2番は強打者!ベイスターズの2024年の打順を評価する

様変わりした2024ベイスターズの打順

1番度会、2番オースティン。
ベイスターズの2024年開幕時の上位打線は昨年と大きく様変わりしました。

はじめまして。私は在野(アルノ)と申しまして、野球は未経験、ハマスタも少し遠いので中継とデータを見ながら応援している者です。

本題に戻りましょう。伝統的に日本の野球では2番打者は「つなぎ」の役割が重視され、バントや進塁打が上手い選手を置くことが多くありました。
2024年の横浜DeNAベイスターズの打順はこの伝統的な打順と大きく様相が異なります。2番にタイラー・オースティンを配置する打順でシーズンを開幕させたのです。2023年シーズンの後半は桑原将志や関根大気といった打力に劣る選手を主に起用したのと大きく様変わりしたと言えるでしょう。

オースティンとは何者でしょうか。怪我さえなければセリーグ最強打者の一人です。2021年には107試合の出場、打席数439でOPS1.006、WAR4.7の成績を残しています(出典:データで楽しむプロ野球 https://baseballdata.jp/   以下、同様です。)。打率等のランキングに載る規定打席数(443打席)には達していないものの、総合的な打力を表すOPSでは鈴木誠也に続いてリーグ第2位になります。怪我から復帰したこの強打者をつなぎの役割が重視され、攻撃力をあまり求められてこなかった2番打者に置いたことは大きな特徴と言えます。

つなぎの2番は合理的な戦略か

そもそも、2番打者に「つなぎ」を求めるのは合理的なのかを考えてみましょう。1番打者が出塁、2番バントで進塁させ、3番のヒットで1点を先制。理想的な攻撃に見えます。
この事象が発生するためには、1番打者が出塁しないといけません。しかし、2023年シーズンのセリーグ最高出塁率に輝いた阪神の大山悠輔も出塁率は.403にすぎません(ちなみに、阪神で1番打者を担った近本光司の出塁率は.379です)。つまり6割以上の確率で2番打者は1アウトランナー無しで打席に立つことになります。この時に進塁させる能力は高くても自分では出塁する能力が低い2番打者であれば、何も役割を果たせず、2アウトランナー無しで3番の強打者を迎えることになります。いくら強打者がならぶクリーンアップでも、2アウトランナーなしからの得点はあまり期待できません。
ということで、つなぎの2番という考え方は、一番打者が出塁できる場合には良いのかもしれませんが、出塁できなかった場合への目配りが足りない戦略と言えそうです。その一方、2番に強打者を置くという考え方は、1番が出塁した場合にはチャンスを大きく広げ、1番が出塁しない場合には自分が出塁してチャンスを作るという戦略になりますので、1番が出塁できなかったという事象にも目配りができているものと言えそうです。

ベイスターズの事情:3番 佐野恵太

ベイスターズの場合、この一般的な考え方に加え、3番打者佐野恵太の特徴も強打者を2番に置くことの合理性を高めていると言えるかもしれませんので検証してみます。
佐野は打球方向の4割以上が右方向に飛ぶ打者です。これに対して対戦する各球団は内野手を右方向に寄せてヒットコースを狭くする対応を取る傾向にあります。1塁と2塁の間を狭めることは特に有効でしょう。しかし、1塁にランナーがいる状況では、1塁手はランナーを警戒して1塁ベース近辺にいる必要が生じ、1塁手側から1-2塁間を狭めることが難しくなります。つまり、1塁ランナーがいることで、佐野にとってはヒットコースが広くなると考えられるわけです。
この仮説を検証するため、2023年シーズンの佐野の打席の結果を1塁ランナーがある場合とない場合に分けて両者に差があるのか分析しました。打球がフィールドに飛んだ時の結果に絞るため、全打席から三振と四死球、ホームラン、犠打、犠飛、相手選手のエラーを除いています。その結果
1塁ランナー有:36/114(.316)
1塁ランナー無:95/345(.275)
[p>0.05]
となりました。
この結果をそのまま解釈すると、1塁にランナーがあるかどうかで、佐野の打撃に違いがあるとは言えません(有意水準0.05の両側検定で有意差がありません)。
しかし、例えば引っ張り打球に限定して分析すると差が出るか(守備位置を右側に寄せているため、「センターフライ」のテーブルスコアが本当に外野の中央付近なのか、もしくは右に寄った結果なのか分からないので、これ以上の分析にはより詳細なデータが必要です)、とか、そもそも野球経験がないので他に変数として考慮すべきものがあるかや有意水準を0.05に設定するのが適切かなど、今回の分析外で考慮に入れなければいけないことが多いので、今回は結果の共有までにいたします。

2番強打者を継続するか

こんな記事を書いている内に、オースティンの登録抹消という悲しいお知らせが入ってきました(https://npb.jp/announcement/roster/roster_0412.html ) 報道によると右太腿裏肉離れだそうです。オースティンが抜けた場合の打順をどうするか気になっていたのですが、4月13日の試合では捕手の山本祐大を2番打者として起用しました。結果を見ると4打席で1出塁でしたので、期待通り!とは行きませんでしたが、1番度会が出塁した場合でも送りバントではなく、ヒッティングしたことに見られたように、つなぎの役割を期待されたわけではないようです。山本はベイスターズの打者の中でも上位の打撃能力の持ち主ですので、起用する選手が変わっただけで基本的な考え方に変化がないことに安心しました。

シーズンはようやく一巡目の対戦が終わろうとしているところ。既に各チーム主力の離脱などが起きている状況ではありますが、その中でどう戦力を最大限生かすのか、今後も打順に着目すると面白そうです。


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