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【ミスターサンシャイン】一度は観ておきたい大作

私にとっての韓ドラは現実逃避で気分転換で癒しなのに、ただでさえプーチンの戦争で気が滅入っているこの時期になんでまたこんな歴史ものを観始めてしまったのか、ただただ辛いとしか言いようがない。切なくて悲しくて美しくて、日本人である自分としては申し訳ない気持ちにもなるし、心の消耗が大きい。くたびれている時にはお勧めしません。でも、超大作、名作です。心のエネルギーが十分な時に一度は皆さんぜひどうぞ。

俳優も脚本もさすが

身分違いの主人公をイ・ビョンホン(チェ・ユジン役)とキム・テリ(コ・エシン役)が演じている。さすが韓流四天王と実力派女優、アクションも表情もものすごく様になるしものすごく演技が上手い。コ・エシンをめぐって切ない四角関係を展開するユ・ヨンソク(ヤクザの親分役)とピョン・ヨハン(韓国一のお金持ち坊ちゃんでキムテリの許嫁役)の数奇な運命が交差する脚本や自然の映像美、何もかもが壮大で観終わってもなかなか心の整理がつかないし、いつまでも圧倒された感だけが残りそう。

最初、イ・ビョンホンとキム・テリという実際には20歳差があるカップルについて、恋愛対象としては無理があるんちゃうん親子みたいやんと思っていた。だが、地位と実力を備え、常に冷静な判断でエシンを守り、育て、後押しをするユジンのあり方は、恋人というよりも父親としての愛し方に近いようにも思え、これはやはり親子みたいでも良いのだ、イ・ビョンホンだからこそ説得力があるのだ、というのが最終回まで観終えての私の結論である。いや、それにしても最終回悲しいよ。深夜に一人で観ながら泣いてそのままお風呂の中でも泣けてきたよ。今も思い出し泣きしそうだよ。

ユ・ヨンソクは冷酷な役だが憂いや寂しそうな表情がとても良かった。応答せよ、賢い医師生活、花より青春、・・で見てきた彼のイメージがあるから、どうしても人の良さを重ねてしまうのもあって、ずっと可哀想だった。この役柄をめぐっては韓国の中で「親日美化」につながるとして物議があったらしい。この点はネットで見ただけではよく分からなくて、引き続き勉強中。

ピョン・ヨハンは、ミセンでもそうだったけど、くるくると変化する表情が魅力的。役では、暴力ではなく言葉で闘うジャーナリストとして、後世に託す希望というものについて考えさせられた。そうやって残され、バトンタッチされた歴史を私たちも生きているんだと思う。美しいものを求める彼の最後のセリフも号泣だった。

脇役陣もめっちゃ豪華だった。全体的に悲しい話が続く中でチョ・ウジン(通訳の役)やイ・ジョンウン(エシンのお世話係)が登場するとちょっとほっとした。チョ・ウジンとキム・ビョンチョルはドラマの中で顔が似ているとして笑いに使われていて、やっぱり!そっくりだよねー!と安心した。書き出せばきりがないけど、猟師のチェ・ムソン、高宗イ・スンジュン、子役キム・ガンフン・・素晴らしかった。

日本語と日本の風景はいまいち

その一方で、日本人役の俳優たちの話す日本語は、どうしても違和感。いや、「朝鮮人だけど日本語も話せます」の役の人たちはいいんですよ。でも日本人役で登場する人の日本語が不自然だと、やっぱり作品へののめり込みから引き戻されてしまう。登場する場面が多い日本人の役は日本語ネイティブの人が演じてくれた方がいいなぁ。でも、基本的に悪役だから日本人としては引き受けるのも勇気がいるか・・?

あとは日本のシーンにも違和感いろいろ。船で下関に着いたはずのに八つ橋の看板があって、あれ、ここはどこ?ってなったり、保護を求めて公使館に駆け込んだけど当時の下関に米国公使館はないだろうからいつの間に東京に移動した?と混乱したり、そのへんの流れが雑ではあった。が、ストーリー全体からすればちっぽけなことなので無問題。

日本軍ひどい

日本の高官たちは失礼で狡猾といった酷い描かれ方をしている。日本軍も残虐この上ない。日本兵の治療を優先させるため、傷ついて病院に運ばれてきた子どもを射殺した場面がその最たるものだ。認めたくない人もいるだろうけど日本が韓国を侵略したのは歴史の事実だ。名前や言葉や故郷を奪い、命を奪い、尊厳を踏みにじったのだ。

悲しいのは、高官だけでなく一兵士までもが韓国人を見下げたり、女性に対して侮蔑的な言動や扱いをするシーンが何度も出てくることだ。これが過去の話であって今はもう日本でもありえないと言いきれたらまだマシだが、現状はそうはなっていない。2010年代にヘイトスピーチや嫌韓デモが急増したことを考えれば、日本社会にいまだに根深く残っている問題なんだと思う。

なお、当時の日本の侵略者たちにすり寄って「国を売った」とされる人たちを韓国では「親日」と呼ぶ。日本文化に興味がある、日本大好き、というような通常の意味での「親日」ではない。だから、ドラマでも日本軍の酷さと同じくらいに親日派のイ・ワニクなどは非道な人物として描かれている。これは救いを与えてはいけない役なんだろう。

ドラマでの高宗は気弱ながらも朝鮮のために精一杯の努力をしているように見えるが、実際には主体性無く列強や宮廷内の権力闘争に振り回され、立憲君主制の時代に専制君主へ回帰するなどして国を守ることができなかった、らしい(wikipediaの聞きかじり)。韓国にとっても自国の歴史を事実から離れて美化していないか、自らが歴史修正主義に陥ってはいないか、ということは重要なのだ。「ミスターサンシャイン」をふらふらと検索しているだけで、そんなことを書いているブログや報道が散見され、なるほどなぁと思ったことであった。(こういうのを読んでるだけであっという間に時間が過ぎる。帝国主義の時代の歴史は民衆の目で見れば憤りしかないんだけど、確かに好奇心はかき立てられる。私の祖母は明治の最後1912年の生まれで高宗の時代とも重なり、そんなに遠い時代ではない。)

それから、ついでに気がついたんだけど、日本人は高官であっても英語の発音が下手、身長低い、キレて大声出す・・としてわりと馬鹿にされている笑。朝鮮人からというよりも、アメリカから軽くあしらわれるシーンが出てくる。まぁ、実際今も多くの日本人は私も含めて英語が苦手だし背も低いもんな。首相や大臣も英語からっきしで失笑かってたりするもんな。(いや、安倍さん麻生さんあたりは日本語さえも苦手だったか・・うーむ・・)。

どこの国でも負の歴史はあるけれど、その事実を事実として認めて反省し、二度と繰り返さないための教訓にすることが大事なんだと思う。それが、いま生きている私たちの戦争責任。辛い部分もたくさんあったけど、観て良かったです。

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