ところで、パーパス経営ってなんでしたっけ?
B Corp認証取得のお手伝いをするようになってからほぼ3年になるのですが、未だに「やべー、これ知らなかった。今更やん!」って思う瞬間があります。いや、これは一生、そんなことがあるでしょうね。むしろ理解していなくてこれを書いている可能性もあるので、それに気づいた時に穴に入りたくなってしまうと思いますが、不完全だからこそ大切な議論を呼び起こしてくれるのだとすると、勇気をもって書いてみます。
みんな気になるB Corpの新基準
実は、今日新基準について書こうと思ったのですが、最初のトピック「パーパス&ステークホルダーガバナンス」で手が止まってしまったというのが本当のところです。
そうです、2025年からB Corp認証の基準が変わります。
よく言われている「B Corp認証は200の質問に答えて80点取れれば・・」というのが変わるのです。ざっくりまとめると、「B Corpたる企業はこの10こくらいの重要課題について最低限しっかり取り組んでいるよね」を確認する、つまり必須項目が設定されるのです。この10こくらいの重要課題は、現行の自己採点アセスメント・B Impact Assessment (略してBIA)にも含まれているようなことばかりなので、今の基準にしっかり対応していればその延長線で改善していくことになります。
これまでも、B Labの公式なコミュニケーション含め、200問≒200点満点中の80点を取れたら、と表現されているので、「4割か」と思われた方も多いかもしれませんが、実際には前の質問で「Yes」と答えるとどんどん深堀の質問が増えてその分満点もどんどん上がるという仕組みになっています。「No」ばかりが続くとその会社の満点はそもそも130点くらいにしかならず、そのうちの80点をとるので6割がんばらないといけない、いや2割くらいは日本の社会では「うーんどうしても難しい」という設問なので、できることはなんでも取り組む、という姿勢でいかないとなかなか80点取れない、というケースも多々あります。なので現行BIAで80点を目指せていれば、新基準になってMUST項目が設定されるといっても、だいたい既に少しは取り組めているか、少なくとも「やらなきゃリスト」には入っていると思います。
▶︎ B Corpの新基準(2022年秋発表時点のもの)についてはこちら
(次のアップデートは2024年1月頃)
一丁目一番地、パーパスとガバナンス
今年の5月には上記ドラフトに対するフィードバックの結果とそれに対するB Labの方向性についても発表されました。みんな「総論賛成」なのですが、定義がまだまだ曖昧だ、小規模な会社には難しい、点数制を維持してほしい、など様々な意見が出ました。年明けにはそれらのフィードバックを受けて改善されたドラフトが出る予定です。それを見越して、最近B Labが1トピックずつ解説するシリーズが始まりました。
ちょっと日本語でも解説していますので余裕があれば・・。
この解説の順番もまた意図を感じます。新基準の分野名は「パーパスとステークホルダーガバナンス」「公正な賃金」「従業員のエンゲージメント(これは「職場文化」という名称に変更予定)」・・といった感じで、今のアセスメントの出てくる順番に近しいような感じでしたが、もちろん一丁目一番地はガバナンスのあり方、2番目は現行BIAではさほど深入りをしていないが昨今とっても注目度の高い「人権」が出てきたので、「そうきたか」、とマニアックな私は3番目の解説トピックが何なのかを10円賭けてみたくなります(それはおいといて・・)。
それで、「パーパス&ステークホルダーガバナンス」の意図しているところを読むと、①株主の優位性を覆す、②サステナビリティを社内の適切な位置に据える、③グリーンウォッシュへの対峙、なのだそうです。かっこいいですね。
それで中身をちょっとすっ飛ばして、じゃぁ新基準に向けて何を対策すればいいですか、というところで「会社のパーパスをB Corpの法的要件の意図と一致させ、社会や環境にプラスの影響を与えることに貢献できるようにする」とあります。実は昨年秋の時点では、「特定の社会的・環境的な問題(例:気候変動、教育水準の低い人々の経済的安定性など)に焦点を当てたパーパスやミッションを追加的に制定することができる」ということが書いてありました。
つまり、例えば企業全体のパーパスは「〇〇のリーディングカンパニーになる」、で別途環境・社会への貢献ポリシーとして「脱炭素に貢献します・ダイバーシティがんばります」みたいなものがあれば良いのかなというイメージでした。しかし、その後のフィードバックで、「2つパーパスがあっていいんだっけ?」という声もあり、この「追加的に制定可能」を削除することにしたようなのです。
現行BIAの2番目の質問の悩み
そうそう、私がこれまでサポートをする中で、毎回もんもんする質問が早速BIAガナバンス分野・2番目に出てきちゃいます。
「すべてはお客様のために」のようなミッションや社是を掲げている会社って上記の一体どれに当てはまるのだろうか?お客様も大事なステークホルダーの一員。「社会」の1つなのだとすると、それは2番目にも該当するのだろうか?会社が一番大切にする大方針の元に、環境社会方針やダイバーシティポリシーを作ると筋が通って分かりやすくなるのだけど、「お客様第一」「テクノロジーで〇〇」をミッションにする場合に「サステナブルポリシー」がなんとなく取ってつけた感のあるケースもあるがいいのか?
