、このあたりが解決されればよりよくなると考えます。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1909/27/news026.html

そして、実は2019年にこのあたりが変更され、本格的に労働力不足のための雇用制度である特定技能という制度ができました。

個人的にはいい制度そうだし、技能実習からシフトしていこうと思っていたのですが、、、3つ目の課題につながっていきます

課題③どうしても見え隠れする利権

上記の課題がクリアになり、さらに間に仲介を挟まず企業と人材が直接つながれる制度として2019年4月より開始されました。

我々技能実習の監理団体としては、正直必要性が薄まるのですが日本や企業のためにはあきらかにいい制度だと思っています。

が!!!

現れました、必殺『利権』・・・

まず企業と人材が直接つながれるはずなのに、送り出し国側がうまみがなくなると思ったのでしょう、海外から人材を呼ぶ際は送り出し機関というもともと実習生を送り出していた現地企業を通さないと受け入れできなくなってしまう国が多くなりました。

またこれは建設業の話にはなりますが、特定技能で受入する際にはJACという団体もしくはJACに加盟している業界団体に加盟しなくてならず、最大で24万円の年会費と毎月12,500円~20,000円の費用を支払わなければならず、非常に受け入れの際の障壁となっています。

建前としては技能実習の際の建設業における問題が多いため、その監視を行う第三者団体として存在しているようですが、サービス内容もあまりないように感じますし、そこにわざわざ高いお金を払うことが問題の解決につながるとは考えづらいです。本来本人たちへの処遇改善につなげるための費用が削られ、むしろ悪い方向になるのではと危惧していますし、それなら技能実習生を受け入れようという方向になってしまい、結局上記の課題解決にもつながらないと考えます。


様々な課題があるのは仕方ないことですが、ただただたたかれ続けるのは携わる当事者としても悲しいですし、頑張っている海外人材たちにも申し訳ないなと思っています。

少し長くなりすぎたので今度は私が考える理想の制度設計を考えてみたいと思います。

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