エルシャラカーニ単独ライブ用コント【記憶喪失】

エルシャラカーニ単独ライブ用コント【記憶喪失】



山本、板付き。頭に包帯を巻いて上手のイスに座っている

明転

清和、下手から登場
清「しろうが交通事故で入院したって聞いたけど、あいつ大丈夫かなあ」
清和、病室に入るマイム
清「よう」
山「え、あ、おはようございます」
清「なんや意外と元気そうやな。お前全然平気なん?」
山「あ、はい」
清「明日の事務所ライブどうする?いける?」
山「事務所?ライブ?」
清「いや明日GETライブやん。お前が事故に遭ったってまだ公表してへんねん」
山「公表?え、GETライブって何ですか?」
清「は?」
山「ていうか、どちら様ですか?」
清「…清和や!相方の清和や!」
山「相方?」
清「お前完全に記憶無くなってもうてるやん!」
山「え、僕誰ですか?」
清「しろうや!山本しろうや!」
山「やまもと?しろう?」
清「うわー、明日のライブ絶対アカンやん」
山「あの、さっきからライブとか相方とか何のことですか?」
清「あー、えーとな。お前と俺はコンビやねん。コンビでお笑いやってんねん」
山「え?お笑いって僕芸人なんすか?」
清「せやねん。お前芸人やねん」
山「嘘だあ。僕が芸人なんてできるわけないじゃないですか」
清「うん」
山「だって僕全然面白くないですよ」
清「せやねん。お前全然おもろないねん。でも芸人やねん」
山「いやいや~。面白くないのに芸人なんてできないでしょ~」
清「いや、できんねん。決して面白くはないけど、なんとかやっていけてんねん」
山「ホントは僕官僚とかなんじゃないですか~?」
清「それやったらこの国終わってしまうわ。とにかくお前は芸人やねん。芸人しかできんねん」
山「芸人しかできないって、なんか真の芸人みたいで目茶目茶かっこいいですね」
清「うん。ただ普通の仕事無理なだけやねんけどな」
山「でもまだ信じられないですねー、自分が芸人なんて」
清「ホンマやねんって。もう15年やってんねんから」
山「15年!?僕15年も芸人やってんすか?」
清「せやねん」
山「でも僕、面白くないんですよね?」
清「せやねん。何度も言うけど、全くおもろないねん」
山「それでも芸人なんすよね?」
清「それでも芸人やねん」
山「ちょっと何言ってるか全然わかんないですね」
清「それいつもの俺の台詞や」
山「え、どういうことですか?」
清「あー、なんでもない。説明がややこしい」
山「いや、でも、15年やってたら少しは面白くなるでしょ~」
清「残念ながら、一向にならへんねん」
山「…なんかすんません」
清「…ええねん別に。俺もわかってて一緒にやってんねんから」
山「え、一緒にやっててしんどくないですか?」
清「…それ言われて俺何とも言えんわ。とにかく俺らはコンビで芸人やってんねん」
山「へー。あ、名前は何て言うんですか?」
清「エルシャラカーニや」
山「何すか!エルシャラカーニって!変な名前ですねー」
清「俺の姉ちゃんの旦那のエジプト人の名前や」
山「…なんかすいません、親戚の人を馬鹿した感じになってしまって」
清「…まあ別にええねんけど」
山「え、プロとしてやってるんですか?」
清「そうや。ちゃんと事務所も入ってんねん」
山「ソーレアリアですか?」
清「それ知ってんねんな。逆や。サンミュージックや。逆でもないけど」
山「あー!」
清「どうした!?何か思い出したか?」
山「サンミュージックって言ったら、のりぴーと同じとこじゃないですか!」
清「それ言ったらアカンやつや!」
山「え、どうしてですか?」
清「それも覚えてないって、お前相当重症やな」
山「じゃあ、どんなネタやるんですか?」
清「まあ、基本漫才やな」
山「え、やすきよみたいな感じですか?」
清「そういうのは無理やねん」
山「ツービートですか?」
清「それも無理やねん」
山「B&B?」
清「何やお前、実はそういうのに憧れとったんか!」
山「え、どんな漫才なんですか?」
清「…こんなにも説明に困るとは思わんかったわ」
山「じゃあ、僕はボケですか?ツッコミですか?」
清「ボケや」
山「へー。意外ですねー。ツッコミかと思ってました」
清「どこでどう判断したんや」
山「え、どんなボケするんですか?」
清「どんなボケって、基本何喋ってるかわからへんねん」
山「いやいやいや、何喋ってるかわかんなかったら、全然話進まないじゃないですか!」
清「そうやねん。だから全然話進まへんねん」
山「大変ですね~」
清「完全に他人事やな。お前ホンマに何も思い出せんの?」
山「はい、ちょっと」
清「あ、そうや。これ見てもか?」
清和、紙袋から赤いタンクトップを取り出す
山「何すかそれ~!目茶目茶ダサいじゃないですか!」
清「お前の舞台衣装や!」
山「え?僕こんなの着て舞台に立ってるんですか?」
清「そうや。あと白いパンツや」
山「いやいや、赤いタンクトップに白いパンツて。欲張り過ぎでしょ~」
清「知らんわ!お前が勝手にそうしてんねんから」
山「漫才師はスーツでしょ~」
清「だからそういうのじゃないねんって。お前、脈絡無く一発ギャグとかすんねんぞ」
山「え、どんなのですか?」
清「どんなのって、え、俺がやんの?」
山「だって僕わからないですもん」
清「いや、でも俺のじゃないし…」
山「でも見たら思い出すかもしれませんよ」
清「…そうやな」
清和、何か適当にしろうの1発ギャグ
山「全然面白くないんですけど」
清「お前のや!」
山「今のどういう意味ですか?」
清「知らんわ!それより何か思い出したか?」
山「いや全然ダメですね」
清「俺ただのやり損やないか」
山「他にないんですか?」
清「もうええやろ」
山「やって下さいよ」
清「ええって」
山「いや、やって下さいよ」
山本、清和に詰め寄る
清「やらんって!」
山本の胸を突き飛ばす
山「モン!」
清「…お前今の、『モン!』やないか」
山「何すか?モンって」
清「お前の1発ギャグや。ちゃんと体が覚えてんねん」
山「どういうことですか?」
清「自分の胸叩いてみい」
山本、自分の胸を叩く
山「モン!」
清「ほら、覚えとるやないか」
山「ホントだ。勝手にモンって。ていうか何すか?モンって!」
山本、興味本位で暫く『モン!』を続ける
清「ちょっと、ジャンプしてみい」
山本、ジャンプする
山「あこがれジャンプ!何すか!?今の!」
清「それが『あこがれジャンプ』や」
山「どういう意味ですか!?何にあこがれてるんですか!?」
清「好きな食べ物は?」
山「トマト!何すか?トマトって!僕トマト好きなんですか!?」
清「全部お前の1発ギャグや」
山本、再度『トマト』から3つぐらい連続で違う1発ギャグ
清「どんどん思い出してきてるやないか!」
山本、新しい1発ギャグ
清「俺も知らないやつや!そんなの隠しとったんか!」
山本、確認するように1発ギャグをいくつか連続でやったあと訝しげな顔で沈黙
清「どうした?何か思い出したか?」
山「…1個も面白くないんですけど」
清「…せやねん」

暗転

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