私がヨーロッパのB Corpエキスパートの研修を受けた時に、ゲストスピーカーの1人が「うちの会社はこの質問で得点するためだけにミッションを変えることはしないわ」と言っていて、まぁそうだよなとは思っていました。
一方でサポートさせていただく企業の中には、B Corpになるってことは、社会や環境により良い行動をしていくってことだから、これを機に、この2番目の設問をガイドにしながらミッション改めて作ってみます!という企業もいました。
新基準では、時代の変化に合わせて「ミッション」という言葉が「パーパス」に置き換わったくらいに当初思っていたのですが、それに対する考え方もなんだかアップデートしたようなのです。
「パーパス経営」をググると
ではパーパスとは何なのか。「パーパス経営とは」って、ググると(B Corpな人間ならエコシアる--ECOSIA経由の検索--べきですが、今回は一般的な検索で分かりやすい方を選びました)と、こういう風に出てきます。
概ねその会社が社会に存在する意義を定義して経営を行うといったような感じでしょうか。私もそんなイメージを持っていました。
ちなみに英語で「Purpose driven organization(パーパスドリブンな組織)」でググったらどうなるでしょうか?
3つで少し異なるのですが、概ねパーパスは会社の戦略や業務に結びつく重要なものといった感じでしょうか。
B Labが言っている「パーパス経営」
B Labの記事の中にパーパスドリブンな組織についてこれを参照すると良い、というのがあり、これは実際にB Labイギリス支部もそのガイドライン制作に関わっているのですが、そこにはパーパスドリブンな組織を改めて定義しており、長期的視点で人々と地球のウェルビーイングに貢献する(それが「サステナビリティ」)企業であるとしています。つまり環境や社会にプラスの影響を与える会社がパーパス経営できている会社なのです。
「会社の存在意義をこれまでのビジネスの文脈と今後のビジネス環境から再定義してみました」、「それを経営や事業活動に統合していきます」、ではなく、あらゆるステークホルダーが何を求めているのかを様々な角度から考え、その社会と地球が求める世界にするために自社はビジネスを通じて何をするかを考えるということなのです。それほど、社会と地球が悲鳴をあげていることを認識し、手遅れになる前にマイナスをゼロにするだけでなくプラスの効果が生み出せるようにしなくてはならない、危機感あるメッセージなのだと私は捉えています。
日本ではお客様志向がとても高いです。それは本当に誇るべきことです。いつもこの国に生まれて良かったと感じています。
でも多分、それが資本主義社会の発展とともに行き過ぎてしまって、環境に負荷がかかっていたり、あまりに負の側面が見えなくなってしまっていたり、誰かに何かのしわ寄せがきてしまっているように思います。
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おそらく顧客だけに目線を向けていたら、環境負荷は高いかもしれません。気づかないうちに人権搾取しているかもしれません。お客様のハッピーはもう環境や社会への配慮なしに成り立つことは許されません。
だからといって「お客様志向」を辞めることは解ではないと思います。その視点を生かして、お客様のために特に重要視する何かの要素を地球やサプライヤーに対しても配慮するような方針になっているか、です。そしてお客様、その商品をこだわりもって一緒に作ってくれる仕入先、協力会社、従業員、そのビジネスの脈を生かして何ができるか、です。
「パーパス」と兄弟のように使われる「ステークホルダー経営」は、イメージ的には「様々なステークホルダーの意見を聞きましょう」ですが、B Corpの活動を見ていると、ただ意見を聞く一方向ではなく、こちらから働きかけもしていく双方向であるように感じざるを得ません。
お客様に、従業員に、取引先に、「こっちの方が環境負荷を減らせそうだけどどうかな?」と対話を重ねることを、勇気を持って取り組んでいます。
そして最も大事なことは、多分私たち顧客が、「まぁ地球と社会のためなら、ちょっとこのくらいいいよね」って思えるか、って結構大事な気がしています。
さて、ではいち消費者として今年のクリスマスプレゼントは何にしよう?
よく考えます。