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エルサレム在住の人権活動家     ガリコ美恵子さんへのインタビュー

現在エルサレムに在住のガリコ美恵子さん。イスラエルによるパレスチナ人の殺害・逮捕・家屋破壊などに抗議し、パレスチナ人の人権保護のための活動を行っている。ここ数年、東エルサレムのシェイク・ジャラ地区での入植活動への抗議デモに毎週参加されており、最近も東エルサレムのパレスチナ人への警察の暴力を裁判所に訴えるイスラエルの人権団体の活動にも参加する。現地から日本語でも発信しており、『人民新聞』(http://jimmin.com/)で月1回のコラム「イスラエルに暮らして」を執筆中。今回BJBでは、現地に長く住むガリコさんに活動についてお聞きし、インタビュー形式の記事にまとめた。ガリコさんが現地で記録した貴重な動画もぜひご覧いただきたい。

――現在ガリコさんが参加している活動について教えてください。

ここ1か月ほど、イスラエルの人権団体と協力して、東エルサレムでのパレスチナ人への暴力でイスラエルの裁判所に訴える活動にボランティアで参加しています。イスラエル警察がパレスチナ人に暴力を奮う事件がエルサレムで起こると、まずはその内容を検討して警察に警告をして様子を見ます。しかし、警察から何の対応もなければ裁判に訴える手続きに入ります。警告後、2、3日は警察の暴力が控えめになることもありますが、ほとんどは裁判に至ります。そのため、警察が暴力を奮っている状況を動画に撮り、それに解説をつけて人権団体の担当者に送っています。裁判で弁護士がその動画を使えるようにするためです。

それから、最近は毎週末イスラエル人左派の人たちが、テルアビブ国防相前の公園で「占領を目で見る」という抗議活動を行っています。私もこの活動に協力して、撮影した動画に解説つけて提供しています。「占領を目で見る」という活動では、公園に設置された大スクリーンに、イスラエル兵がパレスチナ人に行っている残虐行為を記録した動画を流します。通行人の中には質問をしてくる人もいますが、右派から嫌がらせもあります(『人民新聞』11月15日号コラムに詳細あり)。

――普段からこういった活動を行っているのでしょうか?

平日の日中は仕事がありますが、仕事の後はよくエルサレム旧市街のダマスカス門近くに行って撮影をしています。入植者や、ダマスカス門に配備されたイスラエル警察が、パレスチナ人の通行人に対して暴行を加えるケースが多いからです。夜まで撮影することがありますが、急に警察から通行人への攻撃が始まったり、足元に音響弾を投げられたりするので、逃げなければならないこともあります。

ヨルダンTVに勤めるパレスチナ人カメラマンたちとも交流があるので、家にいるときも警察による襲撃が起これば電話がかかってきます。その時は走って現場にかけつけます。こうした攻撃で、〔悪臭を放つ水を放水する〕スカンクカーの水をかけられたりすると、体中が臭くて家の中まで臭くなるので、吐き気と頭痛をこらえながら、靴、服、鞄などを夜中に洗濯したりしています。

11月28日から8日間、イスラエルはハヌカという祝祭期間に入りましたが、その期間もエルサレム旧市街内のイスラム教徒地区内に建てられたユダヤ人入植者団体の事務所前で、入植者50人以上が輪になって歌って踊って大騒ぎをしていました。そのため、旧市街のメインストリートにあたるアル・ワド通りは、大変な混雑が起こりました。イスラム教徒の夜の礼拝時で、たくさんのムスリムたちが聖地アル=アクサー・モスクに礼拝に行く時間なのに、一人ずつしか通れないような状況でした。旧市街はパレスチナ人の生活や商業の場ですが、パレスチナ人が使う商品運搬用の小型車やゴミ収集車も立ち往生する事態でした。パレスチナ人がこんなに集まれば、道路を封鎖した罪で刑事犯として逮捕されるのに、そうした取り締まりはユダヤ人入植者には行われません。

――今は東エルサレムのあちこちでイスラエルの暴力的な抑圧が続いていますが、美恵子さんはこの状況をどう眺めているのでしょうか?

