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未練の昇華②

私は丁度1年ほど前に失恋した。
失恋とはいっても、結婚を前提に3年付き合った相手ではあったが。

24歳の頃であった。
下宿に転がり込む半同棲期間も含めて4年付き合っていた相手がいて、周りからは早々に結婚するのでは?と言われていたが「正直相手には困らないと思ってる。他の女性とも恋愛をしてみたいから別れてほしい」とざっくりこのようかことを言われ、半ヤケクソでマッチングアプリの混沌に飛び込んだ。
メッセとアポをなんとなくこなす毎日が2ヶ月続き、ある日件の彼からメッセ付きのいいねを貰った。
『プロフィールの内容に共感しました。ぜひ仲良くしてください』
簡潔にするとこのような内容であるが、かなりの熱量で綴られていたため、プロフィールを訪問したが正直ノーマークだった。
なので、軽いノリでメッセを返したのだが、何の話題でも話が弾み、友達になれそう!ということで、あれよあれよという間に一度会おうという話になった。

阪急の河原町駅の改札。今でも覚えている。
すぐに彼を見つけたのであるが、プロフィールの写真だとUSJで妙なはっちゃけ方をする痛い大学生感が出ていたものの、実際の彼は静かな水面が思い浮かぶような、人格の格の違いのようなものを醸し出していて、私を見つけると音響マニア向けのBluetoothイヤホンを外し静かに微笑んだ。
正直、その瞬間にもう惹き込まれていた。
京町家の居酒屋に入り、取り止めもない話をした。彼はとにかく話の引き出しが多く、物事を捉える角度が私の数倍あり、視野がとてつもなく広い人だった。彼との会話は無限ラリーのようで、時間が溶けていった。大学をわざわざ休学して、歩きの一人旅で日本を一周しようとしたというので、自分なりのオーバーリアクションで前のめりに話を聞いたこと、サッカーをこよなく愛する彼から何度もオフサイドについて簡潔明瞭に解説してもらうも「無理、わからん〜」と嘆いていたのも昨日のことのように思い出せる。
そしてひょんなことから、彼はプロフ詐欺をしていて、実は夢追い日雇いフリーターであることが発覚するのであるが、盲目状態の私にとってはそんなことはどうでも良かった。堅実な相手と、受け身の恋愛、これ一択だと思っていた私が、2回目に会った帰りに「正直めっちゃタイプ!じゃあね!」と言い逃げをする黒歴史を作った。紆余曲折あり、その1ヶ月後晴れて彼とお付き合いすることとなる。

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