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【映画鑑賞】2023年1月(10本)

今年は映画を沢山見ていこうと思う。癌罹患者はオフラインや盛場には出られなくなる。でも今はオンラインで映画をどっさり観られる。コロナ禍でお見舞い客は来れないがこのオンライン文化は癌サバイバーや癌患者にとってもプラスでしかない。という事で今月見た映画のベスト10である。

【第10位】コーチカーター(2005年)

Netflixで視聴。きっかけはVoicy fesでファンになったニシトアキコさんが話されていて観る気になった。

内容はありきたりのスポ根ものでやたらとダッシュと腕立てを罰としてやらせるのはどうかなと心配にはなった。

この作品はMarianne Wiliamsonの以下の名言を放つ為だけに存在している。

「最大の恐怖は自分が無力と知る事ではない。最大の恐怖は自分の計り知れない力だ。恐ろしいのは自分の闇ではなく光。(中略)自分自身を輝かせれば自然と周りも輝き始める。恐怖から解き放たれれば周りのものも解き放つ事になる」

Our deepest fear is not that we are inadequate.Our deepest fear is that we are powerful beyond measure.

問題児クルーズが語るには余りにも唐突過ぎる気はするがね。

【第9位】画家と泥棒(2020年)

Netflixで見たノルウェーのドキュメンタリー。でもこれドキュメンタリーなの?嘘でしょ。

でもどう見てもドキュメンタリーだな。
この画家の女性が絵を描く時の凛とした佇まいに見惚れてしまう。絵を盗んだ泥棒とその画家が何故か仲良くなってその交流が延々と描かれる。

退屈だなと思いきやラストを見て顎が外れそうになった。人間関係の業の深さというか正直自分の理解を超えていて凄いものを見た気がした。

これを表現する感想がどうにも思いつかない。。

【第8位】ファイアーオブラブ(2020年)

今まで世界中を旅行してきて砂漠、海、大草原、オーロラなど色々見てきたけど火山を観ていない事に気がついた。火山はまさに地球が地底で生きて呼吸をしている事の証であり火山の噴火は何か途方もない生物が蠢いているように見えた。

クラフト夫妻はフランスの火山学者であり40代後半にして1991年の雲仙岳の調査中に火砕流に巻き込まれて亡くなっている。子供を作らず火山を愛し理解する事に生涯を捧げた彼らの生き方はきっと当時はとても風変わりな生き方だったのだろう。

不謹慎かもしれないが常に2人で寄り添いながら仕事をしていた彼らにとって愛する火山と一体化する死に方は本望だったのかもしれない。そこに言いようの無い業や美しさは感じる。

彼らの言うように人間の一生など火山の大きさ、豊かさ、謎からみれば微々たるものに過ぎない。その脅威に打たれる事で生きていると感じるのかもしれない。

死ぬまでに火山を見に行ってみたいものだ。

エチオピアのエルタ・アレ火山

【第7位】シンプルフェイパー(2018年)

Amazon Primeで視聴。綺麗な豪邸、ゴージャスな食事、美男美女の共演なのに裏も表もある女性どおしのやり取りが最高だった!

偽善で塗り固められたリアリティのない物語を見せられるなら悪女どおしの丁々発止のやり取りを見ていた方が良い。いらっとさせられる見かけの聖女のステイシーと触ると沼りそうなエミリー。

マイレージマイライフで初々しくも有能な新人を演じたアナケンドリックも主婦役が板についてますな。ブレイクライブリーも最高や。

ゴーンと似ていると言われていたけどSearchという映画にも似ているらしくこれは観ていこうかなと。 

ポールフェイグ監督は最強の二人のリメイクで「The upside」というクソ映画を作ったがこの映画は良いね。

【第6位】ベルファスト(2021年)

この映画は凄く評価が分かれると思う。

ケネスブラナーの故郷北アイルランドのベルファストで過ごした日々を描いたもの。

どんな人にも子供時代はある。時代は1969年という古き良き時代。近隣にお爺ちゃん、オバァちゃんがいて駄菓子屋みたいな店があって近所付き合いがあり近隣に色々な人達がいて皆んな顔見知りという原風景。

