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未練の昇華④

さて、彼ぞっこん花畑な私と、芸人要素の強いスナフキンのような彼との別れは、あっけなく訪れた。

コロナ禍が到来、彼は日雇いフリーターで荒稼ぎし、海外での武者修行を計画していたがそれが頓挫しまった。ひょっとしたら、それが判断力の低下を起こしていたのかもしれないが、なんと彼が自分の夢の軌道修正をしてくれ、ライフプランの中に私と人生を歩むことを入れると言ってくれた。
私はここぞとばかりに彼を現実的な世界に引っ張り込んだ。夢を追いつつ、私とも一緒にいるつもりなら、とにかく種銭が必要だと説得をし、彼に比べればはるかに小さい脳みそで戦略を立て働きかけた。
結果彼は私が提案した求人の中で、合いそうだと思う会社を見つけ、まずはアルバイトとして勤務することとなる。1年ほど続けたのち、契約社員に昇格。私は彼と歩む人生が実現しそうだと嬉しくなり、逆プロポーズをした。
彼はその当時OKをくれた。長く一緒にいることは二人の共通の目標にしていたが、結婚という手段は取らない予定だった。でも私は彼の家族になりたいと願うようになっていた。
しばらくして、正社員への昇格をという話が出た。彼の金銭的な目処がたったため、同棲へと話を進めることになり、彼は積極的に家探しをしてくれていたのだが。
脳内花畑が続いている私でも気づくほど、彼が私といる時の様子に変化があったのだ。会話がなくなり、私の家に来る回数が減り、LINEのやりとりも味気なくなり。私の本能がこの状況で同棲は得策ではないと囁いた。
そこで、私が転職を考えているから、やっぱり同棲は一年待ってほしいと申し入れた。
そこからは階段を転げ落ちるようだった。

正直ショックで記憶が飛んでいる部分もあるがとにかく私たちは1ヶ月会わず冷却期間を置くことにした。
そして1ヶ月後「〇〇の人生設計に振り回されるのかと思ったら正直しんどい」「結婚してもいいけど別居婚なら。実はもう一人暮らしのための家を契約した」と彼が発言し、この恋愛は修復不可能だと気づいた。

こういう時はシンプルに限ると思う。素直に別れたほうがいいねと伝えた。彼はすんなり受け入れた。ボロボロと涙をこぼしながら、③で述べたような彼への恩についての思いを嗚咽しながら伝え、三年間ぶっ通しで恋して愛する経験をさせてくれたことの謝意を伝えた。彼は珍しく、細い目の隅っこに涙を溜めていた。サッカーの天皇杯が終わったと同時に彼は帰るといい、見送った。

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