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厚みあるペルソナへの仕上げ方 キャラクター作りの視点から

前回の記事で、筆者なりの「ペルソナの作り方」に言及しましたが、実際にアレだけでは物足りないだろうなぁ、などと思いながら、オウンドメディアの方では「魅力」に関する記事を発信したのですが、ペルソナに関連しそうなお話も出てきたので、今回はそこに焦点を絞ってお伝えします。

ペルソナを作ったは良いものの、それが本当に使えるペルソナかどうかが分からない。もっと良いペルソナにしたいけど、何から手をつければ良いか分からないし、どこを目指せば良いかも分からない。
そんなアナタに、筆者なりのブラッシュアップ案もお伝えしましょう。

下手の横好きで作劇、創作活動にも勤しんできた素人の意見ですが、少しでもご参考になれば幸いです。それでは早速、本題に参りましょう。


キャラクター造形の手法を引っ張り出してみよう

前回の記事や、ちまたの参考記事、書籍等を用いてペルソナを作ったとしても、そこからどうすれば良いか分からない、という方は多いのではないでしょうか。
マーケティングに活用するにしても、イマイチ使いにくい。そういう時は、ペルソナの作り込みが不十分で、何らかの情報が足りていない可能性、あるいはペルソナへの解像度が低い可能性があります。
「そう言われても、現状からどうすれば良いか分からない」、というのもよく分かります。ペルソナ作りに精通している人の方がレアでしょう。

小説を始めとする様々な創作活動にも取り組んできた筆者としては、ペルソナと近くて遠い存在である「キャラクター」関連の手法を持ち出すのが良いのでは、と何となく考えています。それも、「魅力的な」キャラクターの作り方や、作者の意図を超えて「勝手に動く」レベルのキャラクターを生み出す手法は、マーケティングにおけるペルソナ作り、あるいはそのブラッシュアップにも応用できるはず。

もちろん、ペルソナとキャラクターは活用する場面や役割が微妙に違いますし、キャラクターと違ってペルソナは別に「魅力的」である必要もありません。
ただ、「架空の人物」を具体的に落とし込んでいく、情報の塊を通じて「一人の人間」っぽい質感、親近感や憧れを持たせた方が良いという意味合いでは、重複する部分もかなりあるのでは?

また、キャラクター造形やキャラクターデザインという言葉、特に視覚優位の媒体で用いられることが多いので勘違いしがちですが、「人格」+「造形」や「設計」なので、登場人物の容姿や服装、作画のタッチと言った見栄えだけでなく、その外見を構成するに至った背景、人格形成も対象になるのがキャラクター造形、キャラクターデザインなので、ペルソナの場合も「そのペルソナ」に至った背景も含めて考えていくことになります。

前提を整理したところで、中身へ入っていきましょう。

小池一夫、大塚英志の著作や、各種のマンガの描き方を読め

いきなり他人任せで申し訳ないですが、筆者は誰かに高説を垂れるほどの人間ではないので、まずはキャラクター造形の第一人者と言っても良さそうな小池一夫氏の『小池一夫のキャラクター創造論』

や、『ストーリーメーカー』等でお馴染みの大塚英志氏の『キャラクターメーカー 6つの理論とワークショップで学ぶ「つくり方」』、

関連書籍で出てくる書籍、特に漫画家の大家による「漫画の描き方」系の著作はインプットしておくことをオススメします。

各種シナリオ術や、小説に焦点を絞ったノウハウ本もありますが、マンガを軸にキャラクターに関する情報をインプットした方が読みやすい上に深掘りもしやすいでしょう。書き手の名前でパッと手に取りやすいのも、小説系よりは売れっ子漫画家さんじゃないでしょうか。

自腹を切って買った方が身につくと思いますが、この辺りの書籍なら図書館でも蔵書があったりするので、一読をオススメします。その上で、自分が作ったペルソナと向き合うと、何をどうすれば良いかもぼんやり見えてくるのでは?