自分は少しその時代感覚はズレているものの古き良き時代を思い出したし小学校時代や初恋の人や近所の悪ガキや万引きが流行っていた事や初恋を思い出した。でも私はこの映画に出てくるバディほど自分は全然お爺ちゃん、おばぁちゃん思いでもなかった。どちらかと言えば遠い存在に思っていたし早く家を出て行きたかった。引っ越したくない!と駄々をこねるくらいの郷土愛は皆無だった。可愛くない子供だっただろうな。

そういう濃密な少年少女時代を過ごした人には郷愁を喚起させる力があり刺さるがそうでない人には刺さらないだろうな。

【第5位】ミッドサマー(2019年)

この映画は宗教、異文化交流、共依存、人類学、恋愛色んな側面を持っているがそれを少しぶっ飛び過ぎた表現をしているので笑ってしまう。悲劇は喜劇である。

気持ち悪いし一言で言えば胸糞だし感情を余りに負の方に揺さぶり過ぎる。ただ見終わった数日後からジワジワくる。そんな映画。

てもこの監督にしてみれば賛否が出るものを意図的に作ったとも言える。

アリ・アスター監督はこの主人公の女の子ダニーと同じく身内に不幸がありウジウジしていたらその時付き合っていた彼女に振られてしまったという事があったそうだ。ああ、それには共感できるなと感じた。こういう作品を作り出す事が監督にとって癒しなのだろう。表現でしか救われない思いがある。特に大学生みたいに若い子にとって彼女との付き合いは楽しいから付き合うみたいなのが殆どで面倒くさいなのが殆ど。

ダニーみたいな人、クリスチャンみたいな人特別に良い人でもなければ悪い人でもないそんな人が普通なんじゃない?

でこのスウェーデンの山奥の地域で起こっている風習みたいなのは大昔ならあり得た話。姥捨山みたいなのもあるし、時間に対する感覚、宗教心、結婚やセックスに対する感覚はタイムスリップさえ出来ればどこかの世界にはあったはず。

ボルガ村では72歳までを人生の春・夏・秋・冬に分けていて72歳以上は自ら死を選ぶ。時間を円環として捉え、又死んで生まれ変わり円環を成す。これは人生を生きる上で有用な知恵とも思え興味深い。 

多様性や異文化の世界を受け入れるというのは簡単ではない。でも今持っているのは今この時代のこの国に生きているから得ている価値観であり結局社会的負荷によるものが大きい。ひいてみてクリスチャンよりペレみたいな人どっちが良いかとなるとうーむと言わざるを得ないもん。

この映画を通してあるテーマが「共依存」でこれを取り除くのはまた難しい。だって殆どのサラリーマンは会社に「共依存」している。ダニーは天涯孤独になって彼氏のクリスチャンに依存していた。でも彼女は最終的にこの村の文化、コミュニティに依存先を変えたという事だけだから。

【第4位】パーフェクト・センス(2011年)

コロナ禍を示唆するものではなくコロナ禍でも今なお失った感覚や議論を想起させてくれる映画だと思う。

生きる事とは半分以上はイコール「感じる事」である。それは癌サバイバーだからこそ痛く感じる事。視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚。

この映画の中では人々は嗅覚、味覚、聴覚を失い最後に視覚を恐らく失った所で映画は終わる。最後は唯一触覚だけが残るのだろう。今現在当たり前だがコロナ禍だからといっても、この五感を失ってはいない。しかし余りにも軽視されている。そして正常な感覚機能を失いつつある。

汚いものや嘘を見せるし見せかけの旨さを提供するし汚い言葉を吐く事に無自覚な人が多過ぎる。健康とは五感がちゃんとしている事が一つのファクターだがフィットネス業界は筋肉に過剰に意識が行き過ぎている。

失ってはじめて有難さがわかるし生きている事や残存資産を丁寧に扱おうとする。だがそれもこの映画の描く通り二極化のある話だ。

【第3位】スタッツ 人生を好転させるツール(2022年)

