映画「スキャンダル」を観る

一部、緊急事態宣言が解除されるなど、新しい局面へと日々変化している世の中ですが、私は相変わらず平日は在宅ワーク、土日はお家でのんびりと暮らす日々が続いています。友達会ったり、居酒屋に行ったり、ライブに行ったりできないのは寂しいですが、それ以外は以前と同じ、いやむしろ以前よりいいかもしれないです。自分の時間がかなりとれるし、無駄な移動時間もない、上辺の人間関係は薄まっていますし。元々、一人でもいけちゃう、むしろ一人の時間がないとダメな人間だったのでここ数か月はそれなりに平然と過ごしています。「全てのストレスは人間関係にある」って話もあながち間違いじゃないかもね。

ってなわけで、今回は映画「スキャンダル」について文章を書きたいと思います。最初に断っておくと、私はいっちょ前に映画を語れるほど映画に対する知識も、見てきた本数も、役者に対する理解度も高くありません。まあ、観るのは好きなのですが、、

なのでその辺に留意していただきながら、あくまでそんな私の所感で書かしていただきます。とはいえ、いろいろなカルチャーってつながっているので、音楽だけ、映画だけ、小説だけ、って時代でもないと思うので、バランスよくチェックしていこうと思います、家にいる時間が長いうちにね、、

はいそれでは、映画「スキャンダル」は2020年2月に公開された映画です。アマプラでレンタルして私は観ました。いろんな人がこの映画のお話をしていたのが散見されたので是非チェックしようと。結論から言うと面白かったです。日本人が好きながーーっとわかりやすく盛り上がっていく感じではないけど、実際の事件を題材にジェンダーや格差、資本主義経済、保守とリベラル、メディアの存在意義など多様な文脈で観ることができると思います。2016年にアメリカのFOXニュースで実際に起こったセクハラ問題が物語の主題になっています。原題は「BOMBSHELL」。直訳すると「爆弾」ですが、「性的な魅力のある女性」という意味のスラングとして使われているようですね。シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーという大女優がそろい踏み、実際のキャスターに寄せたメイク、衣装なども見どころの一つだと思います。(ちなみに日本では特殊メイクを担当したカズ・ヒロさんがアカデミー賞を受賞したことが作品より大きく報道されました。これも思う部分はあるけど、、笑)こんな感じでいろんな切り口があると思うんですが、あまり冗長な文章は書きたくないし(というか疲れるので笑)、みんなも読む気起きないと思うので今回は先に出した大女優3人の中からマーゴット・ロビーが演じたケイラというキャラクターについて語ろうと思います。

まずこのケイラですが、FOXの中では若手キャスターという役です。他の二人は実在するキャスターを演じているのですが、このケイラは架空の人物です。ケイラっていうのは、家柄的に熱心なFOXのファンで、っていうのも彼女はキリスト教福音派で、保守的な立ち位置なんですね。そういうバックグラウンドがあるのでFOXでとにかく大活躍したい、っていう気持ちが強いんです。こういった設定を付けたってのは重要なポイントだと思います。

それでこのケイラですが、あれやこれやとにかく出世したい一心で頑張ります。友人のジェスなんかはそんな彼女にいろいろとアドバイスをしてくれます。ちなみにこのジェスはレズビアンです。「ソースがわかんなきゃ関係者筋って言っときゃいい」みたいなアドバイスもします笑。FOXへの痛烈な皮肉ですね。フェイクニュースってのはメディアが発達する前から存在したものですが、現代ではその影響力や情報格差が問題ですよね。そして彼女、ついにはCEOのロジャーにセクハラされた挙句、性的な関係を持ってしまいます。希望や信念に満ち溢れる若い女性がおじさんに権力を盾にいいようにされてしまうっていうのは日本でも馴染み深いと思います。それと同時ぐらいにロジャーがセクハラで訴えられます。キャスターとして抜擢された反面、自分が受けた屈辱は強く残ってるケイラ。ジェスとも一瞬距離が生まれますが、電話をしながらロジャーと性的関係を持ってことを告白して号泣するシーンは彼女の葛藤が一気にあふれ出たシーンでしたね。そして、ラスト。ロジャーは会社を去ることになりますが、結局マードックっていうFOXのオーナー一族の人(まあつまりロジャーと変わらないおじさん)が来ます。嫌気がさしたケイラは社員所をごみ箱に捨ててエンディングです。