「丸くなるな、星になれ」なんだけど、円形を目指す

長所も短所もある、凸凹な二面性が個性になるからと、サッポロ黒ラベルのキャッチコピーでもある「星」を目指してスター性を持たせるのも大事な方向性ですが、同時にキャラクターとしては「円形」も目指しましょう。

キャラクター造形というよりはシナリオ作劇のお話ですが、登場人物を大きく3つに分類した場合、「円形人物(ラウンドキャラクター)」、「半円形人物(セミラウンドキャラクター)」、「扁平型人物(フラットキャラクター)」の3種類が存在し、主役に当たる人物は基本的に「円形」として作劇します。

半円形が脇役、扁平型がワンポイントのエキストラやモブで、どんどん見える部分、描かれる部分が狭まっていきます。円形人物はその逆で、脇役、ワンポイントの人物ではスポットが当たらない部分まで丸ごと描き、その感情の起伏や数々の困難に立ち向かう様子、クライマックスで何かを成し遂げた後の達成感や歓喜、成長やその奇跡を見せていく役割を担います。

一瞬のシーンを切り取ったワンシーンでは、単純に二面性を持たせておく、例えば影では動物に優しいヤンキーとか、優等生のはずが裏があるとか、で十分ですが、それだけでドラマを持たせるだけの円形人物にできるかと言えば、そうではありません。

生活や暮らしぶりを具体的に描く場合もありますし、立場が変わった場合の立ち居振る舞いというのも事前に検討しておかなければ、せっかく作り込んだキャラクターだというのに、ブレブレになる可能性は十分あります。

ペルソナも同様に、サクッと考えて作った部分、見えている部分だけでは恐らく扁平型、奥行きも幅もない一側面だけの人格だと思うので、「マーケティングとしては使わないかも」という部分、見えなくても良い部分までしっかり作り込んで、キャラを立たせるようにしてみましょう。
キャラ立ちが不十分だと、常に作者に都合よく動かされるだけの人物、マーケティングの場合は事業者の机上の空論をなぞるだけに役に立たないペルソナ、になりがちです。

マーケティングでの考え違いや誤りをできるだけ小さくするためには、扁平な一面や、長所や短所、二面性といったワンショット、ワンシーンの切り取りだけでなく、人として立体的に、厚みのある円形型を目指すようにしましょう。

具体的な居住地や履歴書、生年月日や家族構成も決める

「キャラクターの作り方」や「マンガの描き方」の書籍にも出てくると思いますが、そのキャラクターを作り込むのに、履歴書や経歴書を作るというのはオススメです。
マーケティングで用いるペルソナの場合、居住地や学歴は現実にあるものを参考にする他ないはずなので、完全に架空のフィクションのキャラクターを考えるよりも、いくらか書きやすいでしょう。

特に居住地や家族構成、居住の履歴はキャラクター以上に重要です。
カスタマージャーニーや具体的な広告施策を検討する上で、デモグラフィックの一角をなす要素ですし、どこから来てどこへ帰るのか、具体的な導線を考える上でも欠かせないファクターです。そこの地域や住居を選んだ理由も、ペルソナの優先順位や思考形成に関わる部分なので、想定している家族構成や家賃相場と睨めっこしながら、より妥当な居住地、何故そこを選んだのかも、ハッキリさせましょう。

家族構成は、今一緒に誰と住んでいるかも重要ですが、父母のルーツ、配偶者がいるならその両親、あるいは祖父母がどういう経緯、どういう来歴でそのペルソナに至ったかも考えておくと、学歴や職歴を考える上でブレを少なくできるかも。

学生時代の部活や今現在の趣味に、父や母の影響はあるでしょうし、親子三代でその土地や地域に定住しているのか、そうでないのか、そうでないならどういう経緯で転居したのかというのも、本人の人生や親戚付き合いに大きく影響するでしょう。子供やペットとどう向き合っているのか、という部分にも現れるはず。

生年月日と社会的な出来事の照合もきちんとやっておくと、ある程度想定した偏差値や学歴、職歴や可処分所得といったものも、推測がしやすくなります。使えそうなものは何でも導入して、アナタのウソに現実味を帯びさせましょう。情報量が増えれば増えるほど、「本当にそんな奴いるか?」と客観視もしやすくなります。

誕生日や血液型なども設定して、何となくの性格も想定しておくと、アナタが適当に作り出したペルソナであっても、マーケティング施策に対して一人で勝手に動き出し、リアルで精度の高い反応を見せてくれるかもしれません。

「勝手に動いてくれる」まで情報を足せ!

