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18. 電池の安全性、事故例

ノートパソコンに標準的に3本から9本組み合わされて使われているのは18650サイズの円筒型リチウムイオン電池となります。(平均電圧3.7V、容量2.2Ah)

例として、この内の1本が何らかの要因により、内部で短絡が発生し、内部に蓄積されていたエネルギーがすべて熱になったと仮定すると、8.14Wh=29.3kJとなります。

約40gのセルがすべて鉄(比熱=0.435)でできていたとして、全エネルギーが鉄に吸収されるとすると、鉄の温度は1627℃になる計算になります。

鉄の融点は1535℃ですから、セルは溶解してしまうことになります。

もちろん、このような事態が発生する前に、セルの防爆弁が作動したりすることにより、内部のエネルギーがセル外に放出されることになりますが、しかし、リチウムイオン電池が内部に保有しているエネルギーが如何に大きなものであるかを認識していただけるでしょう。

さらに、上述の計算は電気エネルギーのみの計算ですが、実際には内部にある電解液が燃焼する際の放出エネルギーや、リチウムイオンが金属リチウムになり、それが酸素と結合する際に急激に放出される大きなエネルギーがあります。

リチウムイオン電池が内部に膨大なエネルギーを含んでおり、仮にこれが事故で短時間に放出されると大きな事故につながることが理解いただけるでしょう。

電池の多くの事故は充電中に発生しています。

これは電池が持つエネルギーと、充電器からのエネルギーが重なって大きなエネルギーになることもありますが、何らかの原因によりセルが過充電になり、セルが事故を起こすこともあります。

例えば、多直パックでセルのバランスが崩れれば、保護回路の過充電保護電圧である最大4.4V程度までセル電圧が上昇し、セルがたまたま不安定な要因を含んでいればそのセルが発火することがあります。

通常、リチウムイオン電池は4.4V程度では発火に到ることはないはずですが、しかし、セルの製造工程でなんらかの異常があると事故を起こします。

当然、様々な検査工程で不安定なセルは除去されていきますが、それをもれるものもありえます。

実際、生産数量が大きいと、非常に確率の小さいことでも出現します。

以前は品質管理の教科書は3σを管理の基準にしていましたが、生産数量が大きく、かつ不良品が重大な事故をもたらす危険性がある場合には3σ管理では不十分です。

国内の多くのメーカーでは6σ管理を行っているはずですが、問題は海賊パックを作るような国の製品にあります。

おそらくほとんど何の管理もされていないかのような印象を受けます。

電池パックの事故はセルの不良によるものばかりでなく、例えば電池パック内にある電子回路の不良によっても発生します。

たとえばプリント配線板では湿度が高ければマイグレーションによる回路ショートや多層基板の層間絶縁不良なども発生します。

電池パックの中に大きな半田ボールが入っていれば回路ショートがおきます。

その回路ショートにより、発熱が起きます。

上述の電池の持つ大エネルギーは電池の内部でのみならず、電池の外部でも熱を発生します。数年前にある携帯電話メーカーが、電池パックの中に半田ボールが入っており、電池パックケースが溶ける可能性があるということで、製品の回収を行いました。

回収費用に100億円以上を要したといわれていますが、一般大衆が手にする電気製品で、プラスチックケーに穴が開くような内部発熱があることは許されません。

電子回路の信頼性は電池パック以外の製品でも重要であることは同じですが、しかし、電池パックは内部に巨大なエネルギーを含んでいるため、事故がおきたときの被害が甚大となります。

このため、ユーザとしてはメーカーの選定が重要です。

どこのメーカーであれ事故が起こらないということはありませんが、しかし、事故発生の頻度は、信頼性の高いメーカーでは非常に低くなります。

例えば海賊版製品を製造するようなメーカーの製品は事故を起こす確率が非常に高いものです。

安い製品が危険であるとはいえませんが、異常に安い製品は多くの場合危険な製品であることは、よく経験することです。


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