良いタイミングで良い映画に出会えたな、と思う。俳優のジョナ・ヒルと精神科医のスタッツ博士の対話が続くドキュメンタリーだ。

自己のメンタルをどう扱うか客観視するかというのは学校で習わない話でしかしながら人生の何処かで出逢わなければいけない話やと思う。

以下はスタッツのツール、方法論だ。

①まずは何はなくとも生命力(life force)を。

②人生はネガティヴな面と闘う必要があり、それが物語を作る。だがそれは3つの側面を持っている。Pain(痛み)、Uncertainty(不確実性)、Constant work(継続的な努力)だそうだ。

③人生の物事は真珠の連なり。

④The shadow 人は必ず黒歴史を持っているそれをどう扱うか。

⑤過去に固執するな。執着、怒りを忘れて許せという訳ではない。ただ人生に対する全体性を失うなという事だ。

⑥Active love 

⑦Radical acceptance

⑧The grateful flow
→感謝してる状態が雲を突き動かす。

⑨Lose process

自分自身や世の中への思い込み、固定観念、執着が人を心の病に引き込み行動へと移せなかったりする。ジョナのような成功した俳優でもここまで成熟しつくした一流精神科医の弱さや前へ進もうとするプロセスには感動する。

2023年もう一回見るべき映画かもしれない。

【第2位】ホノカアボーイ(2008)

すごーく良かった。
日本映画も捨てたもんじゃないと感じた。

今しみじみ感じるのは人生にはスローダウンする時間が必要という事。それは別に歳を取ったからとか若者だからという事ではない。それは単純に激しい人間関係で心身ともに消耗するから癒やす必要があるということだけではない。それは感覚世界で感じる世界がスローダウンにより蘇るという事。

この映画ではびっくりする程スローで何も特別な事が起こらない。余計な描写や過度な展開がない。だからこそハワイのホノカアの微風、自然、街の息遣いをこの映画から感じる事が出来る。サトウキビの甘い香りさえ気のせいか嗅ぐ事が出来る。スローダウン。この映画では登場人物は余り動かず居眠りをしまくっている。

ホノカアでは死者が風になると言われている。この映画の中で死んだコイチお爺ちゃんやBeeおばぁちゃんが当然のようにレオに見えるのも、月の虹を見るのもスローダウンして感覚が復活させたからだろう。

何も起こらない映画なのだがたまに含蓄のあるセリフを放り込んできてそれが胸に染みる。ヘハレキノカ。肉体は言葉や思いの家でしかないという言葉。だからハワイの人は生き急がないしあくせくしない。あくせくしているのは休暇で来ている旅行客ぐらいだ。

ビーおばぁちゃんが昔亡くした旦那にレオを重ね合わせて恋心を抱くのはちょっとゾッとさせられるけどコイチお爺ちゃんのいうように人間幾つになってもやってはいけないという事はないだろう。

長谷川潤可愛かったなぁ。やっぱりハワイの海は似合う。こんな彼女を20歳の時に欲しいよね。とはいえこの展開で少し、というかこの街に浮いている感じはしたのでレオと離れたのは展開、物語としては1番良い落とし所だっただろう。とはいえあの展開では完全に彼女じゃんと思ったけど。倍賞千恵子さんは昔トラさんシリーズの妹さくらのイメージだけどしっかりおばぁちゃんになったなぁ。時の流れを感じる。

【第1位】ボイリング・ポイント(2021年)

素晴らしい群衆劇。

流行りの煌びやかな一流レストランの人模様を長回しワンショットで90分見せ続けてくれた。

酒浸りのだらしないオーナーシェフ、有能な女性サブ、一見有能だが少し高圧的な女性支配人、慣れない調理場、洗い場の人、少しチャラついたウェイター、ウェイトレス。客はインスタグラマー、愛人を連れた有名シェフ、プロポーズをする予定のカップル、マフィアのような強面のクレイマーぽい客など。

この限られた時間でそれぞれの人物のプラスの部分、マイナスの部分、光と影をそれぞれの会話、絡み合いを会話のみで描き出している。まるで観ている側は透明人間になって自由に覗いているようなゾクゾク感がある。

最後のオチはえ?という感じだがそれ以外は本当にずうっと観ていられるほど素晴らしい。

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