紙とペン、あるいはパソコンさえあればできるレベルの創作活動であれば、作り込みの甘いキャラクターを物語に投入して、パンツィングスタイルで描きながら考える、具体的に動かしながら作り込むこともありますし、息の長い漫画や小説原作のアニメの場合、アニメから逆輸入でキャラクターの設定やキャラクターそのものを取り入れることもあると思いますが、マーケティングで用いるペルソナの場合、まずあり得ないでしょう。

マーケティング施策や事業者都合で振り回しても、それでは本末転倒です。ペルソナの場合、ペルソナに合わせてカスタマージャーニーや施策を考える必要があるからです。つまり、可能な限り事前に(それもできれば客観的に)作り込んでおく必要がある、とも言えます。

「勝手に動く」レベルでペルソナを作れていないなら、周囲の情報をどんどん付け足していきましょう。学歴や職歴、想定している生活水準が曖昧ならもっと具体的に、一日の生活サイクル、1週間の生活スタイル、平日や休日の過ごし方、朝昼晩にどんなものを食べがちかなど、明確にしてみては?

一緒に過ごす人がいる、あるいは両親がいるのなら、そこを明確にしてみるというのも一つの手段です。妻や夫の人物像、所属や所得、性格や優先順位を設定してみたり、親や子供との関係を言語化してみたり。親や子供も扁平型から円形人物となるレベルまで情報を具体化、付け足してみる。キャラクターと違って、ペルソナは架空とは言え生活者ですから、一面的でペラペラな都合の良い人物にはなりません。全てが円形の主役です。現在対象となっているマーケティング的には脇役であっても、必要なら情報を盛り込みましょう。

勝手に動いてくれるレベルまでペルソナを作り込めれば、きっと部分部分で身近な誰かに似てくるはず。全てが同じにならなくても、「女子高生」とか「男子学生」とか、「主婦」ぐらいの荒い分類、属性や要素だけなら重なる可能性も出て来ます。

ペルソナだけで難しいマーケティング施策の検討も、部分的に重複しそうな要素を持つリアルな人物がいるのなら、「どう思う?」と質問をして、ヒントを得ることも出来るかもしれません。ペルソナの作り方や使い方としては間違っているかもしれませんが、「似ているアイツ」が思い浮かぶのなら、その意見は有益なものになり得るでしょう。

どうしても主観的な妄想に陥りがちなペルソナ作りですが、思いつく限りのウソをぶら下げれば、現実味は徐々に増していきます。厚み、重み、存在感を感じられるところまで、現実と紐付けてしまいましょう。

使えるペルソナ作りは、魅力的なキャラ作りでもあるかも

作者がきちんとキャラクターを理解して、キャラクターを作り込めていれば、キャラクターは勝手に動き出してくれますが、不十分な場合、作者の都合で無理やり動かすしかありません。それが上手な作者なら良いですが、大抵はキャラクターの行動原理や心理的に無理や齟齬を生じるケースが多く、無理がある展開や不自然な展開が積み上がり、キャラクターの魅力が乏しいだけでなく、ストーリーテリングにも問題のある作品、総じて面白くない作品になりがちです。

もし、アナタのマーケティングやブランディングが円滑に進まない、思ったように伸びないなら、そこで用いているペルソナが、作者都合、マーケティングを仕掛ける側都合で振り回されてくれる、正しくないペルソナ、なのかもしれません。商品やサービス、ブランドの魅力を減衰させているのは、ペルソナを扁平型に留めているから、かもしれません。

魅力的な作品には魅力的なキャラクターが欠かせないのと同様に、良質なマーケティング、ブランディングにも、精度の高い円形の主役、作者の手を離れて独り立ちする魅力的なペルソナが必要不可欠なのかもしれませんね。

主要なペルソナも、周囲にいる副次的なペルソナも、魅力的なキャラクター作り、キャラクター造形の手法を参考に、目一杯情報を具体化しておくことをオススメします。

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