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紲星×きりたん百合妄想クソ小説

 11月に降る雨は心悲し。世界をぬらし、雨がふる。暁暮れどもなお止まず...か。寒さに凍えながら私(紲星あかり)は帰路を歩く。
「おっ?」
 公園の東屋に見知った女児を見つける。年相応の背丈に綺麗な黒髪、物騒な包丁のアクセがトレードマークの女児。
「きりたーん」
「あかりさんじゃないですか!」
 嬉しそうにこちらに手を振っている。かわいい。東屋まで私が行くときりたんが困った顔でおずおずと話し出した。
「あの、傘を忘れてしまって...」
「スマホで連絡すればいいんじゃない?」
「その、ソシャゲが...ですね......」
 思わず吹き出してしまった。いかにもきりたんらしい。問題の悪童は恥ずかしいさとバツの悪さで顔をうつむかせながら、耳まで真っ赤である。
「ひとまず私の家で雨宿りしますか」
「いいんですか!?」
 もちろん了承する。心悲しい雨の中、さみしい思いはさせたくない。するときりたんは、いたずらっぽく笑って、
「行きますか、相合傘で」
 この目だ。妖艶で、幼げな小悪魔な目。この目が好きだ、私は。

 家に着くとすぐさま私は暖房をつけキッチンに向かった。
「ねえきりたん、焼きおにぎり何個食べる?」
「どうして食べる前提なんですか、私の分はいいですよ」
 少食だなぁ、と思いながら冷凍庫をあさる。6個しかない...などとがっかりしながら電子レンジに入れてスイッチを入れた。
「あかりさんもココアでいいですよね?」
ときりたんが電気ケトルに水を入れながら尋ねてきた。勝手知ったるなんとやらだ。
「うん、お願い。じゃあずん子さんに電話するから」
 そういいながらずん子さんに電話を掛ける。数コール待ってから透き通る声がでた。
「あっ、あかりちゃん。もしかしてきりたんそっちにいます?」
 まるでエスパーのように状況を察してくれた。この人はそういう人だ。
「お願いなんですけど、イタコ姉様が今トランス状態で手が離せないのでしばらく預かってもらえないですか?」
「あはは、構いませんよ」
「ごめんなさい、そういうことですから、あとで掛け直します」
と急いで通話を切られた。お忙しそうで。苦笑しながらきりたんに通話の内容を伝えた。きりたんは「またか」と呟きながらココアを持ってきてくれた。
「ありがとう」
と私が感謝するとお腹の虫も鳴き出した。
「そっちもいつも通りですね」
きりたんには笑われてばかりだ。少し反撃してやろうと思った矢先、電子レンジが鳴る。焼きおにぎりに救われたな。

 ココアを飲み終え焼きおにぎりもなくなり、私の小腹を多少満たしひと段落ついた。まったりとした沈黙が流れる。日も沈み雨音が聞こえる。
 11月にふる雨は、夕暮れくれどなお止まず。されば乞食の憩うべきベンチもあらぬ哀れさよ...か。暖房の効いた部屋で思う詩歌ではないね。
「この部屋、何もありませんよね」
 きりたんがつぶやく。
「暖房もある、椅子もあるよ。外は雨でベンチが使えないし」
とふざけて返すと、意味がわからないといった顔をしながら
「何言ってんですか、乞食じゃあるまいし」
と、まるで私の心を読んだような返答をしてきて私は爆笑してしまった。
「何笑っているんですか。swichどころかゲームハードが一個もないってことを言っているんですよ。普段何して過ごしているんですか?」
「ゲームはゆかりさんちでやるからなぁ」
「...そうですか」
 あっ、傷ついた顔してる。加虐心が動く。
「きりたんはソシャゲの周回とかしなくていいの?」
「...ッ」
怒るかな。
「充電しながらでもいいよ」
泣くかな。
「せ、せっかく二人いるんですし...」
「うーん、トランプぐらい」
しかない、という前に、
「せっかく!あかりさんと二人で、いるん、ですし...」
 必死すぎ、と心の中で笑った。きりたんの目尻が潤んでいるのが見える。背筋がぞわぞわする。
「うん」
と軽く一言を返すときりたんの顔が近づいてくる。私は目を閉じる。するときりたんの冷たく震えた両手が私の頰を捕まえる、離さないように。唇に湿った暖かい感触とココアの香り。
 二人でいると、間違いが起こる。

 「雨止まないね」
 あれからどれぐらい経ったか分からない。私に抱きつくきりたんの髪を撫でながらそう言った。
 11月に降る雨は、夜きたれども、なおやまず。逢引のみやびおとこも、ぬれにけり。みやびおんなも、ぬれそぼちけり...か。そりゃ濡れるよ。などと余韻に浸っていると腹の虫が騒がしい。
「ごめんね」
と一言断り、きりたんを剥がす。スマホで時間を確認するとずん子さんからメッセージが届いていた。「ごめんなさい、今度ご馳走するので一晩きりたんをお願いできませんか?」とのこと。OKと短く返信してきりたんの方を振り返ると彼女は不機嫌そうな顔で私をガン見している。
「見過ぎじゃない?私の裸」
「別に...寒そうだなって、思っただけです」
 不機嫌な声。終わったあとはいつもこうだ。きりたんは何が不満なのだろう。私と合わないなら何度も誘わないだろう。恋仲でもないのにシてるのが不快なのか?女性同士だから?わからない。なんでもいいけど自分の不満を私に向けないでほしい。要望があるなら口に出してほしい。
「ずん子さんが泊まっていいって言ってるからご飯にするね」
「手伝います」
 相変わらず不機嫌だ。 

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