「見せかけの早さ」の誘惑に負けない
特にビジネスの場では「早さは正義である」とされます。
これは本当に正しいのでしょうか。
当然早さはある程度大事
どの会社も何もしていなくても雇用などで支出が発生しているため、売上が発生しなくては、倒産してしまう。
故に早く売上が上がることは生命線であるのは間違いがありません。
当然社員に対してもスピードを求めます。
「見せかけの早さ」を求めてはいないか
社員にスピードを求めるということは、それが評価されることでもあります。
仕事の手際が良い社員や、仕事の進みが早い部署は評価されることが一般的でしょう。
それは社員からすると、自分が早く進んでいるかのように振る舞うインセンティブになります。
また部門長からすると、多少の問題に目を瞑りコトを進める、もしくは現場社員を急かすインセンティブにもなります。
この「見せかけの早さ」を追うことには問題があると考えます。
「今日の見せかけの早さ」が明日の歩みを妨げる
見せかけの早さの問題は、真の早さを妨げることにあります。
パターンごとに考えていきます。
①無理をして、見せかけの早さを作ったパターン
必要処理量/処理ペース=早さ
である時に、負荷を高めることと引き換えに処理ペースを上げた場合です。
個人が無理をした場合にも、チームで無理をした場合も、いずれ何かしらの不都合が生じます。
この見せかけの早さを奨励した場合には、その不都合を招く確率を上げることに繋がり、結果的に早さを失うことになります。
②やるべき対応を省いて、見せかけの早さを作ったパターン
必要処理量/処理ペース=早さ
である時に、必要処理量を減らしたパターンです。
取り返しのつかない要素を省いてしまい失敗に終わる、整理をしないで進めたことで将来の生産性を損ねることが予想されます。
特に後者のパターンが日本企業では軽視されているように感じます。
会社の業務のほとんどは付加価値を生むのでなく、過去の見せかけの速さのツケの返済になっていないでしょうか。
例えば「過去になんとなく決めた業務プロセスを守り続け生産性が低いままになる」「過去に詳細を詰めずに作った業務システムをコンサルに依頼して再構築する」などです。
「生産性向上」と言えば聞こえが良いですが、なんらかのブレイクスルーではなく、過去のマイナスを埋めているパターンも多くあるのではないでしょうか。
反論への反論
私が「見せかけの早さ」と呼ぶものの弊害は認めつつも、良い点もある、つまり見せかけでも早さを作るべき場面があるという考えもあるかもしれません。
その反論を考えてみたいと思います。
反論①やってみなければ分からないこともあるため、早く進めるべきでは
この意見に対しては同意します。
ただし、当初から「未知の領域をまずは経験する」ことを目的に定めている場合に限ります。
無計画で進んでいることの言い訳として、経験の必要性を解くことはあってはなりません。
言い訳で用いた場合には、経験から学習する準備ができていいないためです。
同じ理屈で、言い訳として「徐々に改善する」を使う場合もNGです。
反論②やっぱりゆっくりも良くないのでは
どうしても「早さ」が素晴らしいものだと思い、何よりも優先すべきと考えている状態が考えられます。
この状態では本人たちも意図せず「見せかけの早さ」に陥ります。
これは頑張って思い込みを払拭するしかありません。
「見せかけの早さ」の誘惑に負けないために
早いチームであり続けるためには、見せかけの早さに走らないチームである必要があります。
①トップが「所要時間」ではなく「必要ステップの消化率」でスピードを評価する
所要時間でスピードを評価するとステップを飛ばそうとしたり、リソースを追加してなんとかしようと試みるメンバーが出ます。
「必要ステップの消化率」とした場合、ステップを飛ばすという選択肢は許されません。
なんらかのステップでつまづいた場合も、投下リソースを増やす以外の、つまづいている原因解消のアクションも取りやすいと考えます。
②そもそもの早さの期待値を下げておく
見せかけの早さを求める理由として、そもそもの期待値が高く、それに間に合わせようとしていることが考えられます。
しかしながら、スピードを上げることは元来難しいことです。
複数人で進める場合はコミュニケーションの工数が想像以上にかかりますし、どんなテーマでもある程度の不確実性が想定されます。
故に早さはそもそも手に入りにくいものだと認識しておくべきと考えます。
③「逃げていないか」でメンバーと対話する
スピードを求めなくて良いと発信してはメンバーがサボってしまうのではという不安に駆られます。
これに対しては「逃げていないか」でメンバーと対話することを提案します。
つまり、理想の状態から目を逸らしてスピードを上げていないかを問うわけです。
これはさらに、本当は急げるところをゆっくりやっていないかを問うこともでき、サボりも見抜くことができます。
まだ体力がないチーム、会社の場合は見せかけであっても所要時間を短くすることが求められるかもしれません。
それ以外の体力が少しでもある、今後の長期的な成長を望んでいるチームは見せかけの早さに負けない努力をするべきだと考えます。
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