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自らのワインを「野生」と呼ぶ哲学者 #声なき大地の詩

色んな巡り合わせとご縁で出会うことができたのは、フランス アルザス地方 ヴォルクスハイムの村に拠点を置くメゾン リスナー のブリュノ シュルーゲル。

COVID-19の渦中の2021年、普段であれば造り手本人を訪ね、言葉に耳を傾け、畑を一緒に歩くことでその想いとワインの未来に思いを馳せます。しかし、この時ばかりは、メールでのやり取りしか手だてがありません。しかし、ブリュノとのメールのやりとりは、当初から非常に刺激的なものでした。

自己紹介で「自然派ワインのインポーターである」旨を伝えたところ…

「私のワインは自然派とは呼ばないで欲しい。」

との言葉が返ってきました。

非常に興味深いと思った私は、彼が自分自身のブドウ栽培やワイン造りをどう捉えているのかを尋ねてみました。

「私は、科学者・音楽家・哲学者でありながら『明日のための今日の農民』でもあった、福岡正信氏の著書『わら一本の革命』を読みました。そこで使われている彼の農法を翻訳した言葉『sauvage(ソヴァージュ:野生の)』が、私のワイン造りに紐づく概念だと考えています。」

「人間が権力と知識に染まった姿勢をとり、『行動しない』という決断からあまりに遠く離れてしまっている『naturel(天然)』や『nature(自然)』よりも、この言葉を好みます。もしあなたが私の事を日本の友人に紹介してくれる折には、福岡正信氏が使ったであろう言葉で紹介して頂きたいです。」

福岡正信氏の名前は、ワインの造り手に限らず多くのヨーロッパの農業家から名前を聞く機会があります。その福岡氏が提唱した農法は「自然農法」と名付けられ、国内外多くの農業家に影響を与えてきました。

つまり、ブリュノは、彼自身の農法を福岡正信氏への敬意も込めて「自然農法」と呼んでほしいと言っていたのです。

ここから、フランス語のsauvage(ソヴァージュ:野生の)にあたる日本語は福岡氏が提唱した「自然農法」という言葉とは内包している意味が違うように感じる…だとか、agriculture(農業)のculture(耕作・栽培)は、人間が干渉するものである…だとか、農法という言葉の「法」という言葉の概念は、中国の起原を遡れば「理(ことわり)・真理」を表しているんだ…などと、様々なやりとりがあったのですが、福岡正信氏が提唱した「自然農法」という概念こそが、ブリュノ シュルーゲルの体現している取り組みと重なった概念であり言葉であるということについてはよく理解できました。

ということで、メゾン リスナーのワインは、

フランス語では、”Les vins sauvages(野生のワイン)”と呼び、 日本語では「自然農法のワイン」となります。

メゾン リスナーでは、品種ごと、区画ごとに様々な種類のワインを造っています。少しづつご紹介していければと思います。

ドメーヌ:Maison Lissner / メゾン リスナー
造り手:Bruno Schloegel / ブリュノ シュルーゲル
ワイン:Riesling / リースリング
ヴィンテージ:2019
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:リースリング 100%

メゾン リスナーのリースリング3部作の序章。純粋、無垢、靜謐(せいひつ)な味わいは、リスナーのその他のワインにも共通する署名のような味わいですが、良し悪しではなく、弦楽四重奏のようなその他のスタンダードキュヴェと異なり、オーケストラの片鱗を感じさせてくれるワイン。

硬質なミネラル感と暖かみのある果実味、清々しい香ばしさと、品の良い酸とゆっくりと目の前のグラスと向き合えば向き合うほど、色々な表情を見せてくれるワイン。

自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に少量の亜硫酸塩(酸化防止剤)を添加して造られます。

おわりに

be a good friend は、ヨーロッパを中心に自然派ワインを輸入し、造り手の想いに共感してくださる全国のワインショップさんなどに販売するワインインポーターです。

また自然派ワインの部門とは別に、国内の自然栽培の農家さんのお野菜を全国の飲食店さんや、個人の方にインターネット販売を行う八百屋部門のポム・ド・テールも活動中。

研究者の方や様々な分野のプロフェッショナルの方の力をお借りして、「幸せなな食卓で未来を明るくする」を一歩すすめるためのwebセミナーを開催していきたいと思っています!頂いたサポートはそちらの運営費用に使わせて頂きます。