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光ファイバコードの曲げ限界を知る!

弊社のデータセンター運用管理部門である、データセンター統括グループに所属しています、大塚舜佑と申します。

本日は本Tech Blogを投稿する機会を頂けましたので、先日弊社部内で実施させて頂きました勉強会「通信ケーブル編」と、「JDCC Future Center」にてプレゼンさせて頂きました内容を掛け合わせて、「光ファイバコードの曲げ半径」をテーマに話を進めて行きます。


1. 光ファイバコードのロステスト

光ファイバコードは、国際規格ITU-T G652にて、曲げ半径が30mmまでで安全に通信ができるように設計されています。つまり、曲げ半径が30mm以下になると、徐々にロスが大きく(=通信上問題が出てくる様に)なってくる、という事です。

ちなみに、接続損失等、光ファイバコードのロスが大きくなる原因は曲げ以外にも様々ありますが、今回は「曲げ」に注目する事にしました。

早速ですが、その影響がどの程度の物なのか、今回は使用頻度の高いシングルモード光ファイバ(SMF)、コア径9μm/クラッド径125μmを使って測定(=光ロステスト)し、最終的には光ファイバコードを折ってみます。

勿論、本検証での数字は、現場における作業を保障するものではありませんので、その点ご注意ください。

(光ファイバコードの曲げを再現)

今回光ファイバコードは、曲げ半径を30、15、10、7.5mmの順で小さくしていき、最終的に折ります。

方法は、それぞれの半径(=Rと言う)で円を書いた紙を用意して、そこに光ファイバコードを当てて実際に曲げて行きます。ここでのポイントは、数mm単位まで正確に曲げるのではなく、簡単に曲げる事により現場と近い感覚で検証を行う所にあります。

(測定結果)

基準値は1310nm:5.28dBm、1550nm:4.79dBmで、実際に測定を行うと、上表のロス結果となりました。

ポイントは、1550nmの方が曲げ半径に応じて値が顕著に悪くなるという事です。
これは、光ファイバコードに「波長が大きくなる程曲げた時に光がコアから漏れやすくなるから」という特性があるからです。

また、弊社現場作業実施時、1310nmでは提供規定値内であるのに、1550nmで測定すると値が悪いという事もあります。ちなみに、その時はおおよそケーブルマネジメント内での曲げが原因で、その曲げを緩やかにしてあげると提供規定値内に収まります。

今回は光ファイバコードを故意に折ってみましたが、測定器の表示はLO、即ち「測定できません(=通信出来ません)」となりました。但し、運用中に光ファイバコードを折るというのはよほど曲げをキツくした時か、ストレスが溜まって「やってしまった」時です。

もっと不注意に「やってしまう」瞬間はいつか。
恐らく、ラック開閉時の光ファイバコード挟み込みによる瞬間だと思います。

そこで今回は、上記の曲げ測定の番外編として、ラックの扉(現在未使用のラック)にも挟んでみました。
光ファイバコードをラックの扉に挟むポイントは、もっとも光ファイバコードが飛び出しやすい扉の端です。また、基準値は先程の曲げ検証時と変わらず行います。

(光ファイバコードをラックの扉に挟んでみる。右画像:1310nmで測定中 左画像:1550nmで測定中)

実際に測ってみると、予想していた「こんな悪くなるんだ!」「これはラックの扉に挟んだら大変だ!」にはなりませんでした。

勿論ラックの型番、光ファイバコードの外径によっても結果は違いますので「たまたま今回は」です。志操堅固、ラック開閉時の巻き込みに気をつけなくてはならない事に変わりはありません。

2.外的ダメージが見える化したら安心

ここまで、光ファイバコードの扱いにおいて、いかに曲げに気を配らなくてはならないかを記載してきました。

(光ファイバコードの構造)

シングルモード光ファイバコードのコア/クラッドは石英ガラスで出来ていて、直径およそ9μm/125μmです。例えばスギ花粉なら、1粒の直径は40μm程ですので、どれ程細いガラスなのかはすぐわかると思います。

ですから光ファイバコードは、銅線のUTPケーブルに比べ大変繊細に扱う必要があります。

ちなみに、世の中には曲げに強い光ファイバコード製品(曲げフリー光ファイバコード@NTT/タフライトケーブル@SEIオプティフロンティア等)も沢山あり、日夜光ファイバを強くする研究は行われています。

では、例えば曲げに強い光ファイバコードを使って、100%それを信用して運用する事がデータセンター事業者の運用かと言われれば、弊社としてはそれは違うと思っています。これは、常に安心安全な運用を心がけ、それだけを信用せずに敷設時から綺麗に、安全に行う事(ケーブル管理含む)が、日々のお客様運用に役立っていると思うからです。

ですから、「曲げに強いならテキトーに敷設します」「テンションに強いならm数間違えて買っちゃったけどピーンとさせてm数稼いじゃいます」という、「強い光ファイバコード頼り」ではいけないという事です。

とは言え敷設作業をはじめ、データセンター運用の殆どは人間の手で行いますから、どんなに注意をしていたとしても「気づかない内に…」は十二分に有り得ると思います。

また、経験が物をいうこの業界では、新人では曲げに対する判断が怖い場面も多いかと思います。

これらを背景とすると、奇想天外な案ではありますが、曲げに対するダメージを光ファイバコード自信が教えてくれたら運用はもっと、安心安全になると思いました。

例えば、光ファイバコードの外皮(=シース)の色が、曲げ半径の状況によって色が変わる仕様ならどうでしょうか。

現在の曲げ半径を、シースの色が変わる事によって、光ファイバコード自身が教えてくれるイメージ図。例えば、R=15は青色、R=7.5はオレンジ、折れていると赤、など。また、曲げが解消されると緩やかに元の色に戻るが、R=0では色は戻らない。…という構想です…。)

現場で敷設された光ファイバコードのシースの色変化を見れば、目視だけで「うわ!ここR=7.5まで曲がってる!」という判断が出来る様になります。

運用が始まってからも、万が一知らない内に曲げが大きくなってしまった光ファイバコードがあったとして、巡回時には目視だけで危険な曲げ半径の光ファイバコードに気付く事が出来ます。
また、新人が可視光を見る為に光ファイバコードを曲げた際「シースがまだこの色なら大丈夫だ」という安心材料にもなります。

更にはケーブル納品時、「あれ、すでにここ、色変わってるんだけど?」という、納品された側でも検品ができる様にもなります。

但しこの案は、あくまで外的なダメージ、要は光ファイバコードをこれくらいまで曲げると危険かもな?を目視で察知できる様にする事、大きく言えば我々運用する人間の曲げに対する意識を高める事が目的であり、実現したとしても、運用ではパワーメーターによる測定は必要です。

なぜなら先述しました通り、光ファイバコードのロスが大きくなる原因は曲げ”だけ”ではないからです。
また、「既存のケーブルより高価になったら結局使えないじゃないか」という議論も、今回は大目に見るという事でお願い致します。何せ、あくまで奇想天外な案なので。

…という話を、先日「JDCC Future Center」にてプレゼン(ライトニングトーク)してきました。
ケーブルメーカさん、いかがでしょうか…?

本記事は、以前にブロードバンドタワーのエンジニアブログ『 Tower of Engineers 』で公開されていた記事をnoteに再投稿させていただきました。

過去のものではありますが、皆様に再び楽しんでいただけると嬉しいです。これからも、価値ある記事や興味深い内容を、noteでシェアさせていただく予定です。どうぞ楽しみにお待ちください。

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