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2020年12月の記事一覧
掌編小説『ボリュームを落とす瞬間』 Short Story "The Moment of Dropping Volume"
彼は雪国の生まれだった。雪国生まれだというわけでもないだろうが、派手なところはなかった。不要なことは喋らないし笑顔も少ない。嫌う人もいない代わりに人気を集めるタイプでもなかったと思う。都会で満員電車に揺られて出勤するような仕事には、最初から向いていなかったのかもしれない。たとえば山小屋の仕事が向いているかもしれない。山小屋にどんな仕事があるのか私には何もわからないけれど。
そんなふうに彼を思い