っていうのが超ざっくりしたケイラの映画内での立ち回りです。私がまず着目したのはケイラのバックボーン。キリスト教福音派で、家族はFOX大好き保守派の人間であるということ。ケイラは生まれ持った環境からFOXに共鳴する人間でありながら、最後辞めるんですよ。物語全体を通して彼女が自分らしく生きるってことを強く考えます。誰かが求めるイメージ(脚を惜しげなく披露する白人女性キャスター)みたいなものに左右されます。ロジャーは「視覚メディア」だという言葉を使っています。一時は自分の尊厳を捨てて、権力にすがったケイラでしたがレズの友人・ジェスとの電話で胸の内を吐き出した後から、メイクも薄くなりパンツスタイルになります。ケイラなりの反骨精神ですよね。このケイラとジェスっていうのは自分の生まれ持ったアイデンティティとその世の中への受容のされ方に悩み苦しみます。そこで改めて問う自分らしさとは何なのか、突き詰めた結果会社を去ることになります。ロジャーという人物にスポットが当たっていますが、実際は会社全体、ひいては社会全体への問題提起と受け取れます。ロジャーが変わったから解決じゃない、全体の意志が変わらないと解決しない。そして自分の身は自分で守るため、与えられた場所や生まれ持ったアイデンティティにとらわれず、自分らしく生きよ、と伝えています。まあ、そもそもハリウッドは劇中でも出てきますがリベラル派の代表で、今回は保守派のFOXを皮肉たっぷり描いています。ので、ケイラが辞めるのはとどのつまり自分らしく生きるにはFOXじゃない!っていう宣言にも受け取れちゃいますけど笑。

「自分らしく生きよ」って最近よく言われますが、昔はあんまりこの言葉が好きじゃなくて。っていうのもほとんどの人が自分らしさってのがわからないと思うんです。特に日本ってほとんどの人が同じようなバックグラウンドを持って生まれるから。もちろんジェンダー思考とか地域とかはありますけど。自分らしく生きるってのは、生まれ持ったアイデンティティを大事にすること、でも外的に与えられたアイデンティティは捨てたっていいってことだと思います。これはケイラのような個人の生き方としてはいいことだと思います。結局は個人の人生なので、個人の決断で生きていいと思います。責任もすべて自分でとる。ただ、枠が民族や国家となったとき、本当に自分の物語性のようなものを無視していいのか。たとえば日本人の私は、戦時中生まれたわけでもないが、戦争中にアジア諸国を占領したことを関係ないと言い切っていいのか。その時代に生まれてないドイツ人がナチスドイツの責任を一切取らなくていいのか。このような命題は未だに謎です。そんでもって今世界中で巻き起こっている問題は結構こういった歴史的文脈から来ている者が多い、っていうかほとんどそうです。自分は生まれる場所を選べない、だから俺は関係ない、本当にそうなのかわかりません。ただ、この歴史的文脈から成る物語からは誰も逃れることはできないのです。問題はどのように向き合うか。そんなことまで考えてしまいました。

こんな感じでつらつらと書いてみました。基本的にアメリカの知識がそこまでなくても楽しめると思います。私も正直人並みにしかわからないので、、最後はだいぶ話がでっかくなってしまいました。。実際映画を観てどのように感じるかは人それぞれだと思いますが、この映画はいろいろな切り口が、見方があります。メディアの意義に考えてもよし、ジェンダーについて考えてもよし、保守とリベラルについて考えてもよし、衣装やメイクを楽しんでもよし、大女優たちの演技を楽しんでもよし、、

とにかくいろんな楽しみ方があると思うでぜひ見てみてください!それでは!https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%AB-%E5%AD%97%E5%B9%95%E7%89%88-%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%80%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AB/dp/B087MT1VR9/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%AB&qid=1589618021&sr=8-1


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