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肥育されている肉を食べている場合でない(食べちゃうけど)

Photo by Nick Karvounis on Unsplash

そろそろジビエの季節だよな…なんて話すとグルメ(最近だとフーディー?)なイメージがあったりしませんでしょうか?

そもそもジビエとは、「狩猟によって、食材として捕獲された野生の鳥獣」とのことで、もちろん状態の良いジビエを手に入れることは難しく、それに伴い価格も高くなります。

同時にこんなニュースを耳にしたことはないでしょうか?

「野生のイノシシやシカによる深刻な農作物への被害が発生している」という類のものです。

イノシシやシカでニュースを検索すると、それこそたくさんの報道が出てきます。 農水省が発表している「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について」というページがあり、それによると、平成30年度の農作物被害については、シカが約54億円、イノシシが約47億円、サルが約8億円という被害額だそうです。

こうなると当然、農作物被害を防ぐためにももっとジビエを食べよう!という話が出てきます。しかしこれもなかなか簡単ではないようです。

19年の野生動物の捕獲数は124万3000頭だった。ところがイノシシとシカを合わせたジビエ利用数は約11万6000頭で、利用率は9%台にすぎない。しかもシカの場合は体重の2割以下の肉しか売り物になっていない。飲食店などで提供されたのはその7割(1392トン)だったから、利用された肉は微々たる量なのである。
しかし利用率が低いのには理由がある。それは捕獲個体を人が食すことのできる肉にするのが難しいからだ。まず仕留めてから短時間で解体しなくてはならない。しかし罠猟の場合は、見回りの時間・回数に左右される。毎日定期的に行けるとは限らない。とくに有害駆除が目的だと、そんなに熱心に見回らないだろう。
銃猟でも山奥から解体場までいかに運ぶか。以前は山の現場で解体し肉だけを運んだが、現在は衛生面から山中で解体するとジビエとして流通させられない。

八百屋部門のポム・ド・テールでお付き合いさせて頂いている千葉(北東部)の農家さんに訪問した際に教えてもらったのが、以前よりも顕著にイノシシの被害が増えてきているということ。

畑の農作物を守るために電気柵などを設置する必要が出てきているが、手間やコストの問題もあり、広い面積を守りきるのも簡単ではないとのこと。

地域で、狩猟や罠などで捕獲・駆除しようとはしているものの、経験豊富な猟師さんの不足や高齢化という日本のどの地域でも悩まされている問題があり、追いついていないのも現状です。

さらに心苦しいと言っていたのが、捕獲されたイノシシが100頭いたとして、実際に食べられているのが5頭くらいで、その他は地中に埋められているとのこと。これは、先述の利用率の低さとも整合します。

地中に獣を大量に埋めるというのも、土にとってはあまり良いことではない(自然界の通常のサイクルで、動物が土の中に埋まることはあまりない)と想像でき、人間都合で駆除した命を出来る限り無駄にしないためにも、やはり食につなげていくのは大切なことだと感じます。

こうして食べられもせず、土に埋められている動物がいる一方で、肥育され食べられている動物の数も限りがありません。このバランスを少し変えることができないのかな?というのは、やはり重要なテーマだと思います。

野生肉食のボトルネックになるのは、やはり価格です。

捨てられている肉なのだから安くなるだろうというのは、浅はかな考えで、狩りしても罠にしても取れるか取れないかわからず、仕留められたとしても良い状態で解体するためにすぐに処理場に持ち込む必要があり、そしてその処理場も良い状態の食肉にするためには多額の設備投資が必要となれば、肥育された食肉の生産性には、どうがんばっても勝てません。

私たち食べ手が、この差額を理解の上で、ちゃんと負担するということはできないのでしょうか。

もちろん安全な食、人々の生活を支える食という文脈で、肥育された食肉の存在意義はあり、どちらが良い悪いという議論ではなく、全体のバランスのなかでの話です。

幸い「質」に関しては、良い処理をされた野生肉は味わいも美味しいということは、日本中の心ある料理人さん達の啓蒙のおかげで、徐々に知られてきていると思います。

食肉処理場などに関しても、自治体によっては獣害対策として行政などが資金を出し、稼働させているところもあるようです。そういった施設の多くは、まだ採算が取れていないところが多いようですが、その反面、販売価格が抑えられているという現状もあります。

最近は、様々な販路から自家用にイノシシ肉やシカ肉を購入して食べるようにしています。

先のニュースであげた伊豆市のイズシカ問屋も年間1000万円の赤字を出しているようですが、このイズシカブランドで販売されているシカ肉は、状態も良く、家庭でも調理しやすいので、わたしたちの最近の定番となっています。

2019年の大型台風被害の発生の際に、友人の飲食店がSNSで支援を呼びかけていた千葉県君津市の猟師工房さんからもイノシシ肉をいただいたりしています。

肥育された食肉と違って、在庫のコントロールも難しく、また不定貫(重さがバラバラ)の商品のため、いわゆるネット販売にも適しません(決済額を事後に変えることが難しいため)。

電話したり、SNSでメッセージを送ったりという買い方になって、ややハードルが上がってしまいますが、折に触れてこういうお肉をいただくようにしています。

皆さんおすすめの国産ジビエが買えるお店などありましたら、コメント欄で教えていただけると幸いです。

be a good friend は、ヨーロッパを中心に自然派ワインを輸入し、造り手の想いに共感してくださる全国のワインショップさんなどに販売するワインインポーターです。

また自然派ワインの部門とは別に、国内の自然栽培の農家さんのお野菜を全国の飲食店さんや、個人の方にインターネット販売を行う八百屋部門のポム・ド・テールも活動中。



研究者の方や様々な分野のプロフェッショナルの方の力をお借りして、「幸せなな食卓で未来を明るくする」を一歩すすめるためのwebセミナーを開催していきたいと思っています!頂いたサポートはそちらの運営費用に使わせて頂きます。