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俺は真性Mなのか?


顎の骨に穴があいてしまい、早急に手術をしなくてはならなくなった事は前回書いた。その後数日間の断酒を経て手術に臨んだ俺は、いつになく早く起きて、時間より早くに医院に着いた。平静を装ってはいるが、心の中では今までに感じた事のない不安でいっぱいで、いつも忘れることのないリップクリームを忘れたり、乗り換えを間違えたり、心ここに在らずの状態であった。

病院とは待つものだという常識を全く無視してくるこの医院は、到着後5分でもう麻酔の準備に取り掛かっていた。待合室での心の準備というものをさせてもらえなかったのだ。結果としてはこれが良かったのだが、いつも病院で待たされる時は文句しか出てこないのに、全く待たないとそれはそれで文句が出るもんなのだなと自分勝手に関心した。

麻酔のための麻酔をし、いざ麻酔へ。これは何回か経験した事があるので難なくクリアした。膝に血がたまってそれを抜く注射に比べればなんてことは無い。歯のまわりにする麻酔が好きな訳は、舌やら口の周りが痺れてきて、喋る時におかしな事になるからだ。何もしてないのによだれもたれて面白い。俺の変な嗜好は置いておいて、程よく口まわりが麻痺してきたところで、まずは馬鹿でっかい膿のたまりの上に生えている奥歯を抜くという。ガシャンコガシャンコとやってるうちに奥歯はすぐ抜けた。さてここからが本番である。

歯の抜けた下にある膿を吸い出し、そのたまっていた袋を取り除くのだ。この辺りから少しずつ痛みが出てきたので、先生に少し痛くなってきましたと伝えると、麻酔を追加。効いてくるのを待って再度袋を取り除く手術へ。しかしまだ痛い。相当深いところをほじくり返しているらしく、痛みも深い。顎に穴が空いているくらいなのだからそれは当たり前かと思ってはいるが、痛い。ただまた麻酔をして効いてくるのを待って、と繰り返しているのがかったるく感じていた俺は先生に、「この痛いのは我慢して良いんですか?」と聞いてみた。すると先生はある程度は大丈夫だけども、本当に痛かったら言ってくださいねと言う。すでに大分痛いんだけどなぁ、、と思いつつ我慢する事を選択、手術の続きをしてもらった。

昔から痛みに強いという気はしていたが、これは所詮主観なわけで、誰と比べてと言うわけでは無い。ただ俺の場合もしかしたら痛みに強いのではなく、痛みが好きなのでは無いか?という疑問がずっとつきまとっていた。骨折や、靭帯断裂など大きな怪我を幾度となくしてきた経験がある俺はその都度幹部を押したり、少し動かしてみて痛みを確認すると安心するという所があった。安心というか快楽というか、とにかく必要以上に幹部に痛みがある事を確認する作業を繰り返した。さらには回復してきてその痛みが減ってくると寂しささえ感じていた。つい先日も階段から落ちて足首を捻挫したのだが、その時もあえてグリグリと足首を回転させて、痛みを楽しんでいた。もしかしてこれはそう言う事なんでは無いかと思うと、左下の奥歯の膿の袋を取り除く痛みもそれまでのただの痛みではなくなり、本格的な快感に変わっていった。この先訪れるであろう未知の痛みの世界を妄想しながら。

そんな訳で無事に手術は終了し、後は自分の体の持つ回復力に任せて顎の骨の穴がふさがるのを待つだけとなった。

皆さんも歯が痛くなったらすぐに歯医者さんに行きましょうね。そこは我慢したらダメな所です。

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