シェイク・ジャラの追放危機やダマスカス門でのイスラエル警察の暴力などが常に頭にある状態です。今もシェイク・ジャラで4軒の家(住民約70人)が強制追放されようとしています。強制追放はここ1か月以内に行われる可能性もあります。こうした強制追放は、通常早朝に行われるので、追い出しの危険があるときは対象とされたパレスチナ人の家に泊まり込むこともあります。私も泊まり込みの当番にあたれば、その状況をフェイスブックでライブ中継して発信するつもりです。日本時間では夜中過ぎになるかもしれませんが。

東エルサレムの危機はこれだけではありません。〔旧市街南東にある〕シルワン村のボテン・アル・ハワ地区の住宅も強制追放の危機があります。〔旧市街東部にある〕オリーブ山にはイスラエル裁判所が1か月以内の撤去を決定した5階建ての家があり、そこの住民の一部はすでに家を去りました。

さらに、エルサレム旧市街のヘロデ門近くの「ヨセフィーイェ墓地」というパレスチナ人の墓地をイスラエルの国立公園にするという決定も出され、工事が始まっています。ブルドーザーで墓を掘り返し、埋葬されていた遺体の骨があちこちから現れ、地元のパレスチナ人たちがこれに抗議しています(『人民新聞』11月15日号コラムに詳細あり)。こうした抗議に対してもイスラエル警官が弾圧にやってきます(以下の動画では「お前たちは公共空間を乱している。2分で立ち去らなければ武器を使用する」と述べている)。

あくどい占領(植民地)政策により、人々の我慢が限界にきています。11月半ばには、旧市街のイスラム教徒地区にある入植団体事務所前で、16歳のオマル・アブー・アサブさんが、ナイフで国境警察官に襲い掛かり、近くにいたイスラエル人入植者に射殺されました。

このイスラエル警官は頭部に軽傷を負いました。警察はオマルさんが暮らすイッサウィーヤ村を襲撃し、オマルさんの両親と兄の身柄を2時間拘束し、尋問しました。これは集団懲罰で、国際法違反です。殺された日は、ちょうどオマルさんのいとこの結婚式の日でした。家族は結婚式を2日遅らせてアザ〔遺族が親族・知人たちと喪に服す儀礼〕を行い、私もアザに参加しました。家族たちのショックは大変なものでした。(人民新聞12月15日号コラムに詳細を掲載予定)

12月4日もダマスカス門付近で、ヨルダン川西岸地区サルフィット出身の男性が入植者に襲い掛かり、その場で国境警察官に射殺されました。ダマスカス門に駆けつけると、事件からすでに1時間経過していました。路面に血痕が残っていて、ちょうど市の掃除車が血痕を洗い流しているところでした。事件直後のダマスカス門前映像をフェイスブックにアップしました。

事件が起きた時、警察や国境警察は逆上した状態で、偶然周囲にいたパレスチナ人歩行者を武器で攻撃しました。音響弾、催涙弾、警棒が使われ、殴られて逮捕された若者が「僕は何もしてないのに、逮捕される!」と悲痛な声を挙げている動画など、集団懲罰の動画が多数のパレスチナ人メディアで拡散されました。私はその場にいなかったのですが、「近くにいて殴られそうになって、走って逃げた。僕は殴られなかったけれど、逃げ切れずに国境警察官に腕をつかまれた男の子は、ひどく殴られていた」などの証言を聞きました。

今度も、この状態は続くように思えます。イスラエルが毎日不当に続ける暴力に、パレスチナの民衆の怒りが溢れて、いつ誰が爆発してもおかしくない、と私には見えます。現在はパレスチナ人のいろんな団体が、イスラエルによる弾圧の光景をフェイスブックなどソーシャル・メディアで発信しています。ですが、そうした発信を行うページが閉鎖される例もたくさんあります。私も現地で撮影した動画をフェイスブックで発信していますが、いつ投稿できなくなるかわかりませんね。そうなる前にぜひいろんな媒体で共有してほしいと思います。

(記事まとめ:金城美幸)

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